'93モデルのGTIを入手、'04年のサーキットトライアルに向け、モディファイを始めたオグラ。しかし、その初期段階は、いま思えばまったくのエントリー(入門)レベル。クルマ好き、それも走り屋さんなら、当たり前にやるメニューばかりだった。誰でも、ここから始まるのである。
列記してみると、タイヤ&ホイールを替え、サスペンションを替え、フロントブレーキのローター&パッドを替え、シートをレカロ(まだバケットではない)に替え、クラッチを強化タイプに替え、前後にタワーバーを装着するという具合。とはいえ、なにかを替える、あるいは付け加えることで、クルマに現れる変化は、とても興味深いものだった。タイヤ&ホイール、サスペンションはもとより、前後のタワーバー装着でボディ剛性が上がり、ハンドリングばかりか、乗り心地までも向上したことには驚かされた。
サーキット走行用に、本格的にチューニングを始めたのは、'05年。だが、それまでには、ちょっとした葛藤があった。実は'04年のシーズンが終わったところで、クルマを手放そうとしていた。オグラは以前から、年齢を重ねるとともに低下する運動能力はクルマをチューニングすることでリカバリーすべきと、「タイムはカネで削り取れ!」なんて荒っぽいことをいってきた。経済的に余裕があるオジサンならそれができると、実情を無視(?)してそういってきた。しかし、改めてそれまでに要した部品代や工賃をチェックして合計してみると、かなりの金額になっていて、正直「コリャ、イカンかな」と思ったりしたのだ。オグラもすでに50歳代半ば。「もういいか」と思わないでもなかった。だから、クルマを売ろうとしたわけだ。
しかし、幸か不幸か、これがうまく売れなかった。前述のように、これまでこのクルマにかけたコストは結構なもので、それが惜しくなってきたこともある。で、もう1年、サーキットトライアルをやることにした。そうなると、今度は、チューニングに歯止めがかからなくなってしまう。"サートラ仕様バージョンⅡ"なる計画を打ち出し、色々なところを触り始めた。フロントのブレーキを後期型のはローター(288㎜径)&キャリパーとし、ホースをステンメッシュにしたのを手始めに、ドライバーズシートをレカロのフルバケット(SP-GN)とし、しかもその表皮をタイロス(059-381-2777)でレザー&アルカンタラにモディファイ。
そして、サスペンションをついに車高長タイプとする。ビルシュタインの輸入発売元である阿部商会(03-3233-2213)がゴルフ3用の"クラブマンパック"を、傘下のビルシュタイン・テクニカル・センター(BTC)で開発する計画とのことで、これにオグラのGTIをテスト車両として提供する話が決まったのだ。
この"クラブマンパック"が、すごかった。オグラの開発スタッフへの要望は「スプリングを固くして、車高もできるだけ下げて下さい」というメチャクチャなものだったが、できあがったプロトタイプは、ショックがダンピングフォースを縮み側、伸び側ともに初期で一気に立ち上げ、その後は緩やかに上げていくというディグレッシブな特性を持たせ、スプリングはフロント8㎏、リア5㎏という、直巻きとしては比較的柔らかめのものを使うものだった。車高ダウンはフロントで30㎜、リアで10㎜に過ぎず、ノーマル然としたもの。しかし、これが抜群の回頭性とコントロール性の高さを示し、転戦した各サーキットで着実にラップタイムを更新していった。気持ちよく走れるから、なにしろ、ドライビングが楽しい!
ビルシュタイン"クラブマンパック"の装着は、オグラのヤル気に火をつけたというべきか、油を注いだというべきか。オグラはとうとう、エンジンのチューニングに突入することを決めてしまう。
次回、乞うご期待!
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