2025年11月27日、AUDI AGはドイツ市場において「Audi Q5」と「Audi A6」に新開発の3L V6 TDIエンジンを搭載すると発表した。

画像: Audi Q5とAudi A6に最新世代のV6 TDIを投入

最高出力220kW(299PS)、最大トルク580Nmを発生するこのパワーユニットは、電動コンプレッサー(EPC)とマイルドハイブリッドシステム「MHEV plus」を組み合わせることで、従来のV6 TDIを上回るら出力・効率・レスポンスを発揮。EVやハイブリッド車に匹敵する俊敏な加速フィールを狙った最新世代のディーゼルに仕上げられている。

電動化で進化する3L V6 TDI

今回採用された3L V6 TDI(EA897evo4)は、単なる出力向上を目的とした改良ではなく、Audiがディーゼルの未来に向けて「電動化との複合」を本格的に推進した点に注目したい。電動化はEVの象徴と捉えられがちだが、Audiは内燃機関の領域においても、電動デバイスを戦略的に組み込み、キャラクターそのものを変革しようとしている。

画像1: 電動化で進化する3L V6 TDI

MHEV plusはその象徴で、ベルトオルタネータースターターとパワートレインジェネレーター(PTG)、そしてリン酸鉄リチウムバッテリーの三要素で構成される。バッテリーへの電力供給と回生、低速域での部分電動走行、さらには加速時の強力なトルクアシストまで担う多機能なシステムであり、従来のマイルドハイブリッドを大きく上回る働きを持つ。

PTGは最大18kW(24PS)、230Nmを発生し、加速の初期に強いトルクを加えることで走り出しをスムーズにし、従来のディーゼルにありがちな“最初のひと踏み”の鈍さを解消している。さらに減速時には最大25kWを回生し、エネルギー効率の向上にも寄与する。

画像2: 電動化で進化する3L V6 TDI

Audiはこのユニットについて「低速域・市街地・駐車時など、微速での電動走行も可能」と説明しており、従来のマイルドハイブリッドシステムの上を行くパフォーマンスの持ち主であることがわかる。

EPCがつくり出す“電動車に迫る”新しい加速フィール

新V6 TDIでもっとも革新的な要素は、従来よりも能力が引き上げられた電動コンプレッサー(EPC)だ。これは48V電源で駆動し、ターボチャージャーの後段に設置される。ブースト圧が不足する低回転域で積極的に介入し、ターボがつくり出す過給気をさらに圧縮してエンジンに送り込む仕組みだ。

画像1: EPCがつくり出す“電動車に迫る”新しい加速フィール

EPCは250ミリ秒で最大9万rpmまで回転し、最大3.6barの過給圧を従来より約1秒早く構築するという。これはターボの弱点である“ターボラグ”を事実上消す技術であり、発進直後から豊かなトルクが立ち上がる。Audiによれば「最初の2.5秒で1台分前に出ることができる」とされており、体感的な俊敏さは明確に向上している。

画像2: EPCがつくり出す“電動車に迫る”新しい加速フィール

また、このEPCは従来よりも作動領域を大幅に広げた点が特徴で、かつて「Audi S4」や「Audi SQ」5に搭載されていた世代では限定的だった作動範囲を、ほぼ全回転域にまで拡大。中間加速の力強さやペダル操作に対するリニアな反応は、これまでのディーゼルでは得られなかった領域に達している。

Audiはこの特性について「電動車に近い」と表現しており、ディーゼルエンジンの走行フィールを根本から変えようとしている姿勢が見える。

ふたつの電動デバイスが融合する“新たな過給体験”

EPCとPTGは個別に働くのではなく、加速時には連携して動作する。エンジン回転が立ち上がりきらない瞬間には、PTGが先に駆動輪へトルクを送り、同時にEPCがブースト圧上昇を後押しする。

この協調制御によって、復数の電動デバイスが段階的に働く“新しい過給体験”が生まれる。従来の内燃エンジンでは実現が難しい“即応性”と“太いトルク感”がともに味わえるのが、このエンジンの最重要ポイントだ。

また、過給の立ち上がりが早いだけでなく、トルクバンドの拡大にも寄与していることが推察され、長距離移動が多い欧州市場では、巡航時の扱いやすさにも良い影響を与えると考えられる。

持続可能性を高めるHVO100対応

新V6 TDIは、欧州で普及が進むHVO100燃料の使用を認めている。HVO(Hydrotreated Vegetable Oil)は、廃食油や農産副産物などを水素処理して生成される再生可能燃料で、従来の化石燃料と比較してCO2排出量を70〜95%削減できるとされる。欧州のEN15940規格に適合し、燃料キャップの“XTL”ラベルが目印となる。

Audiはすでにインゴルシュタットとネッカーズルムの工場でHVO満タン出荷を始めており、車両のライフサイクル全体でのCO2削減を推進している。欧州では電動化への急速な移行が進む一方で、既存の内燃機関車両や商用車では代替液体燃料の導入が関心を集めており、今回の対応は“ディーゼルの持続可能化”という文脈において大きな意味を持つ。

Audi Q5・Audi A6に順次導入、パフォーマンスと効率を強化

今回のV6 TDIは「Audi Q5」と「Audi A6」の両モデルに設定され、ドイツではすでに注文が開始された。性能と燃費は以下のとおりで、ディーゼル独特のロングレンジ性能を維持しつつ、電動化によりさらなる効率向上を実現している。

  • Audi Q5:14.7〜17.2km/L、CO2 177–153 g/km
  • Audi A6:16.4〜18.9km/L、CO2 165–140 g/km

いずれも最新の排ガスクラスE〜Gを満たし、欧州市場で求められる環境性能を確保している。

今回のV6 TDI刷新は、Audiが「内燃機関の電動化」を積極的に推し進めていることを象徴するものだ。EPCによる即応性、MHEV plusによる滑らかで力強い加速、HVO対応による環境負荷低減など、複数のアプローチを重ね合わせることで、従来のディーゼル像を塗り替える存在へと進化している。

画像: Audi Q5・Audi A6に順次導入、パフォーマンスと効率を強化

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by AUDI AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。

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