Audi史上最もパワフルな市販車である「Audi RS e-tron GT performance」を試乗。0-100km/hをわずか2.5秒で加速するパフォーマンスに圧倒された。

別格の速さ
高速道路への合流。ステアリングホイールの左スポーク下にある「BOOST」をボタンを押してアクセルペダルを踏みつけると、大トルクを4輪で受け止めるquattroとはいえ、このときばかりはフロントが軽くホイールスピンをしながら、スピードメーターは瞬時に100km/hに到達した。文字どおり顔面から血の気が引くような感覚。これまで経験したことのないようなものすごい加速である。
しかし、そこまでの加速を必要とすることは、日常の運転では皆無といっていい。使うとすれば、サーキットに持ち込んでスポーツ走行をするときくらいだろう。それを無駄と思うか、余裕と思うかは個人の判断に任せるが、普段使うことのない速さに価値があるのがスポーツカーというものだ。

でも、普段使うことのない速さのために日常を犠牲にしないのが、このAudi RS e-tron GT performanceのうれしいところだ。通常時550kW、ローンチコントロール使用時680kWのシステム最高出力のツインモーターは、軽くアクセルペダルを踏むだけで十分すぎるトルクを発揮するが、丁寧なアクセルワークを心がけるかぎり、ラグジュアリーサルーンのような穏やかなドライビングが可能である。
しかもAudi RS e-tron GT performanceは電費がいい! 高速道路をACCで100km/h巡航したときが5.7km/kWh、比較的空いた一般道を走行したときが7.0km/kWhと、そのパフォーマンスを考えると信じられないほど良好な数字である。SUVスタイルのEVが多いなかで、全高を抑えたフォルムが低燃費に寄与しているのはいうまもない。それにしても、ガソリン車で例えると、5L V10エンジンを積むスーパースポーツが、2Lエンジン並みの低燃費を達成するというようなレベルで、EVだからこそできる芸当である。
オプションのアクティブサスペンションが装着される試乗車は、少し硬めの乗り心地を示すとはいえ、不快さとは無縁。驚くべきはその安定した姿勢で、高速道路でのフラットさは群を抜き、一方、ワンディングロードではほとんどロールせずにハイスピードでコーナーを駆け抜けていく。こんなクルマとなら、ロングツーリングもスポーツドライビングも、楽しいの一言に尽きる。
今回は2泊3日でAudi RS e-tron GT performanceを試乗したが、乗れば乗るほどその実力に高さに感心し、その洗練された走りに魅了された。
そんなAudi RS e-tron GT performanceの概要については、ぜひ上記のニュースをご一読いただきたいが、私のなかで、いま手に入るAudiでは一番の出来だと確信している。2470万円の車両本体価格もトップなのだが。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)