「Audi Q5」のマイナーチェンジを機に、新たに追加されたボディバリエーション「Sportback」をチェックする。
すでにニュースでもお知らせしたとおり、Audi Q5の新バリエーションである「Audi Q5 Sportback」が日本でも発売になった。スタイリッシュなルーフラインが特徴のSUVクーペである。
その概要は下のニュースをご一読いただくとして、今回は限定車の「1st edition」に試乗することができた。
Audi Q5 Sportback 1st editionは、Audi Q5 Sportback 40 TDI quattro S lineをベースに、カタログモデルには設定のないマトリクスLEDリヤライトを搭載するとともに、20インチホイール、ダンピングコントロールサスペンション、ファイナッパレザーシートなど装備を充実させたモデルである。
実車を目の当たりにした印象は、「SUVスタイルのAudi Q5とはずいぶん違う感じ」。Sportback特有のエレガントなルーフラインや、より長く、より低いプロポーションのボディのおかげで、SUVというよりも、4ドアクーペのクロスオーバーという雰囲気。SportbackのS line専用であるアルミニウムルックインサート付ハニカムメッシュグリルとあいまって、よりスタイリッシュなクルマに仕上がっているのだ。
一方、インテリアのデザインは、基本的にはAudi Q5と共通であり、S lineがベースの1st editionでは、マットブラッシュトアルミのデコラティブパネルやナパレザーのスポーツシートが、スポーティかつ上質な雰囲気を強めている。
リヤに向かってなだらかに下降するルーフラインを採用するため、後席の居住性が気になるところ。実際、SUVスタイルのAudi Q5に比べてヘッドルームは数cm少ないが、それでも身長167cmの私の場合、頭上に拳2個分の余裕があり、窮屈さとは無縁。ニールームはほぼAudi Q5と同じで、後席を最も後ろのスライドさせれば20cm近いスペースが確保される一方、最も前のポジションでもフロントシートの背もたれに膝がつくことはなかった。
ラゲッジスペースも、奥行90cm超、幅約105cmとほぼAudi Q5と同じ広さ。後席を畳んで、天井まで目一杯荷物を積む場合には多少積載量に差がつくかもしれないが、Sportbackのデザインを採用したことによるデメリットはほとんど感じられない。
さっそく走らせると、最新型の2L直列4気筒ディーゼルターボと12Vマイルドハイブリッドシステムの出来の良さに感心する。
7速SトロニックとAWDクラッチ式のquattroが組み合わせれるこのパワートレイン、オプションのアコースティックサイドガラス(フロント)が追加されていることもあって、アイドリングからディーゼル特有のノイズや振動がよく抑えられている。
マイルドハイブリッドシステムの電気モーターが、加速時にエンジンをアシストする効果もあって、Audi Q5 Sportback 1st editionは動き出しから軽やかで、低回転から力強いトルクを素早く発揮してくれる。そのうえ、加速時でもエンジンはスムーズで、そのマナーの良さはクラストップレベルといっても過言ではない。
高速道路の合流などの場面でアクセルペダルを深めに踏み込むと、2000rpmを超えたあたりからさらに力強さを増し、あっというまに必要なスピードに辿り着いてしまう。3000rpmあたりからは一段と強力さを増し、力強くスムーズな加速がレッドゾーンの4750rpmまで持続する。
標準の235/55R19に対して、255/45R20のタイヤが装着されるAudi Q5 Sportback 1st editionは、インチアップの影響もあるのだろう、タイヤがゴロゴロとした感触を伝えてくることがあるが、乗り心地は概ね快適。ダンピングコントロールサスペンションを「Comfort(able)」に切り替えれば、このゴロゴロ感も和らぐ。
走行時の挙動もSUVとしては落ち着いているほうだが、高速では多少上下動が気になる場面もあり、そんなときはダンピングコントロールサスペンションを「Dynamic」に設定することで、ドイツ車らしいシャキッとした動きが手に入る。
ちなみに燃費は、高速道路を制限速度で巡航した場合が18.6km/Lで、カタログ値の16.2km/L(高速道路モード)を上回る数値になった。
スタイリッシュなデザインとSUVのAudi Q5に迫る実用性を兼ね備えるAudi Q5 Sportback。今後、人気が高まりそうな、魅力的な一台である。
(Text & photos by Satoshi Ubukata)