Audi TTの話が続いて恐縮です。
初代Audi TTのインテリアを特徴づけているのが、シルバーに光るエアベント。そのデザインは2代目、3代目に受け継がれていますが、重厚感のあるアルミでつくられているのは初代だけ。その美しさには、乗るたびに見とれてしまいます。
このアルミのエアベントを手がけた会社をご存じですか? 実は、デンマークの高級オーディオブランドの「Bang & Olufsen」(以下、B&O)が担当していました。
それを知ったのは、2005年3月、スイスで行われたジュネーブモーターショーでした。Audiのヴィンターコルン社長とB&Oのトルベン・ボーレガード・ソレンセンCEO(いずれも当時)が揃って記者会見し、B&OがAudiにカーオーディオを供給することを発表したのです。実際、その年の秋には、Audi A8にB&Oが初めて搭載され、その後、さまざまなモデルでB&Oが選べるようになったのは、ご存じのとおりです。
記者会見のあと、Audiブース内のレストランで、B&Oのトルベン会長とランチをご一緒する機会に恵まれ、その際にAudiとの“馴れ初め”を伺うと、驚きの答えが返ってきました。
「意外かもしれませんが、Audiとの関係の始まりはオーディオではなく、アルミ技術でした。B&Oは、1997年からアルミ技術をAudiに提供し、1999年に発表されたAudi TTのインテリアに採用されました」
B&Oの優れたアルミ加工技術に目をつけたAudiが、B&OにAudi TTのエアベントをつくらせたというのです。なんとも贅沢なパーツだったわけですね。
これがきっかけで、B&Oは本業のオーディオでもAudiと手を組み、カーオーディオへの本格参入を果たすことになったのです。
その話を聞いて以来、初代Audi TTのエアベントをますます愛おしく思うようになった私。いろいろな意味で、Audi TTはAudiの未来に大きな影響を与えた一台だったといえますね!
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hiroyuki Ohshima, Satoshi Ubukata, AUDI AG)