Volkswagenが2026年10月9日に世界初公開した新型電動SUV「ID. Tiguan」。従来のID.4とID.5の後継モデルとして2027年初頭に登場するこのモデルは、内外装の全面刷新に加えて、進化した電気自動車専用プラットフォーム「MEB+」を採用している。MEBからMEB+へ、何が進化したのか。そして、ID. Tiguanは「ID.4」や、従来の「Tiguan」とどのような関係にあるのか。Volkswagenの資料をもとに、その中身を探ってみよう。

画像: 変わったのは名前だけじゃない! 新型「ID. Tiguan」の進化を探る

ID.4からID. Tiguanへ、事実上のフルモデルチェンジ

まず整理しておきたいのが、ID. Tiguanと従来のID.4/ID.5の関係だ。

Volkswagenは、ID. TiguanをID.4と「ID.5」の後継モデルと明確に位置づけている。つまり、従来のID.4が単に名称を変更するのではなく、内外装を一新し、新世代の電動SUVとして生まれ変わったということだ。

プラットフォームもMEBから、その進化版であるMEB+に変更される。パワートレインの一部は従来モデルから引き継がれるものの、ID. TiguanはID.4/ID.5の実質的なフルモデルチェンジに相当する新型車と考えてよいだろう。

画像: ID.4からID. Tiguanへ、事実上のフルモデルチェンジ

さらに注目したいのが、これまでの数字を用いたID.シリーズの車名から、Tiguanという定着した名称へ変更したことだ。

Volkswagenは2025年9月、従来の内燃エンジン車で親しまれてきた車名を、BEVにも採用する新しいネーミング戦略を発表した。

その第1弾が、Poloと同じクラスに位置する「ID. Polo」だ。続いて、T-Crossと同じクラスの「ID. Cross」、そしてTiguanと同じクラスのID. Tiguanが登場する。

ここで重要なのは、共通の車名を使用するからといって、内燃エンジン車とBEVが同じ車体やデザインを採用するわけではないということだ。

例えば、BMWは「X1」と「iX1」、「3シリーズ」と「i3」などで、基本的なデザインを共通化しながら、内燃エンジン車とBEVを展開している。

これに対してVolkswagenは、PoloとID. Polo、TiguanとID. Tiguanを、それぞれ異なるプラットフォームを使用する別のモデルとして開発しているうえに、外観も基本的なデザインを共通化しているわけではなく、それぞれに独自のスタイルが与えられている。

つまり、ID. Poloの「Polo」、ID. Tiguanの「Tiguan」は、車体やデザインが同じであることを意味するのではなく、車格や用途、商品としての位置づけを示す名称なのだ。

これにより、ユーザーはパワートレインの種類にかかわらず、馴染みのある車名をもとに自分に合ったクルマを選びやすくなる。

従来のPoloやTiguanも引き続き販売されるため、Volkswagenは同じカテゴリーに内燃エンジン車とBEVという2つの選択肢を用意することになる。

MEBとは?

MEBとは「Modularer E-Antriebs-Baukasten」の略称で、Volkswagenグループが開発した電気自動車専用のモジュラープラットフォームだ。

床下に大容量バッテリーを配置し、前後のオーバーハングを短くすることで、コンパクトなボディでも広い室内空間を実現できるのが特徴だ。

従来のMEBは、基本的にリヤに電気モーターを搭載する後輪駆動を中心に設計され、必要に応じてフロントにもモーターを追加することで4WD=4MOTIONを実現していた。

2019年に発表されたID.3を皮切りに、ID.4、ID.5、ID.7、ID. Buzzなど、さまざまなモデルに採用されてきた。

画像1: MEBとは?

このMEBをベースに、モーターやバッテリー、パワーエレクトロニクスなどを進化させたのがMEB+である。

ただし、MEB+への進化によって、すべての構成部品が一斉に新しくなるわけではない。モーターやバッテリー、電子制御システムなどは車種によって異なり、従来のMEBで使われていた技術を継承する場合もある。

つまり、MEB+はまったく新しいプラットフォームというよりも、MEBの基本思想を受け継ぎながら、効率やコスト、機能をさらに改善したものと理解するのが適切だろう。

画像2: MEBとは?

MEB+は前輪駆動専用ではなかった!

MEB+を語るうえで興味深いのが、駆動方式の違いだ。

MEB+は当初、ID. PoloやID. Crossなど、比較的小型のBEV向けの新しい前輪駆動システムとして紹介されることが多かった。

従来のMEBが後輪駆動を基本としていたのに対し、MEB+では新たに前輪駆動の構成を採用したのである。

例えば、ID. Poloには、新開発の「APP290」と呼ばれる電気モーターをフロントに搭載する。最高出力は仕様によって異なり、最大155kW(211PS)を発揮するほか、166kW(226PS)のID. Polo GTIも設定される。

前輪駆動化により、リヤにモーターや減速機を配置する必要がなくなるため、コンパクトなボディでも荷室を広く確保できる。ID. Poloは全長約4.1mながら、441Lという大きなラゲッジスペースを実現している。

しかし、MEB+は前輪駆動専用というわけではない。

そのことが明確になったのが、2026年4月に発表された「ID.3 Neo」である。

VolkswagenはID.3 Neoの資料で、ID. PoloやID. CrossにはMEB+の前輪駆動仕様を採用する一方、ID.3 Neoには後輪駆動仕様を採用していると明記している。

さらに、ID. Tiguanでは後輪駆動に加えて4MOTION(4WD)も用意される。

つまり、MEB+は前輪駆動、後輪駆動、4WDという異なる駆動方式に対応するプラットフォームなのだ。

ただし、これらの仕様が完全に共通の車体構造を使用しているとは限らない。車格や駆動方式に応じて、必要な構成を選べることがMEB+の特徴と考えられる。

新世代モーターとバッテリーがもたらす進化

MEB+の進化を象徴する技術のひとつが、新世代の電動パワートレインである。

先ほど紹介したID. PoloのAPP290に対して、後輪駆動のID.3 Neoでは新開発の「APP350」を採用する。

このAPP350は、従来のID.3などに搭載されていたAPP310に代わるもので、最大トルクは350Nm。電力効率を向上させることで、同じ容量のバッテリーでも航続距離を延ばすことが可能になった。

一方、バッテリーも進化している。

Volkswagenグループのバッテリー企業であるPowerCoが開発した「Unified Cell(統一セル)」の採用が進められ、ID. Poloなどでは「Cell-to-Pack」と呼ばれる新しいバッテリー構造が導入された。

従来は複数のセルをモジュールにまとめ、それをバッテリーパックに組み込んでいたが、Cell-to-Packではセルをパックに直接組み込むことで構造を簡素化する。

画像: 新世代モーターとバッテリーがもたらす進化

これにより、部品点数や重量、コストを削減するとともに、バッテリーパックのスペース効率を高めることができる。

また、車種や仕様によって、LFP(リン酸鉄リチウム)とNMC(三元系リチウムイオン)のバッテリーを使い分ける。

一般にLFPはNMCよりもエネルギー密度が低いものの、コストや寿命、熱安定性などに利点があり、小容量バッテリーを搭載するモデルに適している。一方、NMCはエネルギー密度の高さを生かし、より長い航続距離を求めるモデルに採用される。

もっとも、こうした技術のすべてがID. Tiguanにも採用されるとは限らない。とくにCell-to-Packについては、ID. Tiguanへの採用が現時点で明らかになっていない。

MEB+を採用するからといって、すべてのモデルが同じバッテリー構造になるわけではない点には注意が必要だ。

ID. TiguanのパワートレインはID.4から継承

では、ID. TiguanではMEB+によって何が変わったのだろうか。

画像: ID. TiguanのパワートレインはID.4から継承

2026年10月の発表によれば、ID. Tiguanには3種類のパワートレインが用意される。

エントリーモデルは最高出力140kW(190PS)の後輪駆動で、58kWhのバッテリーを搭載。上級仕様には210kW(286PS)の後輪駆動と、220kW(299PS)の4MOTIONが設定され、いずれも77kWhのバッテリーを搭載する。

最大航続距離は600km(WLTPモード)だ。

これらの数値を見て、現行ID.4に詳しい人なら気づくかもしれない。実は、パワートレインの基本仕様は従来のID.4/ID.5と共通しているのである。

Volkswagenは2026年3月、ID.4とID.5のエントリーグレード「Pure」に新開発のAPP350モーターを採用すると発表した(日本未導入)。

従来のAPP310よりも効率が向上したこのモーターと、58kWhのLFPバッテリーを組み合わせることで、ID.4の航続距離は最大40km延長された。

また、ID.4 Proに搭載される210kW(286PS)の高出力モーターも、2023年の改良時から採用されている。

8speed.netに掲載されたAuto BildのID. Tiguan試乗レポートでも、パワートレインは2026年3月からID.4/ID.5に採用されているものと同じだと紹介されている。

つまり、ID. Tiguanでは、すでにID.4/ID.5で実績のあるパワートレインを継承しながら、車両全体の完成度を引き上げるという手法が採られているのだ。

これは、MEB+が既存技術を有効活用できる柔軟性を備えていることを示す好例といえる。

操作性やソフトウェアも新世代へ

MEB+の進化は、モーターやバッテリーだけにとどまらない。

2026年の新世代ID.モデルでは、ソフトウェアや運転支援機能、インフォテインメントシステムも大きく改良されている。

例えば、アクセルペダルの操作だけで完全停止まで減速できるワンペダルドライブや、信号機を認識して赤信号で停止するConnected Travel Assistなどが導入された。

さらに、車載バッテリーから外部の電気機器に給電するV2Lや、スマートフォンをキーとして使用できるDigital Keyなども利用できるようになった。

ただし、これらの機能はMEB+専用というわけではない。2026年3月には、従来のMEBを使用するID.4/ID.5/ID.7にも、新世代ソフトウェアとともに導入されている。

この点からも、MEBとMEB+の違いを単純に線引きすることは難しい。

一方、ID. Tiguanでは、新しいコックピットデザインとともに、エアコンやオーディオの操作に物理スイッチを積極的に採用している。

従来のID.モデルで指摘されていた操作性の問題を改善し、直感的で使いやすいインターフェースへと進化させたことも、大きな変更点のひとつだ。

画像: 操作性やソフトウェアも新世代へ

MEB+は「革命」ではなく「進化」

こうして見ていくと、MEB+は従来のMEBからすべてを刷新した新世代プラットフォームというわけではない。

新しい前輪駆動システムを採用したID. Polo、後輪駆動の新世代モーターを搭載するID.3 Neo、そして既存のパワートレインを継承するID. Tiguan。それぞれに異なる技術的な特徴がある。

MEB+は、こうしたさまざまな車種に対応しながら、効率、コスト、航続距離、機能などを改善できる進化版プラットフォームなのである。

そして、ID. Tiguanもまた、これまでのID.4/ID.5で培った技術を受け継ぎながら、内外装や使い勝手を大きく進化させた新型車だ。

Auto Bildの試乗レポートでは、その方向性を「革命よりも進化」と表現している。

まさに、それがID. TiguanとMEB+の関係を端的に示しているように思う。

ID.4からID. Tiguanへの世代交代は、車名やデザインの変更にとどまらず、Volkswagenがこれまで積み重ねてきたBEVの技術を、より完成度の高い商品へと発展させる取り組みなのである。

画像: MEB+は「革命」ではなく「進化」

(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Volkswagen AG)
※本記事はプレスリリースなどをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。

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