日本導入直後に短時間試乗した「Passat eHybrid」をあらためて借りて、長距離ドライブに出かけてみました。

フルモデルチェンジにより9代目に進化した新型「Passat」がステーションワゴンボディのみとなり、これまで「Passat Variant」と呼ばれてきたワゴンが単にPassatと名乗ることになったのはご存じのとおり。日本では3種類のパワートレインが用意され、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する110kWの1.5 eTSI、142kWの2.0 TDI、そして、システム出力150kWを誇るプラグインハイブリッドのeHybridが選択可能。そのなかから、1.5L 直列4気筒直噴ガソリンターボエンジンと85kWの電気モーター、外部から充電可能な25.7kWhの駆動用バッテリーを搭載する「Passat eHybrid R-Line」をロングドライブに連れ出し、その実力を確かめることにしました。
実は以前試乗した車両は今回と同じもので、その特徴についてはぜひ上記の試乗記をご覧いただくとして、今回は東京〜宮城の往復にPassat eHybrid R-Lineを使用しながら、EV走行可能距離や燃費についてチェックします。
往路:東京→宮城
Passat eHybridは、バッテリー残量がゼロでなければ、システムの始動後、EV走行を行う“E-MODE”が自動的に選択されます。まずはバッテリーの電力だけでどれだけ走れるかを確認するため、E-MODEのまま、バッテリー100%の状態でスタートします。数km走って首都高速道路に入り、その後、常磐道に向かいました。

Passat eHybridの加速はEVに比べてやや控えめとはいえ、一般道だけでなく、高速道路でも十分なレベル。正直なところその加速に不満は感じませんでした。EV同様、モーターで加速・巡航するため、走行時の静粛性が高いのもPassat eHybridの魅力のひとつです。
カタログを見るとプラグインレンジ(EV走行からハイブリッド走行に切り替わるまでの距離)が153km、等価EVレンジ(充電した電気でEV走行できる距離)が142kmです。常磐道を下っていくと、走りはじめてから126kmでバッテリーが0%になり、さらに3km走るとEV走行可能距離が0kmになりました。そしてしばらくすると、ハイブリッド走行に切り替わりました。比較的電力消費の多い高速道路で、130km近くEV走行ができたのには驚きです。


バッテリーが0%になってからは、エンジンとモーターを併用する“ふつうの”ハイブリッド車として走ることになります。スタートはモーターが担当し、途中からエンジンが始動。走行中にアクセルペダルを緩めるとエンジンが停止してモーターだけで加速する場面もあります。
この状態で高速を走り、宮城に到着するまでの燃費は21.3km/Lをマーク。これだけ見ると1.5 eTSIや2.0 TDIとほぼ互角の数字といえますが、EV走行時を含めた323km走行の燃費表示は35.1km/Lとなり、燃料消費が10L弱というのは、なんともうれしいものです。
宮城に着いた当日と2日目は、バッテリー残量が0%のままで「スポーツランドSUGO」と名取市にあるホテルを行ったり来たり。その際の燃費は17km/Lほどでした。
復路:宮城→仙台
そして2日目の夜、ホテルの普通充電器が空いていたので、Passat eHybridを満充電。6kWの普通充電器を226分使用し、22.9kWhを追加して100%になりました。

3日目は、Hybridモードで走ってみることにしました。とはいえ、一般道を走るかぎりはほぼモーターを使い、エンジンがかかるのは登り坂を走るときくらいですので、ふだんはあえてHybridモードを選ぶ理由はないといえます。
この日は朝に名取のホテルを出発し、スポーツランドSUGOでひと仕事を終えたあと帰路に。試しにバッテリー残量が0%になるまでは高速を使わず、国道6号で東京に向かってみることにしました。
EVの場合、高速道路よりも一般道のほうが電費が良くなる傾向にありますが、このPassat eHybridでも同じことがいえ、実際、高速走行に比べて一般道のほうがバッテリーの減りが緩やかです。結局、バッテリーが0%になるまで走ったら、福島県のいわき市に辿り着いてしまいました。走行できた距離は159kmで、以前、私が所有していた「Golf GTE」はEV走行がせいぜい50kmでしたので、性能の向上には驚くばかり。これだけ走れれば、日々の通勤やちょっとしたお出かけなどでも、EV走行だけで十分カバーできそうです。
ところで、日本仕様のPassat eHybridは日本の急速充電規格「CHAdeMO」には対応しておらず、普通充電のみが可能です。そのため、ドライブの途中に高速道路などで充電ができませんが、はじめから経路充電(移動の途中に充電すること)はしないと割り切れるので、そのぶん気が楽でした。
最終的には878kmを走り、EV走行時を含めた平均燃費は27.1km/Lとなりました。車両返却前に給油したところ、飲み込んだガソリンの量は32.72Lで、これだけで東京〜仙台を往復できたのはとても得した気分です。

自宅や勤務先で普通充電ができる人にとって、“ほぼEV”として使えるPassat eHybridは、かなり魅力的な選択肢といえるのではないでしょうか。私自身もGolf GTEからの進化に驚くとともに、最新のPHEVの可能性を再認識する良い機会になりました。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)