フォルクスワーゲンのシンボルとして絶大な人気を誇る「Golf GTI(ゴルフGTI)」。伝説の初代をドイツで試乗し、その魅力に迫る。
2024年6月、ドイツのフォルクスワーゲン・オスナブリュックでGolfの新旧スポーツモデルを一堂に集めた「50 Years of Sporty Golf」が開催された。
その概要は上記のレポートをご一読いただくとして、その際にVolkswagen Classicが所有する「Golf1 GTI」を試乗するチャンスを得た。
Golf1 GTIは、Golf1の誕生から2年後に登場したホットハッチ。110psの1.6L 直列4気筒エンジンが搭載され、さらに、ハードなスプリングとビルシュタイン製ダンパー、前後スタビライザー、フロントベンチレーテッドのディスクブレーキなどを手に入れたことにより、俊敏な走りを実現。PorscheやBMWに臆することなくアウトバーンの追い越し車線を最高速180km/hオーバーの速さで颯爽と駆け抜け、“アウトバーンの民主化”を成し遂げた。
そのストーリーは上のレポートをご覧いただきたいが、今回試乗したGolf1 GTIは1983年製で、この世代としては最終モデルにあたる。
いちばんの特徴は搭載されるエンジンで、1.6Lに代えて1.8Lへと排気量が拡大され、最高出力も110psから112psへとアップしている。コックピットの様子も初期型とは大きく異なり、4本スポークのステアリングホイールや新しいデザインのメーターパネルとダッシュボードを採用。シート生地は赤と黒のチェック柄ではないが、ゴルフボール型のシフトレバーは健在だ。
さっそくエンジンをスタートさせると、威勢の良いサウンドとバイブレーションがキャビンを満たし、いやがうえにも気分は高まる。そして、くだんのシフトレバーを1速に送り、クラッチをつなぐと、Golf1 GTIは軽々と動き出す。低回転から力強いエンジンは実に活発で、アクセルペダルの動きに鋭くダイレクトに反応。面白いようにこのクルマを加速してみせる。アウトバーンに足を踏み入れる機会はなかったものの、一般道を走るだけでも、その痛快さにはおのずと笑顔がこぼれてしまう。
乗り心地は、ときおりリヤから軽く突き上げられるようなショックを拾うものの、街乗りでも十分許せる快適さを確保。約800kgという軽さと、現代でも通用するしっかりとしたボディのおかげで、走りは思いのほか軽快で、きびきび動くさまはまさにホットハッチの楽しさ。こんなクルマがいまから50年近く前に登場したのだから、当時のファンの興奮は計り知れない。
この日は1989年製の「Golf2 GTI」にも試乗できた。このクルマには、Golf1 GTIと基本的に同じ1.8Lエンジンが搭載されるが、触媒コンバーターが追加されたためにパワーは112psから107psにダウンするうえ、車両重量が増したことで、Golf1 GTIに比べて活発さが足りない印象。その一方で、挙動は安定感を増し、乗り心地も明らかに向上。静粛性からのノイズやバイブレーションもほどよくカットされ、クルマとしての進化を実感できる。
その後、フォルクスワーゲンは129psを発揮する新しい16バルブエンジンを開発してGolf2 GTIに搭載することで、パワー不足を指摘する声に応えている。
Golf2 GTIと比較試乗したことで、そのスポーティさが際だつ結果となったGolf1 GTI。現代の基準でも実に魅力的で、このクルマに多くのファンが熱狂し、いまなおその魅力が色あせない理由がわかったような気がする。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Volkswagen Japan)