題名にもあるとおり、最初は、1台だった。

Polistil(Italy)の1/25 Golf2。コレクションの最初の1台。
5500台を超えた辺りから、数えなくなった。

現在のコレクション(・・・の一部)。
初めてのマイカーとしてGolf2に乗っていた頃、仕事場でふとしたことからクルマの話題になり「Golfのミニカーを探してる」と言うと「ウチに要らないGolfのミニカーあるのであげます。」という今思えば奇跡のような展開で、写真の黒いGolf2 GTIが手元に来た。
ドイツのカローラなんて言われていたGolf、フェラーリやポルシェみたいな趣味性の高いクルマじゃないだろうから、ミニカーなんてないのだと思い込んでた。
1990年代初頭の話だからネットもなく、情報源もほとんどなかった。
嬉しかったのはもちろん「Golfのミニカーなんてあるんだ!」という驚きが大きかった。
その1台がきっかけで、他にもあるか探してみたくなり、オモチャ屋さんや模型屋さんを物色するようになった。
でも、どうにも見つからない。
まだ、実車のGolf2がたくさん走ってた時代だったけど、オモチャ売り場にGolfのミニカーはなかった。
ミニカー専門店、なんて発想はまだ持っていなかった。
しばらくそんな時期が続いて、ときどきプラモデルを見かけるようになる。
「プラモもあるのか」と気づいて、出張先や旅行先で、町の玩具店の棚を隅々まで見るようになる。
見つかるのは主に、童友社のキットで、組み立てたりもした。

まだ実車の初代Golfを持っていなかった頃、欲しいと思っていた色で組み立て。

童友社のプラモデル。パッケージには「Golf Ci 1.7」と書いてあります。
その後、自家用車をGolf2から初代Cabrioに乗り換えた辺りから、インターネットというものが日常的になりはじめ、ホームページに付属していた「掲示板」という、コメントでやり取り出来るスペースでGolf好きの人と繋がるようになったのもこの頃。
ここでも、Golfのような趣味性の高くない(と思い込んでた)クルマで、魅力を共有できるようになるなんて思っていなかったので、そのこと自体とても新鮮だったのを覚えている。
ネットが発達してくると、当然検索をかけるようになって、国内外のGolfミニカーをリサーチしはじめ、まず手に入ったのはDetail Carsの1/43初代Cabrioシリーズだった。

Detail Carsの1/43 Cabrio。カラーバリーション豊富で、全種集めた。
色も各種あり、幌もオープン、クローズドの両方があった。
「全種類欲しい。」という蒐集癖の芽は、この時顔を出したのかも知れない。
Golfを通して繋がった友人が「こんなのあったよ」と教えてくれることも増えて、少しずつ台数は増えていく。
そして、1997年、初のドイツ旅行。
別の回(【Liebe zum Golf(ゴルフへの愛)】Nr.5:みんな、みんなGolfのせいだ。)に旅の詳細は書いたとおりだけど、立ち寄る町という町でミニカーを探した。
海外旅行先で自由にネット検索なんてまだだったから、ホテルの電話帳が頼り。
モデルショップや玩具店をリストアップして鋭意探しに出た。
ドイツは、モデルカー天国である。

ミニカー探しの途中で。"マダムキャバレー"というお店のT3@ミュンヘン。
模型好きが多いのか、たいていの町に「それ系の店」がある。
だいたいその手の店のショーウィンドウは、曼荼羅かモザイク画のように細かなモノが並んでいるので、遠くからでも検知(感知?)できるものだ。
模型屋の雰囲気は、日本と変わらない。
観光地然としていることもなく、ガヤガヤと賑わってるわけでもなく、ただ、店番のオヤジがヒマでテレビを見てるか、常連客とダベってるか、というパターンだ。

ミュンヘンのミニカー店。珍しいGolfなどが揃っていた。
そこへ、見慣れぬ日本人客が、そこだけ覚えたドイツ語で尋ねる。
「イッヒメヒテ アイニゲゴルフモデルアウト カウフェン。」どうでも良いが、買う、は、カウフェン(kaufen)なのだ。
だからといって売る、は、ウルフェンではない。
そんな辿々しいドイツ語でも、模型屋のオヤジは「ちょっと待て」とやおら立ち上がり、ホコリの被った箱を引っ張り出してくれる。
ドイツ最初の収穫は、1/87スケールの黄色いGolf2(ADAC仕様)だった。

ドイツで収穫した1/87シリーズ。初代Passatに、Caddyに、こんなのあるのか!と新鮮だった。
もとは鉄道模型の情景用に作られたスケールだが、出来の良さとバリエーションの多さでミニカーとして独自の発展を遂げている。
町の百貨店の玩具売り場も外せない。
幼児向けの、投げてもぶつけても壊れないような柔らかい素材の「おもちゃのGolf」が見つかる。
現地のあるフォルクスワーゲンディーラーに立ち寄ったときのこと。
よく店の一角に、両親の商談中、お子さまに「時間潰し」していただくためのオモチャ箱があるけれど、その中...スコップや積み木に混じってプラ製のGolfが顔を出しているではないか。
でもどう見ても売り物には見えない。
拙いドイツ語で、お店のお兄さんに「売ってくれませんか?」と尋ねると「え?これが欲しいのかい?あげるよ!」ということで、なんとも愛らしい黄色いGolfが手に入ったりもした。
こう言うのはまず日本に入って来てないと思われる。

ディーラーの玩具箱で見つけて、もらったソフビ?Golf。可愛いけれど、プロポーションがしっかりしている。
精巧なスケールモデルも良いが、玩具系のゴルフは貴重だ。
そして、アウトバーンのドライブインにも、オモチャコーナーがあればチェック。
ゼンマイ付きや、トミカサイズのGolfが見つかる。
さすがドイツ…あるところにはある。
何軒目の模型店だろうか、1/87のフォルクスワーゲンが17台も入った詰め合わせボックスを発見!

生産5000万台(以上)セット。箱絵も魅力的。

5000万台セット。オレンジ色のは初代Polo。なぜか、初代GolfはCabrioのみで、ハッチバックが入っていない。

こちらは6000万台セット。Golf1ハッチバックの代わりにGolf3 Cabrioletが入っている。
今ではとんでもない値がついてるけれど、当時はもちろん定価。
このセット自体にもバリエーションがあることなど知る由もなく、とにかく宝物を見つけたような気分になった。
ところで、ドイツには「閉店法」というものがあり、日曜は商店が休みだ。
だからといって、ミニカー探しを諦めてはいけない。

Scirocco2 やはり本国...貴重な車両が現役。
クルマで旅をしていてたまたま目にした"FlohMarkt"と書かれた看板。
Flohというドイツ語は知らなかったけれど、なぜだか瞬時に「蚤の市か!」と思い当たり、段ボールに手書きされた矢印に従っていくと、町のはずれの広場に到着。
いわゆるフリマのような賑わいで、これはまた本当の宝探しのようで楽しい。
「フリーマケット」、って「free」のように思われているけれど、実はflea(ノミ)なのである。
古着から骨董から並んでいるのも日本のフリマと同じ。
使い古しのオモチャも箱に無造作に放り込まれて売られている。
ゴソゴソと掘り返していると、あった!見たことのないGolfのミニカー。
店番の男の子に「これいくら?」と聞くと、慌ててお父さんを呼びに行った。
「1マルクでいいよ。」(当時はユーロではなく、マルクだった)
1マルクって、70円!このご家族には二束三文でも、私にはお宝。
その後も何台か発掘し、なかなかの収穫。
こうして「どうせ、そんなに種類はないだろう」と思って探しはじめたGolfのミニカーに、大きさから材質から実に色々なモノがあることがわかった。わかってしまった。
初めてのドイツ訪問で100台近いミニカーをゲット、本国の底力に再訪を決意するとともに、終わりのない蒐集の旅が幕を開けるのだった。
いや、沼が口を開けるのだった。
次回は、その沼がどれほど底ナシであったか・・・ズブズブと沈んでゆく様子を綴りたい。

この旅で買い集めたフォルクスワーゲンのミニカー。あるところにはある…。

なぜそんなにGolfが好きなのか、そんなにGolf好きだと人生どうなっちゃうのか。折しも、Golf誕生50周年の節目にあたる2024年にスタートした、私の狂ったGolf愛を語り尽くす【Liebe zum Golf / リーベ ツム ゴルフ(ゴルフへの愛)】。熱く、深く、濃く、という編集方針に則り、偏愛自動車趣味の拙文を綴ります。