■K70 ■80mm ■Polistil(Italy) / Majorette(France)
1970年、空冷ビートルの後継として、ウォルフスブルクが世に出したのは、ゴルフでもポロでもなく、K70という自動車でした。これが「水冷エンジン搭載」フォルクスワーゲンの第一号になります。
1960年代のフォルクスワーゲンが、他社であるNSUが開発した4ドアセダンを改良し、VWブランドで製造販売したと言う変わった出自。NSUとは世界初のロータリーエンジン車を開発したメーカーで、1967年登場のロータリーエンジン車Ro80を一般的なピストンエンジンに置き換えたものとしてK70が誕生しました。背景には、空冷ビートルの後継モデル開発に苦労していたこと、TYPE4(VW411)の販売不振やNSUの買収が重なったことがあったようです。
Kは、ドイツ語のピストンにあたる”Kolben”、70は当初計画されていた馬力を表しています。
VWブランドでリメイクする際に、ボディはオリジナルデザインが施されました。角目2灯が初期型、丸目4灯が後期型ですが、ヒットにはつながらず1970~74年という短いモデル生命となりました。
実車の話が長くなりましたが、そんな数奇なK70にも少数ながらミニカーが存在しています。
私は「水冷エンジン搭載」のフォルクスワーゲンミニカーに絞って集めているので、この記念すべき水冷第一号のミニカーは欠かせない、と、ネットオークションも未発達の頃、国内外をあちこち探したのを覚えています。
この2台はドイツ製ではなく、それぞれイタリア(角目)、フランス製(丸目)というところが面白いです。
ドイツの蚤の市でエンブレムと一緒に手に入れたボロボロの取扱説明書は1971年の発行。友人が所有していたので、実車に触れたことがあります。
のびやかでグラスエリアが大きいクリーンなフォルムは、今やすっかり廃れてしまった”正統派セダン”として繊細ながらも堂々とした風格を湛えていました。
大人の目で見ればエレガントな4ドアサルーンも、ミニカーのメイン顧客である子どもたちに魅力的に見えていたのかどうか心配になりますが、塗装が剥げるまで遊ばれた一台を見ると、しっかりキッズの心も掴んでいたようにも見えますね。
das kleine Golfgang(ダス クライネゴルフガング)は、ゴルフのミニカー、"Golf玩具"にまつわるコラム。1974年に実車が誕生して以来、古今東西でつくられてきたゴルフのミニカーたちの小さなボディに垣間見えるストーリーを、小さく紹介しています。101回目以降、ゴルフ以外の水冷VWも紹介していきます