マイナーチェンジした「ティグアン」のなかから、新型導入記念特別仕様車の「TSI ファーストエディション」を試乗。その進化は?
今回のマイナーチェンジでは、内外装のリニューアルに加えて、パワートレインの変更が行われている。
その内容については上のニュースをご覧いただくとして、現時点では1.5 TSIガソリンエンジンを積むFFモデルだけが選択可能で、そのなかから装備充実の特別仕様車「ティグアン TSI ファーストエディション」を、箱根で行われた試乗会で試すことができた。
運転席に陣取ると、ステアリングホイールやタッチパネルを採用したエアコンのコントロールなど、最新のパサート同様のデザインに変更されていることに気づく。デジタルメーターもDigital Cockpit Proにバージョンアップされ、地図の全面表示や、表示の細かいカスタマイズに対応。純正ナビゲーションシステムもMIB3と呼ばれる最新のDiscover Proを採用。常時インターネット接続が可能になるほか、スマートフォンの連携ではワイヤレスCarPlayに対応するなど進化のほどがうかがえる。USBはタイプCが2つ用意される。
ちなみに、CarPlayでAppleの地図アプリを使用する場合、メーター内にアプリの地図は表示されないものの、ルート案内時の矢印などが表示することができるようになり、なんらかの都合で地図アプリを利用する場合には重宝する。
ティグアン TSI ファーストエディションは、充実した装備が自慢のティグアン TSI エレガンスをベースに、魅力的なさまざまな装備を追加した特別仕様車。たとえば、ブラックとブラウンのツートンのレザーシートやダークカラーのウッドパネル、ブラックのルーフライニングなどが、上質で落ち着いた雰囲気をつくりあげている。
走りにかかわるところでも、ティグアン TSI エレガンスには設定のないDCCパッケージが標準で採用され、可変ダンピングコントロールのアダプティブシャシーコントロール“DCC”と1インチアップした19インチのアルミホイールが装着されている。
さらにオプションのラグジュアリーパッケージが装着された試乗車では、カーマン カードンのプレミアムサウンドシステムや電動パノラマスライディングルーフが追加され、ほしいものがすべて手に入るクルマに仕上がっている。
パッケージングやユーティリティの部分はマイナーチェンジ前と基本的には変わらない。ということで、そのあたりは以前の試乗記をご覧いただきたい。
さっそく走り出すと、1.5 TSIと湿式多板クラッチを用いた7速DSGが、これまで以上に活発な動きをもたらしていた。これまでの1.4 TSIも低速から必要十分なトルクを発揮していたが、いわゆるこの「1.5 TSI evo」は、アクセルペダルの操作に対して素早くレスポンスし、静粛性やスムーズさが向上。動き出しでもたつくような感じはないし、これまで以上に扱いやすいエンジンになっている。
ふだんは2000rpm以下でも事足りてしまうが、いざという場面でアクセルペダルを深く踏み込んでやれば3000rpmあたりからさらに力強さが増し、5000rpmなかばまでスムーズに吹き上がる。
一方、アクセルペダルを軽く踏む状況では気筒休止機構のACTが作動し、2シリンダーに切り替わることで瞬間燃費の数字が跳ね上がる。さらに、エコモードを選んだ場合、アクセルオフでクラッチが切り離されるコースティング走行となり、これらをうまく活用することで大きな燃費向上が期待できるのだ。
DCCが装着されるこのクルマの場合、19インチタイヤが多少路面からのショックを拾うことがあるものの、一般道から高速までフラットで快適な乗り心地が確保される。コーナーリングの際にもロールがよく抑えられるうえに、しなやかな動きのサスペンションがよく踏ん張り、SUVらしからぬ軽快なハンドリングが楽しめる。
新しい機能として、従来の“Traffic Jam Assist”を進化させた“Travel Assist”が搭載された。これは、全速度域で速度調整と車間調整、レーンキープを行う半自動運転機能。Lane Assistがオフの状態でもACCのスイッチをオンにしておけば、ステアリングホイールのスイッチを押すだけで起動できるようになったのがうれしいところだ。
ということで、1.5 TSIはティグアンのFF仕様を気持ちよく走らせるには十分な実力の持ち主であり、特別仕様車のティグアン TSI ファーストエディションは走りも装備も魅力的なクルマだった。
SUVらしい存在感あるフォルムや、高めのアイポイントがもたらす運転のしやすさ、余裕ある広さを誇るキャビンとラゲッジスペースを求める人のなかで、オンロード走行がメインというのではあれば、FFのティグアンTSIは文句のない選択肢といえるだろう。
一方、4WDの4MOTIONを希望する人も少なくないはずで、実際、マイナーチェンジ前は「ティグアン TDI 4MOTION」が販売の約半数を占めていた。ところが、新型ではTDIの技術的な理由から日本導入の目処が立っていないといい、かといって代わりにスポーツモデルの「ティグアンR」を選ぶという人は多くないだろう。“本格派SUV”という位置づけのティグアンにとっては辛い状況にあり、ガソリンエンジン搭載の4MOTIONモデルを導入されるかどうかを含めて、今後の展開に注目していきたい。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, VGJ)