■Golfsrudel #03 ■Museum ■Stockerau (Austria)
さ……三回に分けても薄まるどころかますます濃くなるゴルフ濃度。好きな人でもお腹いっぱいと思いますが、気にせず続けます。わはは。
私がヨーゼフを訪ねるきっかけになったのは、たまたま目にしたこの一枚の写真。初代ゴルフをベースにしたキャンピングカーです。
キャンプ好きでもある私は、運転席と居室部分が一体化されたこのキャンパーに一目惚れ。欲しい。欲しすぎる、というわけで現実的な使い勝手を妄想、いや検証するために模型をこさえようと資料を検索しまくりました。なのに、なんでもアーカイブのこの時代に、ほとんどヒットする資料がない!
ボディにある“BISCHOFBERGER”で検索するも、とうに廃業してしまったようで、いくつかの類似車両が見つかるだけでこの個体は出てこない。
詳細は謎に包まれたまま、想像力と妄想力で完成した模型がこちら。さらに天井が高いタイプがあると仮定して3Dプリンタで制作しています。
そして……謎が深いほど収集家は燃(萌)えるわけで、その後も考えうるあらゆる検索ワードでググり、ドイツ語の関連スレッドもなんとか読み解きながら、とうとう「プロトタイプのみで、発売はされなかった」という記述に行き当たります。
あわよくば本物を探し出して……という目論見はこの時点で潰(つい)えたように思われました。
しかしそのとき……見た写真ばかりだなー、とwebをスクロールする指が止まったのです。
「マジかー! あるのかー!」
所狭しと並ぶ1/1ゴルフに紛れていたのは、若干タイプは違いますが、同じ“ビショフベルガー製”のキャンパー。
そこからは早かった。オーストリアにヤバいコレクターがいること、ゴルフを114台持ってること。そこに求めてるゴルフがあること。「これは行くっきゃない...」と心に決めたのは2018年の始めでした。
当時は非公開の個人コレクションでしたが、webに「2019春博物館としてオープン予定」という記述を見つけ、ココロの準備を開始。若干のメールのやり取りを経て機は熟し、ついに訪問がかなったのです。
実は、本人に会ったら頼もうかと思ってたのですよ。
「売ってくれなくていいから、貸してくれないか?」って。
でも、ヨーゼフの話を聞いていたらそんな気もなくなりました。
彼も、「20年探して、3年前にようやく手に入れたんだ」と。
実車の内装は年式相応に痛んでおり、相当手を入れなければ実用にはならないけれど、これはもう文化遺産、きちんと後世に残さないとね。
友人がプレゼントしてくれたというミニチュアもありました。ヨーゼフは当然ミニカーも好きで、ないものは自分で改造して作ってるあたりも私と似てるなぁ、と思ったのです彼の周辺コレクションは次回ご紹介します。
さて……ここでホンモノに触れた私は、思いを新たにしました。3Dプリンタもあるし、現代の技術でこれを再現しよう、と。そしてそのクルマで世界を巡りここにもまた立ち寄るぞ、と。
作り手としての私のスローガン「Create to Exist:売ってないものは作るしかない」を実践せなばなりません。実物を見て満足するどころか、さらに燃え上がってしまったわけですが……それも想定内なのであります。
さらに続く……
(Text & Photos by Kenji Yokokawa)