驚異の低燃費、0.9リットル/100kmを実現したフォルクスワーゲンのコンセプトカー『XL1』に、モータージャーナリストの河村康彦さんが試乗した。まずは『XL1』の概要からお届けする。
1リッターの燃料で100kmを走り切る--VWがそんな明快なシナリオの下に開発したコンセプトカーを最初にリリースしたのは2002年の春。
しかも、そんなコンセプトが決して"夢物語"ではない事を証明したのは、当時VW社の取締役会長だった、かのフェルディナント・ピエヒその人だ。本社のあるウォルフスブルグの工場からハンブルグの株主総会会場までの230km区間を、氏はアウトバーンを用いつつ約3時間で走破。平均速度が約75kmという結果に得られたその際の燃費データは、実に0.89リッター/100km。すなわち日本式に換算すれば112.4km/リッターというものであったという。
しかも、そんなコンセプトが決して"夢物語"ではない事を証明したのは、当時VW社の取締役会長だった、かのフェルディナント・ピエヒその人だ。本社のあるウォルフスブルグの工場からハンブルグの株主総会会場までの230km区間を、氏はアウトバーンを用いつつ約3時間で走破。平均速度が約75kmという結果に得られたその際の燃費データは、実に0.89リッター/100km。すなわち日本式に換算すれば112.4km/リッターというものであったという。
それから9年近く。
見事日本が優勝に至ったサッカーの"アジアカップ"と場所とタイミングを合わせるかのように開催された2011年1月末のカタール・モーターショーで初披露された『XL1』は、ズバリ"1リッターカー"という名を冠された前出のモデルを直接のルーツとする、VWが再び開発したスーパー・エコノミーな1台だ。
見事日本が優勝に至ったサッカーの"アジアカップ"と場所とタイミングを合わせるかのように開催された2011年1月末のカタール・モーターショーで初披露された『XL1』は、ズバリ"1リッターカー"という名を冠された前出のモデルを直接のルーツとする、VWが再び開発したスーパー・エコノミーな1台だ。
ただし、そこに搭載されるパワーパックは1リッターカーのわずかに300cc単気筒の自然吸気ディーゼル・エンジン+6速セミオートマチックという組み合わせから、800ccのターボ付き2気筒ディーゼル・エンジン+電気モーター+7速DCTというハイブリッド・システムへと大変化を遂げている。
5kWhという容量のリチウムイオン電池を外部充電によってフルチャージ状態にしておけば、当初の35kmの区間は排気ガスがゼロのEV走行が可能な"プラグイン・ハイブリッド車"というのもXL1ならではだ。
5kWhという容量のリチウムイオン電池を外部充電によってフルチャージ状態にしておけば、当初の35kmの区間は排気ガスがゼロのEV走行が可能な"プラグイン・ハイブリッド車"というのもXL1ならではだ。
ちなみに、そんなこの2台の間にはさらに2009年秋のフランクフルト・モーターショーに出展をされた、『L1』なるやはり直系の兄弟モデルも存在する。そのパワーパックは最新のXL1と酷似をするハイブリッド・システムだが、こちらは外部充電を受け入れるプラグイン機能を持たなかった事が、XL1のシステムとの大きな相違点だ。
その他、L1からXL1へと進化をしての目だった変更点は、まずボディ全幅が1,200mmから1,665mmへと大きく増した事。実は、これはシーティング・レイアウトをタンデム式2シーターからオーソドックスな横2シーターへと変更した事によるもの。その理由を「タンデム式では車内でのコミュニケーションに問題が残るため」という。これにより、キャノピー・カバー風だったドアのデザインも左右独立式へと変更。また、L1には設定されていたボタン操作によってモーター出力をアップさせる"スポーツモード"が、XL1では廃止されている。
そんな両車のスペックを比較した時、多くの人が疑問を抱くのがその車両重量の差かも知れない。XL1の車両重量は795kg。これは、同様にCFRP製のボディを採用しつつもL1の380kgに対して2倍以上という計算。"1リッターカー"からすれば、実に500kg以上も重いのだ。
そんな両車のスペックを比較した時、多くの人が疑問を抱くのがその車両重量の差かも知れない。XL1の車両重量は795kg。これは、同様にCFRP製のボディを採用しつつもL1の380kgに対して2倍以上という計算。"1リッターカー"からすれば、実に500kg以上も重いのだ。
しかし、この点に関しては「XL1には、それだけ量産化への要件が入れ込まれているから」というのも正解のひとつであるはずだ。実際、このモデルにはナビゲーション・システムやエアコンなど、いざ市販化が行われれば多くのユーザーが"必須"と考えるであろう装備がすでに採用されているし、安全性に関しても極めて高いレベルが確保されているという。また、ダッシュボードのデザインやクオリティなども、まさにこのままいつ市販をされてもおかしくない状態。
すなわち、以前から聞かれている「この種のモデルを2013年には販売したい」というフレーズが、XL1を目にするといよいよ現実味を帯びて感じられるという事だ! (後編につづく)
(Text: Y.KAWAMURA / Photo: Volkswagen Group Japan)