わずか1Lの燃料で100kmの走行が可能な"1Lカー"として2013年に登場し、250台が限定生産された「フォルクスワーゲンXL1」を日本で試乗。まずは究極の低燃費車の素顔に迫る。
「XL1を試乗しませんか?」
そもそもフォルクスワーゲンの1Lカー構想が明らかになったのは2001年のこと。当時、フォルクスワーゲンAGの取締役会会長を務めていたフェルディナント・ピエヒ氏によるプロジェクトで、彼は取締役会会長の任期中に1Lカーに乗ると公言していた。
そして、7年後のフランクフルトショーで、より現実味を帯びた2代目L1が登場。CFRPモノコックにより車両重量を380kgに抑えられたL1は、タンデム2シーターのコックピット、0.8L 2気筒のディーゼルハイブリッドシステム、7速DSGなどにより100km走行あたり1.38Lの燃費を達成。これをもとに、フォルクスワーゲンが2013年に市販に漕ぎ着けたのがXL1というわけである。
L1からXL1に進化するにあたり、そのボディサイズは大きく変化した。L1が全長3813×全幅1200×全高1143mmであるのに対し、XL1は全長3888×全幅1665×全高1153mm。なんと全幅が465mmも拡大されているのだ。
その理由は室内を覗きこめば一目瞭然。同じ2シーターでもL1がタンデムのシートレイアウトだったのに対し、XL1では実用性を考慮して助手席を運転席の横に配置したのである。その一方で、できるかぎり幅を広げたくないという思いから、運転席に対して助手席を少し後ろにオフセットさせることで、最小限のサイズアップで乗員が快適に過ごすスペースを確保したのだ。
ボディが大きくなれば、いかにCFRPを多用するとはいえ車両重量は増えるし、走行時の空気抵抗も大きくなる。そのままでは当然燃費は悪化することから、フォルクスワーゲンはL1よりもさらに効率の高いパワートレインを生み出す必要があった。そこで開発されたのが、0.8L TDIと電気モーター、7速DSGに大容量のリチウムイオンバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムである。
これらがリヤアクスル上に配置される一方、駆動用の5.5kWhのリチウムイオンバッテリーはフロントアクスル背後にレイアウトしている。バッテリーが満充電の状態なら、その電力だけで約35kmのEV走行が可能。ハイブリッド走行時の0-100km/h加速は12.7秒で、160km/hでリミッターが作動する設定だ。
パワートレインの進化とともに、軽量化や走行抵抗の低減にも努力の跡が見られる。たとえば、フロントホイールのカバーを取り外してみると、マグネシウム製のホイールが顔を覗かせる。さらにその奥を見ると、セラミックのブレーキディスクが収まっているのだ。他にもCFRP製のスタビライザーを採用するなど、涙ぐましいほどの軽量化が図られている。
外観上の特徴として見逃せないのが、ドアミラーが装着されていないことだ。代わりにウイング式ドアにはカメラが設置され、ドアの内張に設けられたモニターで左右の後方を確認することになる。
こうした積み重ねにより、XL1は795kgの車両重量とCd値0.168を実現し、L1よりもさらに低燃費の0.9L/100km(=111.1km/L)を達成した。
(Text by S.Ubukata / Photos by M.Arakawa, Volkswagen)
「XL1を試乗しませんか?」
耳を疑いたくなるような話が舞い込んできた。XL1といえば、市販車初の"1Lカー"......といってもエンジンの排気量が1Lというわけではなく、1Lの燃料で100kmの走行が可能な超低燃費車を意味する。
厳密には100km走行あたりの燃料消費率は0.9L、日本式にいうと111.1km/Lの燃費(NEDC複合モード)を誇るXL1は、2013年に登場し、これまで250台が生産されたという。日本でも2013年の東京モーターショーに参考出品されているだけに、会場でその姿を見たり、あるいはその名前に聞き覚えるのある人も多いに違いない。
しかし、日本に正規輸入されることなく生産は終了。残念ながら私は一度も試乗する機会に恵まれなかった。そんなXL1がオーナーのご厚意でここ日本で試乗できるとは、夢のような話である。
そもそもフォルクスワーゲンの1Lカー構想が明らかになったのは2001年のこと。当時、フォルクスワーゲンAGの取締役会会長を務めていたフェルディナント・ピエヒ氏によるプロジェクトで、彼は取締役会会長の任期中に1Lカーに乗ると公言していた。
そのピエヒ氏が1Lカーのプロトタイプである「L1」に乗り、メディアの前に姿を現したのは2002年4月15日のことで、前日このL1はウォルフスブルクからハンブルクまでの230kmを軽油2.1Lで走破。100kmあたり0.89Lの燃費を記録していた。
翌16日、ピエヒ氏は取締役会会長の任期が満了。65歳の誕生日を迎えた17日からは新たに監査役会会長に就任しているから、まんまと約束を果たしたことになる。
ただし、このL1はすぐさま市販されるには至らなかった。軽量化のためにCFRP(カーボン)ボディを採用したL1を実用化するのは、コストなどの面から時期尚早と考えられたからだ。
そして、7年後のフランクフルトショーで、より現実味を帯びた2代目L1が登場。CFRPモノコックにより車両重量を380kgに抑えられたL1は、タンデム2シーターのコックピット、0.8L 2気筒のディーゼルハイブリッドシステム、7速DSGなどにより100km走行あたり1.38Lの燃費を達成。これをもとに、フォルクスワーゲンが2013年に市販に漕ぎ着けたのがXL1というわけである。
L1からXL1に進化するにあたり、そのボディサイズは大きく変化した。L1が全長3813×全幅1200×全高1143mmであるのに対し、XL1は全長3888×全幅1665×全高1153mm。なんと全幅が465mmも拡大されているのだ。
その理由は室内を覗きこめば一目瞭然。同じ2シーターでもL1がタンデムのシートレイアウトだったのに対し、XL1では実用性を考慮して助手席を運転席の横に配置したのである。その一方で、できるかぎり幅を広げたくないという思いから、運転席に対して助手席を少し後ろにオフセットさせることで、最小限のサイズアップで乗員が快適に過ごすスペースを確保したのだ。
ボディが大きくなれば、いかにCFRPを多用するとはいえ車両重量は増えるし、走行時の空気抵抗も大きくなる。そのままでは当然燃費は悪化することから、フォルクスワーゲンはL1よりもさらに効率の高いパワートレインを生み出す必要があった。そこで開発されたのが、0.8L TDIと電気モーター、7速DSGに大容量のリチウムイオンバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムである。
0.8L 2気筒のTDIエンジンは最高出力35kW(48ps)、最大トルク120Nm(12.2kgm)という性能。一方、電気モーターは20kW(27ps)、100Nm(10.2kgm)を発揮。システム全体では51kW、140Nmとなり、7速DSGにより後輪を駆動する。排ガスはユーロ6に対応する。
これらがリヤアクスル上に配置される一方、駆動用の5.5kWhのリチウムイオンバッテリーはフロントアクスル背後にレイアウトしている。バッテリーが満充電の状態なら、その電力だけで約35kmのEV走行が可能。ハイブリッド走行時の0-100km/h加速は12.7秒で、160km/hでリミッターが作動する設定だ。
パワートレインの進化とともに、軽量化や走行抵抗の低減にも努力の跡が見られる。たとえば、フロントホイールのカバーを取り外してみると、マグネシウム製のホイールが顔を覗かせる。さらにその奥を見ると、セラミックのブレーキディスクが収まっているのだ。他にもCFRP製のスタビライザーを採用するなど、涙ぐましいほどの軽量化が図られている。
ちなみにタイヤはミシュラン・エナジーセーバーが装着されるが、前115/80R15、後145/55R16というサイズで、とくにフロントタイヤの細さが際立っている。
外観上の特徴として見逃せないのが、ドアミラーが装着されていないことだ。代わりにウイング式ドアにはカメラが設置され、ドアの内張に設けられたモニターで左右の後方を確認することになる。
ラジエターグリルのないフロントマスクなどとともに、空気抵抗の低減に一役買っているのはいうまでもない。
こうした積み重ねにより、XL1は795kgの車両重量とCd値0.168を実現し、L1よりもさらに低燃費の0.9L/100km(=111.1km/L)を達成した。
では、その走りはどんなものなのか? さっそくウイングドアを開け、コックピットに乗り込むとしよう。
(Text by S.Ubukata / Photos by M.Arakawa, Volkswagen)