「Bugatti Veyron」は当初、フェイスリフトが予定されていた。しかし、それが実現することはなかった。2台目のソリテールプロジェクトは、このVeyron、そしてその生みの親へのオマージュである。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

画像: 【Auto Bild】Bugatti Veyron FKP Homageに込められた想いとは

「次の機会にだ」と、フェルディナント・カール・ピエヒ(Ferdinand Karl Piëch)は語ったとされる。そして、フランク・ヘイル(Frank Heyl)は目を輝かせながら幕を開ける。「これこそが、その次の機会です!」

目の前に立つのは「Bugatti Veyron」。20年前、自動車工学における“可能性”の限界を塗り替えたクルマ。ハイパーカー時代の幕を切って落とした存在である。

だが、待て。どこか様子がおかしい。一見すると20年前の「Bugatti Veyron」に見えるこの個体は、よく見るとまったくの新型車であることが分かる。これこそが「Bugatti Veyron FKP Homage」―すなわちBugatti Veyron 2.0である。

Bugatti Veyron FKP Homageとは

私は、ブガッティのオーダーメイド部門「Programme Solitaire」の第2弾プロジェクトの前に立っている。2025年に創設されたこのプログラムは、選ばれた顧客の自動車に関する夢を現実のものとするためのものだ。

第1弾の「Brouillard」に続き、フランク・ヘイル率いるデザインチームは、「Programme Solitaire」がいかに多面的であるかを示してみせた。

画像: ブガッティ ブルイヤール(Bugatti Brouillard)

ブガッティ ブルイヤール(Bugatti Brouillard)

Veyron FKP Homageは、単なる伝説的オリジナルへの賛辞にとどまらない。ハイパーカーというセグメントの礎を築いた男―フェルディナント・ピエヒのビジョンに捧げる、自動車によるオマージュなのである。

少し歴史を振り返ろう。1998年にVolkswagenがブガッティのブランド権を取得した時点で、その華々しい復活は既定路線だった。同年、4シーターの「EB118」が将来像を示す第一歩として発表された。しかし、初の市販モデルはスーパーカーでなければならないとの判断がすぐに下される。その後もコンセプトカーが続き、1999年の東京モーターショーで、後にVeyronとなるモデル(当時の名称はEB 18.4)が公開された。2001年、このスーパーカーは、フランス人レーシングドライバーのピエール・ヴェイロン(Pierre Veyron)にちなんで命名され、正式に開発のゴーサインが出された。

画像: Bugatti Veyron FKP Homageとは

フェルディナント・ピエヒが開発陣に示した要件は明確そのものだった。最高出力1000PS、最高速度400km/h、そして夜にオペラへ出かけるのにも適した快適性を備えること。機械工学を学び、「Porsche 917」の開発にも関わったこの先見の明ある人物は、すでに1997年、封筒の裏にふさわしいエンジンコンセプトのアイデアを描き留めていた。18気筒エンジンという構想であり、のちの8.0L W16の基礎となったものである。

Bugatti Veyronは2005年に完成

「Bugatti Veyron 16.4」は2005年に完成―そして、あらゆる期待を満たした。パワーは1001PS。最高速は407km/h。加速性能は0→100km/hが2.5秒、0→300km/hが16.7秒。Bugatti Veyronは“可能性”の限界を再定義しながら、まるで「Volkswagen Golf」のように扱いやすかった。すべてはピエヒの構想通りである。

その後、「Grand Sport」、「Super Sport」、「Grand Sport Vitesse」といった各バリエーション、さらに数多くの特別仕様車が登場し、2015年の「La Finale」をもってその章は幕を閉じた。

画像: ディフューザーとテールパイプはヴェイロンよりも大幅に大型化され、テールライトも現代的な解釈が施されている。

ディフューザーとテールパイプはヴェイロンよりも大幅に大型化され、テールライトも現代的な解釈が施されている。

2026年、20周年の節目(最初の顧客車両が納車されたのは2006年)に合わせ、ブガッティはこの自動車史におけるマイルストーンへ敬意を表する。ワンオフのVeyron FKP Homageは、「Bugatti Chiron Super Sport」をベースとしている。しかし実質的には、存在しなかったVeyronのフェイスリフト版そのものだと、フランク・ヘイルは説明する。

フランク・ヘイルは2008年にブガッティへ加入し、最初のプロジェクトとして1200PS仕様の「Bugatti Veyron Super Sport」を手がけた。これは当時計画されていたVeyronの再設計を事実上先取りするモデルだった。その際に開発された数々のアイデアは、20年後、ワンオフのFKP Homageにおいて実装されることになる。

画像: ブガッティ ヴェイロン FKP オマージュ(Bugatti Veyron FKP Homage)

ブガッティ ヴェイロン FKP オマージュ(Bugatti Veyron FKP Homage)

この再解釈モデルの全長と全高はオリジナルとほぼ同一だが、FKP HomageはVeyronより左右それぞれ約2cmずつワイド化されている。延長されたスプリッター、立体的なグリル、そして特徴的なL字型ライトシグネチャーを持つ最新ヘッドライトと相まって、結果として“見慣れているのに新しい”外観を生み出している。

オリジナルよりも大型のホイール

この効果はホイールにも当てはまる。一見するとVeyronのリムを忠実に再現したかのように見えるが、サイズ(285/30 ZR 20および355/25 ZR 21)を見れば、当時特別な中間サイズ(265/680 R 500 99および365/710 R 540 108)を採用していたオリジナルよりも大径であることは明らかだ。

その利点は明確である。このワンオフは、リムに接着される極めて高価なPAXタイヤを必要とせず、代わりに通常の「Michelin Pilot Sport Cup 2」タイヤを装着して走行できる点にある。

画像: 第2弾ソリテールプロジェクトを委託した顧客は、まったく同じカラーコンビネーションのオリジナルヴェイロンを所有している。

第2弾ソリテールプロジェクトを委託した顧客は、まったく同じカラーコンビネーションのオリジナルヴェイロンを所有している。

新旧モデルが最も似通っているのはサイドプロフィールである。どちらも同じ丸みを帯びたフォルムを共有する。フランク・ヘイルはこれを「後方へ傾いたシルエット」と表現する。多くの現代スーパースポーツカーが前傾姿勢を強調するのとは対照的だ。

特徴的なツートンカラーも踏襲されているが、ブガッティのデザイナーたちは巧妙なディテールを盛り込んだ。エレガントなレッドはシルバーのAlubeam塗装をベースに、その上から赤みを帯びたクリアコートを重ねることで特別な奥行きを演出している。ブラック部分も単なるブラック塗装ではなく、極めて濃色のカーボンファイバー製だ。

なお、このVeyron FKP Homageを発注した欧州の顧客は、まさに同一のカラーリングを持つVeyronを所有している。

さりげない違い

実際のところ、オリジナルと再解釈モデルは驚くほど酷似しており、Veyron FKP Homageであることを見分けるには細部に目を凝らす必要がある。たとえばフロントフェンダーの控えめなロゴや、ルーフの特徴的なエアスクープは、いずれも金属の塊から削り出されたものだ。ドアミラーは新設計で、取り付け位置も変更されている。とはいえ、いずれもディテールの範疇である。

画像: 新設計のサイドシルは、プロでさえ注意深く観察しなければ分からない。巧妙なのは、ブラック部分がドアと連動して開く構造になった点で、乗降性の向上が狙いだ。本来ならぜひ体験してみたかったが、1000万ユーロをはるかに超える価値を持つこのワンオフ車両に座ることは、度重なる依頼にもかかわらず許されなかった。説得はすべて無駄に終わった。

新設計のサイドシルは、プロでさえ注意深く観察しなければ分からない。巧妙なのは、ブラック部分がドアと連動して開く構造になった点で、乗降性の向上が狙いだ。本来ならぜひ体験してみたかったが、1000万ユーロをはるかに超える価値を持つこのワンオフ車両に座ることは、度重なる依頼にもかかわらず許されなかった。説得はすべて無駄に終わった。

新設計のサイドシルは、プロでさえ注意深く観察しなければ分からない。巧妙なのは、ブラック部分がドアと連動して開く構造になった点で、乗降性の向上が狙いだ。本来ならぜひ体験してみたかったが、1000万ユーロをはるかに超える価値を持つこのワンオフ車両に座ることは、度重なる依頼にもかかわらず許されなかった。説得はすべて無駄に終わった。

車両完成は2027年予定

その理由は、この個体が現在まだ初期段階の非走行モデルであるためだ。完成版の顧客車両は2027年に納車予定とされており、Veyronの20周年にはわずかに間に合わない計算となる。もっとも、それは大きな問題ではない。

画像: 「タイムレス」という表現が最もふさわしい。ワンオフモデルは大型ディスプレイを排し、代わりに素材の選択に最大限のこだわりを見せている。

「タイムレス」という表現が最もふさわしい。ワンオフモデルは大型ディスプレイを排し、代わりに素材の選択に最大限のこだわりを見せている。

少なくとも私はドアを開けることは許された。アルミ製のドアハンドルは握るだけで喜びを感じるほどで、それだけでも一興だ。車内では、ブガッティがクラシックとモダンのデザインバランスを追求している。

アルミ製センターコンソールは、両サイドにピエール・ヴェイロンのサインが施され、Veyronへの見事なオマージュを示す。一方で、4つのロータリーノブはChironの設計基盤を示している。丸型の3スポークステアリングホイールはVeyronをモデルにしたものだ。

その他のインテリアは、パリで織られた専用生地と豊かなブラウンレザーが組み合わされ、「EB」のモノグラムが施されている。ブガッティはこれを「Custom Car Couture」と呼ぶ。

ダッシュボードに鎮座するAudemars Piguetの時計

しかし最大のハイライトはセンターコンソール上にある。41mmの「Audemars Piguet Royal Oak Tourbillon」が、顧客の要望に応じて特注され、Veyron FKP Homageに恒久的に組み込まれている。色調を合わせた文字盤を備え、1時間に数回回転する巧妙な機構によって、駐車中であっても機械式巻き上げを作動させる。

このユニークなAPの価格は秘密だが、確実に多くのスーパーカーよりも高額であることは間違いない。

画像: 完璧な共生:ダッシュボード最上部に鎮座するのは、オーデマ ピゲ ロイヤル オーク トゥールビヨン(Audemars Piguet Royal Oak Tourbillon)

完璧な共生:ダッシュボード最上部に鎮座するのは、オーデマ ピゲ ロイヤル オーク トゥールビヨン(Audemars Piguet Royal Oak Tourbillon)

このセグメントでは価格は二の次、パフォーマンス数値も同様だ。とはいえ、参考までに「Bugatti Veyron FKP Homage」は、すでに生産終了となった8.0L W16エンジン(4ターボ仕様)の最強バージョンを搭載している。数値で表すと1600PS、1600Nmのトルク―オリジナルよりも599PS、350Nm増となる。ピエヒもさぞ誇りに思うことだろう。

良いものは時間をかけて生まれる

ピエヒがさらに誇りに思うであろうのは、デビューから20年経った今もBugatti Veyronが史上最速かつ最も希少なクルマのひとつであり、特別な顧客が彼のビジョンと遺産を、ワンオフのVeyron FKP Homageという形で引き継いでいる点だ。次の“機会”が訪れるまでに、また20年かかるとしても。

画像: 良いものは時間をかけて生まれる

結論

一人の男、一台のクルマ、一つのビジョン―「Bugatti Veyron」は、現代自動車史における最も重要なクルマのひとつであり続ける。この傑作とその創造者、フェルディナント・ピエヒに敬意を表することは勇気を要するが、それは見事に成し遂げられた。アイデアと実行力、10点満点である。

(Text by Jan Götze / Photos by Bugatti Automobiles)

This article is a sponsored article by
''.