前号ではPHEVでもHEVでもない、フルEVに全振りした新型ポルシェ「Macan」の背景について紹介した。今回はその出来栄えについてお話しよう。2代目となる新型Macanの試乗記である。

フェルディナント・ヤマグチでございます。最新のポルシェ一気乗り企画の第6弾は「ポルシェ 911 Macan 4」の続編です。
前回同様、試乗コースは自宅から東京クラシック倶楽部(千葉県千葉市若葉区)への往復を走った。
一般道あり、高速あり、ワインディングありの、テストドライブをするには最適の道程だ。結論から言おう。2代目Macanは「EVとしての仕上がり」以前に、「Macanとして、ちゃんと速く、ちゃんと気持ち良く」走るように仕上げられている。
自宅を出て世田谷通りを走り環八を右折。首都高3号線へ向かう。中低速のゆるいカーブでも、"EVならでは"の低重心効果が分かる。床下に置かれた100kWhのリチウムイオンバッテリーの重量は約570kg。かような重量物をホイールベース内の床下に収めているのだ。効かないわけがない。
とはいえ「570kg」である。重さは当然ある。だが車体の沈み方が絶妙に整っていて、ピッチが長く残らない。「ただの重いEV」とは大きく違うのだ(あるんですよ。ただ重くて鈍臭いEVが……)。アクセルの踏み増しに対する速度の乗り方は、EVらしく即応だ。だが、いわゆる「ドッカン系」ではなく、踏んだ分だけ濃度がジワッと上がるように躾けられている。

試乗したMacan 4のボディサイズは全長×全幅×全高=4784×1938×1622mm、ホイールベースは2893mm。
3号線から山手トンネル。スパイラルのカーブをグルグルと下降する。
トンネルは音が響く。つまり遮音の良し悪しがモロに露呈する。EVだから当たり前だが、Macanは絶対的に静かだ。しかし「無音」ではない。タイヤノイズをゼロにしてしまうのではなく、角を取って、粒度を揃えて運転席に音を届ける印象だ。

Macan 4のステアリングフィールは「クイックなのに過敏ではない」そして「しっかりとした“芯”が感じられる点」が好印象。
そしてステアリング。最近のEVは舵の入りを軽くしがちだが、Macanにはしっかりとした“芯”が感じられる。センター付近がスカスカせず、軽く当てるだけで、クッと反応する。クイックなのに過敏ではない。この辺りは「さすがポルシェ」と言うしかない。
山手トンネルのように長くゆるいカーブが次々と現れるような区間でも不快に感じないのは、前輪の接地の作り方が巧みな証拠である。
山手トンネルを抜けて東関東自動車道へ。道路の継ぎ目と微妙な路面のうねり。そして横風。サスの出来栄えが問われる道だ。

Macan 4のメーターパネル。3つの表示はさまざまな画面に切り替えが可能で、バッテリーの残量や航続距離も視認しやすい。
良い。継ぎ目に当たった瞬間、最初の一撃を短くいなし、次の収束が早い。
柔らかくして誤魔化すのではない。硬くして押さえ込むのでもない。入力は受けるが、揺れを長引かせない。このまとめ方が実に良い。SUVでもEVでもポルシェはポルシェなのである。当日は風が強かった(だから余計にスコアが酷かった)。横風が入っても、修正舵は最小で済む。クルマが勝手に姿勢を作り直してくれるから、ドライバーがハンドルで帳尻を合わせなくていいのだ。
京葉道路に入る。朝から混んでいる。
フル電動のMacanは、ワンペダルの強い減速で支配するよりも、減速はブレーキで作り、回生と摩擦を自然に混ぜ合わせる方向に寄せている。スポーツドライビングの作法を、EVの文法に翻訳したような印象だ。渋滞でEVを意識せず「普通の感覚で運転できる」のは大きい。
最後に使い勝手を少々。

Macan 4にゴルフバッグを積んでみた。他の欧州車と同様に横積みは厳しい。
ゴルフバッグの横積みは厳しい。1セットでも後席を倒す必要がある。
車体はデカいが他の欧州車同様、クラブの横済みは叶わない。
とはいえ、荷室自体は540リッターもの容量があり、後席の背もたれを倒せば1348リッターにまで拡大できる。クラブはような長尺物は、形状の問題が支配的、というわけだ。

ボンネットの下に用意された荷室の容量は80リッター。
フル電動のMacanは、ただ速いとか、静かだとか、そうした「点取り虫的な」クルマではない。
速さはあるが、そこをジマンしない。静かでも無味無臭にしない。そして優れた乗り心地。でもフワフワはさせない。
首都高3号の合流、山手トンネルの微舵、湾岸の継ぎ目、京葉道路の渋滞。

フル電動のMacan 4、「ドライバーの負担を減らしながら、運転の楽しさは減らさない」ことが大きな魅力。良いクルマです!
このすべてのシーンに共通しているのは、「ドライバーの負担を減らしながら、運転の楽しさは減らさない」ということだ。フル電動のMacan。良いクルマです。
Porsche Macan 4 主要諸元

・全長×全幅×全高:4,784×1,938×1,622mm
・ホイールベース:2,893mm
・車両重量:2,330kg(DIN)
・フロント/リヤモーター:永久磁石同期式電動モーター
・システム最高出力:387PS(オーバーブースト出力/408PS)
・システム最大トルク:680Nm
・トランスミッション:8速PDK
・駆動方式:4WD
・0-100km/h加速:5.2秒
・最高速:220km/h
・タイヤサイズ:前255/40R22、後295/35R22
(Text by Ferdinand Yamaguchi & Photo by Ferdinand Yamaguchi / Toru Matsumura)



