ポルシェ911 Carrera T(992.1型)を購入して、まもなく半年が経とうとしております。

フェルディナント・ヤマグチでございます。次期フェル号ポルシェであるCarerra T、納車から半年で走行距離はいまだ600キロ台であります。
走行距離はいまだ600キロ台でありまして、平均すると月に100キロのペース。
マラソン初心者だってもう少し走り込みますよね。

せっかく納車されたのに、なかなか乗る機会がないのも事実。何とか時間を捻出して、快適なポルシェライフを堪能したいところです。
このところさまざまなクルマの試乗が立て混んでいたり、海外に長く出ていたりと、いろいろ言い訳はあるのですが、それにしても少なすぎる。自ら積極的に乗る時間を作らないといけません。
しかもこれからはドライブに最適の季節でもあります。何とか時間を捻出して、快適なポルシェライフを堪能しようと存じます。
さて、今回のお題目は「ポルシェを購入するにあたり、いかにして嫁さんを説得するか?」であります。実は後輩のN君に今回のお題目の相談を受けていたのです。

今回のお題目は「ポルシェを購入するにあたり、いかにして嫁さんを説得するか?」であります。はたして後輩のN君は奥様を説得できるのか・・・!?
私よりひとまわり年下のN君。仕事は順調で購入資金は十分にある。駐車スペースも用意できる。いま所有しているメルセデス・ベンツGLCはそのまま嫁さんに乗ってもらうから、家族が日常の足で困ることもない。

このテのクルマを購入する際の4大障壁といえば【1:金銭面、2:実用面、3:価値観、4:浮気の心配】でありますね。
つまり、このテのクルマを購入する際の4大障壁である【1:金銭面、2:実用面、3:価値観、4:浮気の心配】 のうち、先の2点はクリアできている。残るは「3:価値観」の嫁さんとの価値観の相違と、スポーツカーによる「4:浮気の心配」の2点です。これらをどのようにして奥様にご納得いただくか。ここが焦点となります。
何しろN君が子どもの頃から憧れていたポルシェです。50歳になったのを機に、N君としても長年の夢を叶えたい。私だって後輩の夢を叶えてあげたい。何よりポルシェ仲間が増えるのは大歓迎です。

後輩のN君の長年の夢であるポルシェ購入を実現させるべく作戦会議。奥様との価値観の相違は埋められるのでしょうか。
かくして、地元の飲み屋で作戦会議と相成りました。
後輩N君(以下N):何を言っても「ダメ」の一言です。そんな贅沢は許されない、近所から変な目で見られる、ママ友にだって何を言われるか分からない、と言うのです。
フェル(以下F):近所やママ友からの目を気にするというはいかにも女性らしいね。やっぱりポルシェは贅沢に思われるのかね?
N:近所に乗っている人だって何人かいるわけだし、別にいいんじゃないかと思うのですが。
F:カネの方はどうなの?
N:それは問題ありません。何ならキャッシュで買ったって良い。まあウチの会社で持つから、リースになるとは思いますが。
F:カネの心配はない。いまのクルマは売らずに残すのだから、日常のアシで困ることもない。問題は近所の目か。とはいえ、いちいち近所を説得してまわるわけにもいかないから、ポルシェは決して贅沢品じゃないことを、まずは奥さんに納得してもらわなければいけないね。
『本当に好きだから買う、決して見栄ではない』。これを強調すれば良いんじゃないのかな。たまにはお子さんを預けて嫁さんと2人でドライブに出かけたりしたら、文句も出ないだろう。

『本当に好きだからポルシェを買う、決して見栄ではない』ことが奥様に伝わるのか、はたして・・・?
N:フェル先輩。ウチに来て嫁を説得してくれませんか?
F:オレが!? なんでオレが?
N:お願いします。実際に乗っている人から話してもらうのが、一番説得力があると思うんです。
F:でもなぁ・・・・・・何かヘンじゃない?
N:そこを何とかお願いします。うまく説得してくださったら、焼肉をごちそうしますから。
F:焼肉!
・・・結局、肉に釣られてNくんの嫁さんを説得することになりました。私は何と安い男なのでしょう。
かくして5日後の土曜日、N君の家に赴きました。嫁さんに良く似た、美人の娘さんが迎えてくれました。彼女も今年の4月から大学生。この前産まれたばかりだと思っていたのに、他人の子は大きくなるのが本当に早い。
資金面と実用面の整理はついている。4点目の「浮気の心配」に関しては、敢えてこちらからいうことでもないでしょう。となると今回話す要点はただひとつ。『N君と嫁さんの価値観の相違をどのように埋めていくか』です。

ポルシェを手に入れることで得られるQOL(クオリティ オブ ライフ)があることは確かです。
ポルシェがいかに実用的なクルマであるか、インテリジェンスの高い人間が乗っているか、乗って楽しく見て楽しいポルシェを購入することにより、QOL(クオリティ オブ ライフ)が向上して、家族全員が幸福になれる・・・等々の話を、私は身振り手振りを交えて懸命に話しました。彼女は始終微笑んでウンウンと聞いていました。しかし……。
N嫁:フェルさんの仰ることはよく分かりました。確かにポルシェは良いクルマなのでしょう。決して贅沢品ではないことも理解できました。でもダメです。
F:ダメ?ポルシェの価値が理解できたのに、なぜダメなの?
私がそう言うと、N夫人は鬼の形相でN君に振り向き、「私が知らないとでも思っているの!?」 と冷たい声で言い放ちました。凍り付くN君。
そう、N君は第4の障壁である「浮気の心配」に関する信用がゼロで、現在も会社の若い女性との親密交際を続けていたのです。そしてその事実を、N夫人は正確に把握していたのでした。
こうしてN君の夢は儚くも敗れ去り、私は無駄骨を折ったうえに焼肉も食べられないという、踏んだり蹴ったりのていたらくとなったのでありました・・・。

こうして、まさかのオチで後輩N君のポルシェ購入計画の夢は儚くも敗れ去ったのです・・・。
ほとんどポルシェに関係のない話で申し訳ありません。
(Text Ferdinand Yamaguchi Photo by Ferdinand Yamaguchi & Porsche)