憧れの空冷ポルシェ購入を目指して識者の見解を伺い回っているのですが、どうも良い話が聞こえてこない。噴くだの漏れるだの止まるだの、購入意欲を削ぐような意見ばかりが聞こえてきます。もっと明るく希望が持てるような話はないものでしょうか……。

画像: フェルディナント・ヤマグチでございます。空冷ポルシェに関する見解はオーナー側ばかりでしたので、今回は売り手側、ショップの方の意見を伺いました。

フェルディナント・ヤマグチでございます。空冷ポルシェに関する見解はオーナー側ばかりでしたので、今回は売り手側、ショップの方の意見を伺いました。

今まではオーナー側、つまり“買い手側”の意見ばかりを聞いてきましたが、逆側の意見、つまり“売り手側”であるショップの意見も聞かなければなりますまい。果たして空冷ポルシェを売る側は、どのように考えておられるのでしょう。

画像: 今回お話を伺ったのは「九州にこの人あり」の呼び声も高い、宮崎は清武のF.PAZUの福島茂樹さん。F.PAZUは九州でも珍しいスーパーカーを専門に扱うプロショップなのです。

今回お話を伺ったのは「九州にこの人あり」の呼び声も高い、宮崎は清武のF.PAZUの福島茂樹さん。F.PAZUは九州でも珍しいスーパーカーを専門に扱うプロショップなのです。

今回お話を伺うのは、「九州にこの人あり」の呼び声も高い、宮崎は清武にある「F.PAZU」の福島茂樹さん。「F.PAZU」は、九州でも珍しいスーパーカーを専門に扱うプロショップ。店内にはフェラーリ・ディーノだの、トヨタ2000GTだの、国宝レベルのクルマがすぐにでも走り出せる状態で整列しています。正に眼福。宮崎に行く機会がある方は、見学に行くことを強くお勧めします。拝観料を徴収しても良いほどのクルマが所狭しと並んでいるのです。

●F.PAZU
https://f-pazu.shopinfo.jp/

フェル(以下、F) :先日も知り合いの空冷ポルシェ乗りの人からかなり厳しい話を聞きました。西麻布の交差点のど真ん中で煙を噴いて止まってしまったこととか、東関道の追い越し車線でエンコしてしまったこととか。しかもそのクルマは、東京でそこそこに名のある店で、結構な値段で買ったと言うのです。余りにも壊れるので文句を言ったら、「お客さん。何しろこれは30年前のクルマだから」と開き直られる始末だったと。

画像: F.PAZUには空冷ポルシェはもちろん、2000GTやディーノ、そして最新のマクラーレンなど、拝観料を徴収しても良いほどスペシャルなクルマが所狭しと置かれています。まさに眼福。

F.PAZUには空冷ポルシェはもちろん、2000GTやディーノ、そして最新のマクラーレンなど、拝観料を徴収しても良いほどスペシャルなクルマが所狭しと置かれています。まさに眼福。

福島(以下、福):そのお店の言い方に問題はあるかも知れませんが、空冷ポルシェにマイナートラブルはつきものです。最後の空冷ポルシェである993型の販売期間は1998年まで。いまから26年も前の話です。「最新の空冷」と言ったって四半世紀以上前のクルマです。普通に置いてあるだけでもさまざまな部品が経年劣化していきます。その方のクルマは……? 993の前の964型ですか。すると89年から93年までの販売期間になる。最新の個体でも31年前。丈夫にできているクルマですが、それでも古くなれば悪くなる部分はある。まったくノントラブル、という訳にはいかないと思います。

F:空冷に乗るにはある程度の覚悟が必要、ということですか?

福:覚悟という言葉が適切かどうか分かりませんが、ポルシェ911は、その方が乗っていらっしゃる964から販売台数がドカッと増えたんです。それまでの911は販売台数がそれほど多くなかった。つまりマニアのクルマだった。用がなくても店に顔を出すような人が多かった。お客さんがポルシェに乗って店に来れば店の人間がサッとクルマを見ますから、トラブルの種となりそうな部分を事前に見つけることができる。交換する部分は壊れる前に交換する。それに基本的には930までは自分でクルマを見る人が乗っていたんです。964は台数が増えた分、マニアでない方がたくさん流入した。その中には乗用車感覚の人も多かった。だからその分トラブルも増えてしまった、という訳です。

画像: 今も昔も、スペシャルなクルマにはこまめなメンテナンスが欠かせないようです。それを怠ると……。

今も昔も、スペシャルなクルマにはこまめなメンテナンスが欠かせないようです。それを怠ると……。

F:なるほど。マニアの人に取っては“当たり前”のことが、乗用車感覚の人には当たり前ではない。マメにメンテもしない。結果「壊れやすいクルマ」という印象になってしまった、と。

福:そうなんです。そうした感覚の違いを、果たして「覚悟が必要か?」と言われてしまうと、何ともお答えのしようがないんです。今までの当たり前が、新しい人には当たり前じゃない訳ですから。例を挙げましょう。964までのカレラにはタペット調整、つまりバルブクリアランスの調整が必要です。クリアランス調整自体はそれほど技の要る作業ではありませんが、何しろ手間がかかる。エンジンカバーを外すし、触媒も外さなければいけません。バルブは1気筒に2つ有りますから、6気筒で12ヶ所。これをチクチクと調整していく。2万キロに一回はやっておきたい。でも殆どの人はこれをやっていない。やらなくても取り敢えずは走れてしまいますからね。

F:うーむ……。

このお話は次号に続きます。

(Text/photo by Ferdinand Yamaguchi)

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