フェルディナント・ヤマグチでございます。唐突ではございますが、ワタクシ、決めました。次期フェル号ポルシェの最終候補車を。
これ買います。ポルシェ911カレラT。
空冷のポルシェを買うと宣言し、購入までの足取りを記していこうとして始めたこの企画でありますが、「古いポルシェを知るには新しいものに乗らねければ……」と妙な理屈をこねて、温故知新ならぬ温新知故とばかりに片端から新しいポルシェの試乗を重ねております。
まず最初に試乗したのが素のカレラ。最新のポルシェこそ最良のポルシェを体現する、とても良いクルマでした。385馬力は必要にして十分。手の中に収まるような感覚の、肩ひじ張らずに乗れる「いわゆるポルシェ」です。
続いてカレラ4GTS。こちらは素のカレラプラス95馬力のハイパワーモデル。素人が気持ち良く走るには、恐らくこのクルマがギリギリの線でしょう。もちろん高度な電子制御によって安全は守られていますが、調子に乗って踏み過ぎると、ヒヤッとするシーンが幾度かありました。
そして今回試乗したカレラT。
後席を取り払い、遮音材を削減し、さらには軽量ガラスを採用するなどして、素のカレラから30キロも軽量化された純粋主義のクルマ。
しかもトランスミッションはマニュアルです。いや楽しい楽しい。僅か30キロの軽量化で、クルマの動きがこれほど変わるとは思いませんでした。クルマはやっぱり軽いほうが良い。“ドライビングプレジャー”とはこのクルマのためにある言葉でしょう。
コーナのたびに短いシフトレバーをコキコキと作動させなければならない“面倒さ”がまた楽しい。昔はMT車のことを「掻き回し」なんて言いましたが、ワインディングに入ると、当にこの「掻き回し」状態になる。
無論同じスペック同士で競争をすれば、常に最良のギアを賢いコンピューターが選んでくれるPDKの方が速いのですが、別にレースをする訳じゃありませんからね。「操る楽しさ」の方が重要です。いや本当に楽しかった。このまま借りパクしたいほどです。
Facebookに「カレラTはええなぁ」と写真を入れて呟いたら、自動車評論家の皆様方から続々とコメントが入りました。「後席は敢えて付けたほうが便利」「フロントリフターは不要」「リアアクスルステアリングも不要」「もう予約できないのでは?」等々。プロのみなさんも、やっぱりTが好きなんですね。
え?予約できない?慌てて販売店に走ったのですが、予約受け付けはとおに終了しております、と冷酷な死刑宣告を受け、儚い夢はわずか1日で消滅したのでありました。マジ泣けたっス。
こうなりゃ来年出ると噂されるマイナーチェンジ版に期待するしかありません。
まずは来年カレラTを買って日常の足とし、空冷は出物と巡り合えたらサクッと購入する。
そんなスタンスで行こうかと思います。
いやしかし本当に良いクルマだったなぁ。
現状のラインアップでベストの1台と言えるのではありますまいか。
(Text & Photo by Ferdinand Yamaguchi)