フェルディナント・ヤマグチでございます。
空冷のポルシェがイイ!と騒ぎ始めてから早3ヶ月。
周囲を巻き込んで大騒ぎしている割には、未だ実車を見に行ったことは1度もありませんで、識者にお話を伺ったり、Webを検索したりして、ひたすらに妄想を膨らませている日々が続いております。
ようやくコロナの収束が見えてきて、サプライチェーンも何とか復活し、徐々にですが新車の供給にも目処が立って参りました。
「新車が買えないなら中古で」と、コロナ期間中に爆上がりしてきた中古車価格も昨今は安定が見えてきて、「何でも上がる」という中古車バブルは崩壊し、タマ数の多い一部の欧州車などは「暴落」と呼んでも良いくらいに派手な値下がりっぷりを演じております。
去年の夏頃に当該車種を買っちゃった方は、さぞかしクラクラしておられることでしょう。心よりお悔やみ申し上げます。自分のクルマが値下がりするのってヘコみますものね。
この勢いで空冷ポルシェも下がるのではないか……と甘い期待を込めて国内外のサイトを調べて回っているのですが、結論から申し上げますとまったくダメ。1円も下がっていません。下がるどころか逆にしっかりと上昇しておりまして、あたかも新興国の人口増加の如く、見事に右肩上がりの成長曲線を描いているのであります。
国内で取引された最後の空冷、モデル993の取引価格推移を眺めますと、2月に1300万ちょっとだった平均価格が4月半ばには1500万半ばになっている。僅か2ヶ月半で200万以上も値上がりしているのです。取引件数が少ないですから、どこかの誰かがエイヤと高値掴みをすると、平均価格なるものはいとも簡単に上昇してしまう。少ない取引を「特殊な事例」と見做すこともできますが、その価格は明確に“取引実績”として評価され、結果として他の個体の価格も押し上げることになる。
私が「空冷空冷」と騒ぎ始めた頃に深く考えずにサッサと買っていれば、今より200万以上も安く買えたのです。他人様のクルマの価格下落を悼んでいる場合ではありません。ちくしょう買っておけば良かった。
まったく当たり前のことですが、現行車種は新たにどんどん生産されるのですから、供給が復活すれば価格は下る。一方で何十年も前に生産が終了し、数が増えようのない古いクルマ、しかも多くの人が欲しがる空冷ポルシェのようなクルマには受給のアンバランスが発生し、価格はどんどん上がって行く一方です。
需要と供給。一応経済学部卒ですから、大昔に習ったはずなんですけどね。こんなところで経済の大原則を思い知るとは……もっと真剣に授業を聞いておけば良かったです。今は亡き森教授。授業をサボって卒論も先輩の完コピですみませんでした。
空冷ポルシェの高騰ぶりは無論国内だけではありませんで、海外市場も盛大に賑わっております。RMサザビーズのオートオークション落札事例を見てみましょう。
日本で自動車オークションというと、中古車屋さんや海外のバイヤーさんがバチバチやって些かアレな感じがしますが、RMサザビーズは格式が高く、かつ門戸も広い所謂“オークション”なのであります。
2月にパリで開催されたオークションでは、73年のCarerra RS 2.7 touringが477500ユーロ!1ユーロを150円で円換算すると楽勝で7000万を超えてきます。いやもうメチャクチャでしょう。
同じく2月のアリゾナでは97年のTurbo Sが549500ドル。やはり軽く7000万を超えてきます。どうなっているのでしょう。
やはり大人しく水冷にしたほうが良いのでしょうか。でも新車価格もバリバリ上がっているしなぁ……。
そういえば新しいポルシェに最近乗っていません。少し新し目の方にも目を向けてみましょうか。
(Text by Ferdinand Yamaguchi)