Audiが長年販売してきた「Audi R8」の生産終了を発表した際、後継モデルの姿がまったく見えなかったことから、フォーリングスのファンは大いに落胆した。ところがいま、「Lamborghini Temerario」の技術とプラットフォームを用いた新型モデルが、499台限定で登場する。カリフォルニアの海岸沿いで初試乗を行った!
※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

いまやインゴルシュタットのラインナップを眺めても、自動車への情熱を満たしてくれるモデルはほとんど見当たらない。クーペ、カブリオレ、「Audi TT」、そしてAudi R8――Audiはスポーツカーを次々とラインナップから外してきた。高性能なAudi RSモデルがあれど、パワフルなステーションワゴンやスポーティなクロスオーバー以上のものを求める顧客には響かない。
そこでAudiは、Lamborghini Temerarioのプラットフォームとパワートレインを用い、わずか1年半あまりでAudi R8の後継モデルを開発した。
この2シーターは、限定生産というだけでなく、その存在自体を特別なものとするため、モノリシック(一体構造)のカーボンボディを与えられ、「Audi Nuvolari」という特別な名前を授けられた。
Audi Nuvolariという名称は、20年以上前にも2+2シーターのコンセプトカーに使用されている。このコンセプトカーは、後にAudi A5 Coupeへと発展した。
その名の由来は、タツィオ・ヌヴォラーリ(Tazio Nuvolari)がル・マン24時間レースで優勝した1933年にまでさかのぼる。1892年にマントヴァで生まれたタツィオ・ヌヴォラーリは、第二次世界大戦前を代表する最も成功したレーシングドライバーのひとりだった。かつてAuto Unionのワークスドライバーも務めた小柄なイタリア人は、1953年に亡くなるまで、その豪快なドライビングスタイルと、レーシングカーに乗る際に必ず身に着けていた黄色いセーターで知られていた。

Audi Nuvolariが、誰もが振り返るほど強烈な存在感を放っていることに疑いの余地はない。フロントのエアインテークは、さらなるダウンフォースを生み出し、高速走行時の揚力を抑えるとともに、パワートレインの冷却性能を向上させる。
アクティブエアロダイナミクスシステムの重要な要素が、格納式リヤウイングである。このウイングは「クローズ」「ローロード」「ハイロード」という3つのポジションによって、ダウンフォースと空気抵抗を制御する。
「フロントスプリッターのリップからリヤディフューザーに至るまで、エクステリアのすべての要素には明確な空力上の役割があります。そして、内外装を問わず、カーボンファイバーやアルミニウムなど、見えているものはすべて本物の素材です」
そう説明するのは、マリブにあるAudiアドバンスドデザインセンターの責任者、ガエル・ブジン(Gael Buzyn)である。
限定生産が正式に決定すると、Audiは開発責任者を交代させた。ジェフリー・ブコー(Geoffrey Bouquot)が去り、その後任としてルーヴェン・モール(Rouven Mohr)が就任した。ザールブリュッケン出身の47歳であるモールは、それまでLamborghiniのCTOとして開発を統括しており、プラットフォームを提供するLamborghini Temerarioを熟知していた。これにより、プロジェクトは大幅に加速した。
「Audi Nuvolariは、Audi初のハイパフォーマンスハイブリッドスーパーカーです。そのエアロダイナミクスと、世界初の『quattroプレディクティブライド』によって、新たな基準を打ち立てます」と、ルーヴェン・モールは語る。
V8エンジン+3モーターが1000PS超を発生
パワーの源となるのは、最高出力588kW(800PS)、最大トルク730Nmを発生する4.0L V8ツインターボガソリンエンジンである。Lamborghini Temerarioと同様、内燃エンジンに加えて、デュアルクラッチトランスミッションに組み込まれたアキシャルフラックス式電気モーターと、フロントアクスルに搭載された2基の110kW(150PS)電気モーターが駆動を担い、4輪を駆動する。
ハイブリッドシステムには、Lamborghiniのほぼ2倍となる容量7.3kWhのリチウムイオンバッテリーが組み合わされる。このバッテリーは、通常のquattroであればプロペラシャフトが通る位置に搭載されているが、Audi Nuvolariにはそのプロペラシャフト自体が存在しない。
重視されたのはEV走行距離ではなく、迅速な電力供給とエネルギー回生である。より大容量のバッテリーを搭載すれば重量が増加し、Audi Nuvolariの走行性能に悪影響を及ぼすためだ。
システム最高出力736kW(1001PS)により、0-100km/h加速を2.6秒、0-200km/h加速を6.8秒でこなす。最高速度は350km/hを超える。

全長4.74mのAudi Nuvolariにおける技術的なハイライトは、予測制御式シャシーシステムである。コンピューターがステアリング角、加速度、ヨーレート、利用可能なグリップなどのデータを処理し、その情報をもとにトルク、制動力、空力荷重の配分を決定する。
内燃エンジンと3基のアキシャルフラックスモーターからなるパワートレインは、前後方向と左右方向へ正確にトルクを配分する。さらに、ブレーキがホイールスリップを抑え、アクティブエアロダイナミクスが適切なダウンフォースを確保する。
最大限の制動性能を担うのは、フロントに10ピストン固定式キャリパーと直径420×40mmのディスク、リヤに4ピストンキャリパーと410×32mmのディスクを備えた高性能ブレーキシステムである。
ブレーキディスク内部の通風構造も専用に調整されており、一般的なカーボンセラミックシステムと比べて空気の流れを改善し、放熱性能を高めている。ブレーキによる回生能力は2.8MWにも達する。これはF1レベルの数値である。
サーキットで本領を発揮する
最初の試乗ですぐに実感できたわけではないが、Audi NuvolariのV8エンジンとハイブリッドシステムは、1001PSという途方もないパワーを一気に解き放つ。その加速は、要求の厳しいスポーツカードライバーさえ満足させるはずだ。
公道でも圧倒的だが、サーキットではまさにスペクタクルである。低速域であっても、8気筒エンジンは自信に満ちたサウンドを響かせながら、決して耳障りにはならない。細身でアルカンターラに包まれたステアリングホイールは手によくなじみ、この種のスーパーカーとしては驚くほど扱いやすい。

「ダイナミック」「ダイナミック+」「トラック」といった走行性能重視のモードでは、リヤウイングが完全自動で作動する。一方、ストレートでは最高速度と安定性を最適化するため、システムが「LDポジション」へ切り替わる。
F1でおなじみのドラッグリダクションシステム(DRS)は、Eハイブリッドモードを除き、ステアリングホイール上のボタンで手動操作できる。最高速度351km/hに到達できるのは、DRSを作動させた場合だけである。
高速コーナーでは、正確なハンドリングを実現するためにリヤウイングが自動的に展開される。つまり、アクティブエアロダイナミクスは単に最高速度を高めるだけでなく、ドライビングダイナミクスの向上にも貢献しているのである。
テクニカルデータ:Audi Nuvolari
| 項目 | データ |
|---|---|
| エンジン | V8ツインターボ+3基の電動モーター |
| 排気量 | 3,982cc |
| システム出力 | 736kW(1,001PS=800PSガソリンエンジン、3×150PS電動モーター) |
| 最大トルク | 730Nm/4000~7000rpm |
| バッテリー | 7.3kWh |
| 電動走行距離 | 10km |
| 充電速度 | 7.4kW |
| 駆動方式 | 4WD |
| 最高速度 | 351km/h |
| 0~100km/h加速 | 2.6秒 |
| 公称燃費 | 未公表 |
| トランスミッション | 8速デュアルクラッチトランスミッション |
| 車両重量 | 1,740kg |
| 価格 | 590,000ユーロ(約1億1,200万円) | |
(Text by Stefan Grundhoff / Photos by AUDI AG)


