1998年のデビュー以来、Audiを象徴するモデルの1台として、3世代にわたって注目を集めてきた「Audi TT」。2023年、惜しまれてその歴史に幕を下ろしたAudiの人気モデルを、生産終了から1年が経過したいま、あらためてその足跡をふりかえってみよう。

画像1: Audiのデザインアイコン「Audi TT」をふりかえる

エンスージアストのためのクルマとして、Audiが1995年のIAA(フランクフルトショー)に出展したのがコンパクトスポーツのデザインスタディ「Audi TT」だった。バウハウスにインスピレーションを受けたシンプルで機能的なフォルムや、円をモチーフとした要素により彩られた内外装が注目を浴び、同年のうちに量産化が決定している。

ちなみに、TTという名前は、マン島で行われてきたオートバイレースのTT(Tourist Trophy)に由来している。Audiの前身のひとつであるNSUがこのレースで活躍し、のちにNSUがこの名を冠した4輪のコンパクトスポーツモデル「NSU TT/TTS」を1960年代半ばに発売。そして、30年以上の時を経て、TTの名前が復活することになった。

1998年9月、まずは2+2のAudi TT Coupeが登場した。デザインスタディにはなかったリヤサイドウインドーが追加され、それにあわせて全長が拡大されたものの、それ以外はデザインスタディのイメージを受け継いだことが、人々を驚かせた。美しい面と少ないラインで形作られたエクステリアは、“動く彫刻”と評された。Audi TT Coupeを特徴づけるアーチ状のルーフラインやくっきりと張り出したホイールハウス、アルミニウムの燃料キャップ、丸いエアベントなどは、その後の世代にも受け継がれている。

翌1999年には、ソフトトップを備えたAudi TT Roadsterが追加となった。

デビュー当初は1.8L直列4気筒5バルブエンジンを搭載したFWDとquattroを設定。トランスミッションはマニュアルのみで、後にFWDには6速オートマチック仕様が追加されている。2003年には3.2L VR6を搭載したAudi TT Coupe 3.2 quattroが登場し、デュアルクラッチギアボックスの6速DSG(いまのSトロニック)が初めて搭載されている。2005年にはパワーアップされたエンジンを採用する「Audi TT Coupe quattro sport」が限定で販売された。

2代目となるAudi TTは、2006年にCoupeが、2007年にはRoadsterがそれぞれ登場。第2世代のAudi A3のプラットフォームをベースとしながら、ASF(アウディ スペース フレーム)技術によってアルミとスチールとを効果的に組み合わせることで、大幅な軽量化に成功している。電動格納式リアスポイラーを装着したのも、第2世代の特徴だ。

サスペンションは、前:マクファーソンストラット、後:4リンク式を採用し、オプションで、瞬時にダンパーの減衰力が変更可能なアウディ マグネティックライドを用意している。

高性能モデルの「Audi TTS」や「Audi TT RS」が登場したのものこの2代目からだ。さらに、ディーゼルエンジンを搭載した世界初の量産スポーツカー「Audi TT 2.0 TDI quattro」の発売(日本未導入)も話題となった。

2014年にはフルモデルチェンジにより3代目Audi TTが誕生。初代Audi TTのデザインを再解釈する一方、よりシャープなデザインのヘッドライトやワイドなシングルフレームグリルなどによって、精悍さを高めている。

インテリアではダッシュボードのモニターを省き、すべての情報をメーターパネルに表示するアウディ バーチャルコックピットを採用することで、シンプルなインテリアデザインを実現している。

この世代では、フォルクスワーゲングループの横置きエンジン用プラットフォーム「MQB」を採用し、これにアルミニウムとスチールを用いるハイブリッド構造のASFを組み合わせることで軽量・高剛性ボディを実現している。

Audi TTは初代から3代目までのすべてが、ハンガリーのジュール工場で生産され、累計生産台数は66万2762台に及んだ。

Audi TTはAudiの歴史だけでなく、自動車のデザイン史にその名を刻んできただけに、いまなお引退が惜しまれる。

画像13: Audiのデザインアイコン「Audi TT」をふりかえる

(Text by Satoshi Ubukata)

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