2020年にquattro誕生40周年を記念して作られた「RS 6 Avant GTO concept」をベースにパンチの効いたスペシャルモデル「Audi RS 6 Avant GT」が登場。世界限定660台で、その価格は約215,000ユーロ(約3,440万円)と言われている。
単なるステッカーや制限を超えたもの:アウディは「RS 6 Avant GT」で、スモールシリーズを本格的に強化する!インゴルシュタットに本拠を置くアウディは3年前、「quattro GmbH」創立40周年を記念して「RS 6 Avant GTO concept」で「RS 6」のハードコアバージョンの登場を予告し、それが今実現した。「RS 6 Avant GT」の登場だ。
※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。
ワイルドなGTOスタディと比べると、「RS 6 Avant GT」はややトーンダウンしているものの、「RS 6 Performance」と比べると、かなり過激で、さらにたくましく見える。これは、ベースとなる「RS 6 GTO concept」と同様に、伝説的な「アウディ 90 quattro IMSA GTO」からインスピレーションを得たカラーリングによるものだけでなく、何よりも特別に設計された、いくつかの新しいコンポーネントによるものだ。
Audi RS 6 Avant GTでは悪魔は細部に宿る
一見しただけではわからないかもしれないが、フロント全体が新しくなっている。シングルフレームラジエターグリルは完全にブラックアウトされ、2センチほど平らになって「GT」をよりワイドに見せている。エプロン外側の縦型ブレードと新しいエアインテークグリルはほとんど見えない。新しいフロントスプリッターがシャープな外観を強調している。
ボンネットはカーボン製だ。「RS 6 Avant GT」の乾燥重量が2,075kg(それでもRS 6 Performanceより15km軽い)なので、これが大きな違いになるわけではないが、アウディが目に見える2本のカーボンストリップを未塗装のまま残しているため、見栄えはいい。
フェンダーも新しく、カーボンでできている。覗き込めば、エアアウトレットのカーボンファイバー構造まで見える。また、マッドガードも機能的で、ホイールアーチの背圧を軽減するためのエクステンションだ。
RS 6 Avant GT専用6本スポークの22インチ鍛造ホイール
真新しく、特別モデル専用となるのは、6本スポークの22インチ鍛造ホイール(285/30 R 22)である。「GTO」へのオマージュとして、ホイールはホワイトでオーダーすることもできるが、これはエクステリアカラーの「アルコナホワイト」と「Audi Sport」カラーフィルムとの組み合わせに限られる。
グレーアクセントのホイルパッケージ(カラーは「ナルドグレー」または「ミトスブラックメタリック」)は、より控えめだ。この場合、ホイールリムはブラックとなる。より控えめな外観を好む人は、ステッカーなしの「GT」をエクステリアカラー「アルコナホワイト」、「ナルドグレー」、「ミトスブラックメタリック」、「クロノスグレーメタリック」、「マデイラブラウンメタリック」の5色から注文することもできる。
サイドスカートのカーボンファイバー製インサートと、カーボンファイバー製ミラーキャップは標準装備。「RS 6 Avant GT」では初めて、ルーフレールが省略されている。一見地味に聞こえるが、実際に見ると明らかな違いがあり、「GT」のシルエットをよりスポーティでスマートなものにしている。
リヤに向かって、ルーフは「GTO concept」とほぼ同じダブルウィングへとテーパーしている。トランクリッドも、追加エレメントによって視覚的に低くなっている。ディフューザーは曲線が少なくなり、中央にリフレクターを備えている。
楕円形の2本のテールパイプがリヤに残っているのは、少々残念だ。「GTO concept」の華麗な側方排気は、残念ながら不採用となった。
GTO conceptほど過激ではない
インテリアにもいくつかの妥協が必要だった。リヤベンチシートのないファミリーエステートカーに、フルケージと左右独立したカーボンファイバー製バケットシートを装備するのは、おそらくほとんどのアウディの顧客にとって少し過激すぎるだろう。そこで、インゴルシュタットに本拠を置くアウディは、「GT」から実用的な能力を奪うのではなく、インテリアによりスポーティさとエクスクルーシブさを与えることにした。
ダッシュボード、ドアパネル、ステアリングホイール、ルーフライニング、トリムストリップに至るまで、ダイナミカが多用され(アルカンターラは不使用)、赤と銅色のステッチがスタイリッシュなアクセントとなっている。
しかし、真のハイライトはRSバケットシートで、これは「RS 3」などの他のモデルでおなじみのものだが、「RS 6 Avant GT」のために特別に改良されたものだ。赤いキルティングのハニカムパターンに加え、ヘッドレストの下には「RS 6 Avant GT」のレタリングが施されている。
アウディが「C8」世代の「RS 6」に純正バケットシートを設定するのは初めてのことだ。しかも、このシートは実によくできていて、横方向へのサポートが十分で、快適性もそこそこ高い。
インテリアの卓越した品質は、「クリムゾンレッド」のシートベルトとセンターコンソールの連続番号で締めくくられる。「RS 6 Avant GT」の生産台数は660台だ。なぜ666台ではないのだろうか・・・?
Audi RS 6 Avant GTに追加パワーはない
アウディは「RS 6 Avant GT」のPerformanceも本当にアップさせているのだろうか?幻滅だ!誤解しないでほしい: 最高出力630馬力、最大トルク850Nmの4リッターV8ツインターボは素晴らしいエンジンであり、文句を言う理由はないのだが「RS 6 Performance」のキャリーオーバーというのは残念だ。
これほど高級で高価な特別モデルなのだから、アウディはV8からもう少しパワーを引き出してもよかったはずだ。威信と「最強のRS 6」の称号のためなら!
というのも、2,075kgの「アバント」のドライビングPerformanceは、書類上でもすでに印象的だからだ。8速オートマチックトランスミッションのシフトタイムが最適化されたおかげで、「GT」は0から100km/hまで3.3秒(RS 6は3.4秒)、0-200km/hまで11.5秒(RS 6は12.0秒)で駆け抜ける。
最高速度は電子制御により制限された305km/hにしか達しない。特別モデルに追加料金なしで装備されるおなじみのカーボンセラミックブレーキは、適切な減速を保証する。
専用コイルオーバーサスペンション
ファンにとってもうひとつの楽しみはサスペンションだ。「RS 6 Avant GT」には専用のコイルオーバーサスペンションが標準装備され、工場出荷時に10mm低くなっており、手動で調整することができる。3ウェイ調整式ダンパーと、より硬いスタビライザー(フロント30%、リヤ80%)が装着されている。アウディは快適性を犠牲にすることなく、ボディロールの低減を約束している。
要望に応じて、「GT」にはお馴染みのRSスポーツサスペンションやエアサスペンションも用意されるが、私に言わせれば、これは特別モデルの基本的な考え方から外れている。
Audi RS 6 Avant GTの価格
特別モデルにふさわしく、「GT」の生産も複雑だ。ボディの製造と塗装はネッカーズルムで行われ、最終組み立ては「R8」や「e-tron GT」も製造されているベリンガーヘーフェ工場で、7人のスペシャリストによって手作業で行われる。
「RS 6 Avant GT」のために特別に設計された、手の込んだ生産と高品質のパーツも高価格の理由だ。約215,000ユーロ(約3,440万円)と言われているので、「GT」はベーシックな「RS 6Performance」よりも約80,000ユーロ(約1,280万円)高いことになる。
結論:
多くの専用かつ高価なパーツが「GT」を最も過激な「RS 6」にしているが、アウディが特別モデルにもう少し馬力を与えなかったのは残念だ。価格は高額だが、660台のみという限定数ゆえだ。純粋に客観的な視点に立てば、「RS 6 Performance」の方が価格性能比に優れている。
(Text by Jan Götze / Photos by AUDI AG)