画像: 2023年5月4日ミュンヘンでのIAAモビリティ報道関係者公開日にて。アウディのゲルノート・デルナーCEOがQ6 e-tronプロトタイプを紹介する。

2023年5月4日ミュンヘンでのIAAモビリティ報道関係者公開日にて。アウディのゲルノート・デルナーCEOがQ6 e-tronプロトタイプを紹介する。

「メイド・イン・ジャーマニー」を背負って

アウディは、2023年9月5日から10日にドイツ・ミュンへンで開催された「IAAモビリティー」に出展した。

それに先立つ9月4日の報道関係者公開日、アウディを含むフォルクスワーゲン・グループは自動車メーカーのなかでもっとも早い9時10分からプレゼンテーションを開始した。場所は第1会場であるメッセだ。

アウディはグループ中唯一、壇上に実車を展示。その実車とは「Q6 e-tonプロトタイプ」で、それに採用される新EVプラットフォーム「PPE」も同時に公開した。

画像: アウディQ6 e-tronプロトタイプ(左)とEV用PPEプラットフォーム(右)。

アウディQ6 e-tronプロトタイプ(左)とEV用PPEプラットフォーム(右)。

PPEは、Premium Platform Electricの略で、ポルシェとの共同開発による。ミッドサイズからラグジュアリーまで、幅広いモデルに対応できる拡張性をもつ。バッテリーサイズとホイールベースも拡張可能である。これにより、SUVやクロスオーバーだけでなく、スポーツバックやアヴァントのような低いフロアの車種にも応用できる。2024年に発売されるQ6 e-tronの生産型は、PPEを採用する最初のモデルとなる。

プレゼンテーションでは、VWグループ内におけるさらなる将来のeプラットフォーム戦略も紹介された。それによるとPPEとMEB+は、より応用性が高くかつコスト削減可能な「SSP」と呼ばれるプラットフォームに統合される。

画像: PPEプラットフォームは、高い拡張性と広い応用性が自慢である。

PPEプラットフォームは、高い拡張性と広い応用性が自慢である。

画像: 生産型アウディQ6 e-tronは、VWグループ内でPPEを採用する最初のモデルとなる。

生産型アウディQ6 e-tronは、VWグループ内でPPEを採用する最初のモデルとなる。

画像: これまでのアウディeモビリティーと各プラットフォーム採用車種を示した会場ディスプレイ。

これまでのアウディeモビリティーと各プラットフォーム採用車種を示した会場ディスプレイ。

画像: 将来PPEとMEB+は統合され、より応用性が高く、かつコスト削減可能なSSPとなる。2029年が目標とされている。

将来PPEとMEB+は統合され、より応用性が高く、かつコスト削減可能なSSPとなる。2029年が目標とされている。

いっぽうQ6 e-tronプロトタイプの室内についてアウディは、3つのポイントを訴求している。第1は「人間中心」で、ユーザーの要望を出発点として、空間設計や機能を構築していると説明する。第2が「デジタル・ステージ」、そして第3が広々とした空間、軽さ、快適さ、居心地の良さをもたらす。「マテリアル主導のデザイン」である。

もっとも力点をおいて説明されたのは2番目の「デジタル・ステージ」だ。OLED曲面ディスプレイが、デジタルコックピットを形成。運転席側は11.9インチのアウディ・バーチャルコクピット付きMMIパノラマディスプレイ + 14.5インチMMIタッチディスプレイというコンビネーションだ。そこに加わるAR(拡張現実)ヘッドアップディスプレイは、ドライバーから最大200メートル先に虚像が表示される。

助手席側の10.9インチのMMIディスプレイは「アクティブ・プライバシーモード」により、ドライバーの運転に対する集中力を散漫にさせることなくムービーを鑑賞できる。ナビゲーション・モードに切り替えれば、ドライバーをサポートすることも可能だ。

ただし、もうひとつアウディQ6 e-tronの存在意義がある。アウディは同車とバッテリーを、ブランド本拠地であるインゴルシュタットで生産する。アウディAGのゲルノート・デルナーCEOは席上、「eモビリティーとメイド・イン・ジャーマニーに対する私たちの強いコミットメントです」と語った。VWグループとして、引き続き世界最大の自動車市場である中国を重視しつつ、高付加価値モデルをドイツで生産することで、国内産業への貢献を図ろうという姿勢が窺える。

画像: アウディQ6 e-tron プロトタイプのダッシュボード。

アウディQ6 e-tron プロトタイプのダッシュボード。

画像: パッセンジャーは、ドライバーの気が散ることを心配せず、ムービーを楽しめる。(photo:Audi)

パッセンジャーは、ドライバーの気が散ることを心配せず、ムービーを楽しめる。(photo:Audi)

画像: 生産型Q6 e-tronは、2024年中盤の発売が予定されている。

生産型Q6 e-tronは、2024年中盤の発売が予定されている。

君もアウディ・パーソンにならないか

IAAミュンヘンの第2会場である市街も覗く。アウディのパビリオン「ハウス・オブ・ブログレス」は、ヴィッテルスバッハ広場をポルシェと二分するかたちで設営されていた。

こちらのスターは「アウディ・アクティヴスフェア・コンセプト」であった。プレミアムカーの未来を提示する「スフェア」シリーズの第4弾として2023年1月に発表された最新作である。連作中もっともアクティヴなキャラクターを与えられながら、アウディ流エレガンスの融合を試みている。解説の時刻になると多くの一般来場者が車両を取り囲んだ。

画像: アウディ・アクティヴスフェア・コンセプト。

アウディ・アクティヴスフェア・コンセプト。

画像: 「ハウス・オブ・プログレス」のエントランスでは、パープルのアウディRS e-tron GTが迎えてくれた。

「ハウス・オブ・プログレス」のエントランスでは、パープルのアウディRS e-tron GTが迎えてくれた。

その一角に、本物のリンゴを大量にディスプレイしたコーナーを発見した。アウディで働く人材募集コーナーであった。若く活きの良い果実のイメージをリンゴに託したのであろう。実はオデオン広場にブース展開していたVWブランドもリンゴこそなかったが、同様のコーナーを設けていた。スタッフは、「事務職、エンジニア、工場のラインワーカーいずれも歓迎」と語る。参考までにミュンヘンのIfoインスティテュートが2023年7月、国内約9千社を対象にした調査によると、43%以上ものドイツ企業が資格をもった労働者不足だと回答している。

画像: アウディによる人材募集のコーナー。

アウディによる人材募集のコーナー。

ところで今回、各社が展開したIAAミュンヘン市内会場は、無料とは思えない幅広い内容であった。休憩している暇がなかった。そもそも円安・ユーロ高の昨今、カフェに寄ると飲み物と茶果だけで、日本のファミリーレストランにおける定食くらいの値段が吹っ飛ぶ。そこに9月のドイツとは思えぬ30度近い気温が加わった。筆者自身の航続ならぬ歩行可能距離はたちまち減っていった。

画像: 筆者が助けられた「アウディリンゴ」

筆者が助けられた「アウディリンゴ」

まさに人間電欠状態に陥ったそのとき思い出したのは、先ほどアウディのパビリオンでもらってカバンに放り込んでおいたシルバー・フォーリングスがプリントされたリンゴだった。

日頃イタリアで、バックパック+サンダル姿で時と場所をかまわずリンゴをかじって歩くドイツ人を見るたび笑っていた筆者である。だが、このときばかりは交差点のど真ん中でリンゴにかぶりついた。アウディのスローガン「技術による前進」ならぬ「リンゴによる前進」であった。

画像: ミュンヘン中央駅(Hbf)コンコースに掲げられたアウディの広告。

ミュンヘン中央駅(Hbf)コンコースに掲げられたアウディの広告。

画像: 今回アウディは、市内各地でもっとも告知を展開していたブランドのひとつだった。

今回アウディは、市内各地でもっとも告知を展開していたブランドのひとつだった。

(report & photo 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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