フェイスリフト後の「Audi TT RS Coupe」に試乗。その走りは?
コンパクトな2ドアクーペの「Audi TT Coupe」において、最もスポーティなグレードがAudi TT RS Coupeだ。RSの文字からもわかるように、このクルマはAudi Sportが手がけるRSモデルの一員で、Audiのなかでは特別な存在である。
試乗車は、目が覚めるような“キャラミグリーン”のボディに、ブラックのエクステリアパーツを組み合わせることで、さらに精悍なルックスに仕上げられた一台。タイヤも標準の245/35R19から255/30R20にインチアップされ、他にも数々のオプションが装着されている。
搭載されるエンジンは、RSモデルだけに許される2.5L直列5気筒ターボで、最高出力294kW(400ps)/5850〜7000rpm、最大トルク480Nm(48.9kgm)/1700〜5850rpmの実力を誇る。7速Sトロニックが組み合わされ、ハルデックスカップリングを用いるquattroにより、2.5 TFSIのトルクを余すところなく4輪に伝える。
室内で目を惹くのが、2つのサテライトスイッチを備えるステアリングホイール。右下の赤いボタンでエンジンをスタート/ストップ、左下のボタンでドライブセレクトを操作する。さっそく赤のボタンを押すと、ブオンという威勢の良いサウンドとともに2.5 TFSIエンジンが息を始めた。
まずはAUTOモードのままアクセルペダルを軽く踏むと、思いのほかジェントルな2.5 TFSIが、Audi TT RS Coupeを軽やかに発進させる。2.5Lという余裕ある排気量のおかげで、低回転から豊かなトルクを発揮するのだ。乗り心地は明らかに硬めだが、伝わるショックは角が落とされているから、ふだんの足としては十分許容範囲に収まるレベルだ。
頃合いを見計らってアクセルペダルを踏みつければ、太いエキゾーストノートと5気筒独特のエンジンサウンドを放ちながら、一気にスピードを上げる。とくに3000rpmを超えたあたりからレブリミットの6800rpmまでの加速は痛快そのもの。Audi伝統の5気筒ターボは、音と加速で現代のドライバーをも魅了する珠玉のエンジンということができる。
ワインディングロードでは、そのハンドリングは鋭い切れ味とはいかないがそれでも素直な動きを見せ、quattroによる絶大なトラクション性能を生かして、コーナーから素早く立ち上がるのが実に爽快だ。
とにかくエンジンが楽しいAudi TT RS Coupe。不要なものを削ぎ落とし、走る楽しさを追求したその潔さが心地よいスポーツカーである。
(Text & photos by Satoshi Ubukata)