110126-A1-01.jpgついに日本に上陸したアウディA1に、1to8.netのスタッフにしてモータージャーナリストの生方 聡が試乗。果たしてその実力は?

(Photo by Minoru Kobayashi)

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1月11日の発表以来、急速に注目が高まっているアウディのニューモデルが「A1」だ。世間以上に自動車メディアの関心も高く、広報車(メディア向けの試乗車)を借り出すまでに1カ月近くかかった...というのはさておき、1月下旬、ようやくお鉢が回ってきた。

A1の概要についてはぜひ110126-A1-04.jpg"素"のモデルでも、289万円という数字は一見高い感じがするが、室内の質感の高さやMMI(マルチメディアインターフェース)が標準装着されることを考えると、十分納得がいく。このあたりの紹介はまた別の機会に譲るとして、さっそくステアリングを握るとしよう。

運転席に陣取り、ドアを閉めると、ドスッという重厚な音。いかにもボディ剛性が高そうである。シートポジションをあわせて、ステアリングコラムを調節するが、サブコンパクトカーといえども、チルトとテレスコピックの調節ができるので、ドライビングポジションがしっくりくる。案外、こういったことが大事なのだ。

イグニッションキーをひねり、エンジンをスタート。シフトレバーをDレンジにたぐりよせてブレーキペダルから足を離すと、A1はゆっくりと動き始める。Sトロニックの"クリープ"はトルクコンバーター式オートマチックに比べると弱いので、最初のうちは頼りなく思えるかもしれない。

アクセルペダルを軽く踏むと、クルマがすっと加速した。1.4Lの直噴ターボエンジンは、A3スポーツバックの1.4TFSIエンジンと同じもので、A3スポーツバックでも不満なく走るくらいだから、それより200kgあまり軽いA1では余裕があって当然。低回転からトルクを出す特性なので、1500rpm以下でも不満のない加速を見せるし、2000rpmを超えたあたりからは力強さを感じるほどだ。"ホットハッチ"と呼べるほどのパワーではないが、街中から高速まで、流れをリードするだけの瞬発力は備えている。

アクセルペダルを控えめに踏む状況では、Sトロニックは2000rpmに達する前にシフトアップを繰り返し、一般道では1500rpm以下をキープする。これが低燃費に寄与することはいうまでもないが、1400rpm以下ではエンジンからの振動やノイズがキャビンに伝わり、やや耳障りである。ただ、A1の弱点として挙げられるのは、実はこの点くらいなもので、他に不満らしい不満は見あたらないのだ。

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反対に、A1の魅力を挙げればきりがない。まずはしっかりとしたボディ。ドアを閉めたときに予感したが、実際に走り出してもA1は期待を裏切らなかった。ステアリングフィールも上々で、電動油圧式パワステ(電動のポンプで油圧を発生させるタイプ)でかつて見られた、センターのあいまいさが、このA1ではすっかり解消している。

スポーツパッケージには"スポーツサスペンション"が付くが、その味付けも絶妙で、少し硬めでありながら快適な乗り心地と、アウディらしい落ち着いた動き、そして、フラットさを兼ね備えている。コンパクトカーにありがちな不快なピッチング(前後の揺れ)とも無縁である。いいかえれば、A1の走りにはクラスを超えた上質さがあるのだ。

さらにうれしいのが、その軽快なフットワークだ。そもそもコンパクトなクルマだけに、キビキビとした動きは予想できたが、このA1はワインディングロードのコーナリングでアンダーステアが実に軽く、思い描いたラインをトレースできる。実はコーナリング時に、前輪の内輪に軽くブレーキを当てることで、クルマの旋回を助けるという機構が備わっているのだ。もちろん、ESPが効くほどの限界走行時にはエンジンのパワーが抑えられ、失速してしまうのだが、その手前の領域では、この機能が密かに気持ちのいい走りをアシストしてくれるのだ。

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気になったところとしては、オプションの17インチホイールが路面からのショックを拾いがちなことが挙げられる。それでも十分にガマンできるレベルには収まっているし、標準の16インチならさらに快適な乗り心地がもたらされるに違いない。

日本に導入されるアウディとしては初となる"スタートストップシステム"、すなわちアイドリングストップ機構は、停車のたびに律儀にエンジンを停止するし、ブレーキから足を離せばすぐにエンジンを再始動してくれる。これも燃費向上に寄与するのは間違いない。ただ、エンジンの始動からクルマが動き出すまでにわずかのタイムラグがあるのと、エンジン停止中にステアリングのアシストが切れるところに違和感を覚えた。まあ、自動でアイドリングを停止してくれることを思えば、目くじらを立てるほどのことではないが...。

というわけで、見た目はもちろん、その走りでも、アウディの名にふさわしい上質さを手に入れたA1は、まさにプレミアム(サブ)コンパクトと呼ぶにふさわしい仕上がりを見せた。A1なら、大きく高級なクルマから乗り換えても、ガマンの必要はない。

アウディのクオリティ、そして、アウディの走りの魅力が凝縮されたA1。"小さな巨人"という言葉がぴったりの、期待のルーキーである。

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