フルモデルチェンジして3代目となったAudi TT Coupeを試乗。「MQB」モジュールを採用し生まれ変わったAudi TT Coupeはどんな走りを見せてくれるのか?
代を重ねるごとにシャープになるAudi TT。エクステリアデザインにかぎれば、初代から2代目への変わりように比べると、3代目の変化は大人しいものだが、それとは対照的に、その中身は見た目以上に進化していた。
大きく様変わりしたのがインテリアデザインだ。センタークラスターにナビゲーションシステムのモニターやエアコンの操作パネルが見あたらず、いまどきのクルマとしては珍しいくらい、シンプルなコックピットに仕上がっているのだ。
これまでもAudiはMMI(マルチメディアインターフェイス)によりシンプルなデザインのコックピットを実現してきたが、このTTではセンタークラスターのディスプレイを廃止し、地図や必要な情報をメーターパネルに表示する「アウディ バーチャルコックピット」を採用することで、さらに一歩進んだのだ。
Audi TT Coupe 2.0 TFSI quattroの乗り心地は少し硬めだが、十分に快適なレベルが保たれている。ただ、スペシャルオプションの9J×19インチが組み合わされた試乗車は、路面によっては多少ドタバタする印象があった。別の機会にS lineパッケージ装着車を試乗する機会があったが、こちらは目地段差などを通過したときにショックがやや目立ち、バランスはノーマルが一番いい。
ということで、スタイリッシュなエクステリアや先進的なインテリアに加えて、旧型以上に走りが楽しいAudi TT Coupe 2.0 TFSI quattro。しかも、Audiらしく、どんな腕前のドライバーでも安心して運転できるのがうれしいところである。もちろん、腕自慢の期待にもきっと応えてくれるはずだ。
Audi TTが3代目に生まれ変わった。といっても、海外では2014年にクーペ、ロードスターともにデビューしており、日本上陸を首を長くして待っていた人は多いに違いない。
新型Audi TTがどんなクルマなのか、そして、日本仕様がどんな内容かは
人によっては「あまり変わり映えしない」といわれる新型Audi TTだが、フロントマスクはこれまでとは大きく印象が違う。エンブレムのフォーリングスがボンネット上に移され、低く幅広いシングルフレームグリルと、よりシャープなデザインになったヘッドライトのおかげで、とても精悍な表情になったからだ。
人によっては「あまり変わり映えしない」といわれる新型Audi TTだが、フロントマスクはこれまでとは大きく印象が違う。エンブレムのフォーリングスがボンネット上に移され、低く幅広いシングルフレームグリルと、よりシャープなデザインになったヘッドライトのおかげで、とても精悍な表情になったからだ。
リヤもヘッドライトのデザインを繰り返したテールライトや、テールライトを結ぶように光るハイマウントストップランプなどにより、新型であることを控えめに主張している。
ユニークなのが、Audi TTのシンボルである給油口(写真左下)。旧型のデザインを受け継ぐ一方、フラップを開けるとキャップがなく、直接ノズルが差し込める構造になっている。セルフスタンドで何度か給油する機会があったが、これは便利だ。
ユニークなのが、Audi TTのシンボルである給油口(写真左下)。旧型のデザインを受け継ぐ一方、フラップを開けるとキャップがなく、直接ノズルが差し込める構造になっている。セルフスタンドで何度か給油する機会があったが、これは便利だ。
写真右下のリヤスポイラーは、旧型同様、電動格納式である。
大きく様変わりしたのがインテリアデザインだ。センタークラスターにナビゲーションシステムのモニターやエアコンの操作パネルが見あたらず、いまどきのクルマとしては珍しいくらい、シンプルなコックピットに仕上がっているのだ。
これまでもAudiはMMI(マルチメディアインターフェイス)によりシンプルなデザインのコックピットを実現してきたが、このTTではセンタークラスターのディスプレイを廃止し、地図や必要な情報をメーターパネルに表示する「アウディ バーチャルコックピット」を採用することで、さらに一歩進んだのだ。
上の写真は地図などが大きく表示される"プログレッシブビュー"。ステアリングホイールの「VIEW」ボタンを操作することで速度計と回転計が大きい"クラシックビュー"(写真左下)に切り替えることも可能だ。
車両の設定やオーディオの情報などもすべてメーターパネル内で確認できる。操作はステアリングホイールのスイッチかMMIコントローラーを使うが、大抵のことはステアリングホイールのスイッチで操作できるのが便利。一方、他のMMIとはメニューの構造が違っているので、ふだんAudi A3 SportbackのMMIを使う私でも慣れるまでに時間がかかった。
そしてもうひとつ、Audi TTのコックピットを特徴づけるのが丸形のエアベント。その中央にはエアコンのコントロール部が組み込まれていて、シンプルなコックピットづくりに一役貢献しているのだ。操作は中央のスイッチを押したり、ダイヤルを回したりするのだが、ダイヤルの触感が安っぽいのが唯一惜しいところだ。
前置きはこのくらいにして、肝心の試乗に移ろう。スポーツシートに身を委ねると、セダンやハッチバックに比べて明らかにアイポイントが低く、それだけで特別なクルマに乗っているという感覚に浸ることができる。さっそくクルマを発進させると、その動き出しの軽さに驚いた。
車両の設定やオーディオの情報などもすべてメーターパネル内で確認できる。操作はステアリングホイールのスイッチかMMIコントローラーを使うが、大抵のことはステアリングホイールのスイッチで操作できるのが便利。一方、他のMMIとはメニューの構造が違っているので、ふだんAudi A3 SportbackのMMIを使う私でも慣れるまでに時間がかかった。
そしてもうひとつ、Audi TTのコックピットを特徴づけるのが丸形のエアベント。その中央にはエアコンのコントロール部が組み込まれていて、シンプルなコックピットづくりに一役貢献しているのだ。操作は中央のスイッチを押したり、ダイヤルを回したりするのだが、ダイヤルの触感が安っぽいのが唯一惜しいところだ。
前置きはこのくらいにして、肝心の試乗に移ろう。スポーツシートに身を委ねると、セダンやハッチバックに比べて明らかにアイポイントが低く、それだけで特別なクルマに乗っているという感覚に浸ることができる。さっそくクルマを発進させると、その動き出しの軽さに驚いた。
旧型はアルミとスチールを組み合わせたハイブリッド構造のASF(アウディ スペースフレーム)を採用していたが、新型ではそれを一歩進め、アルミとスチールを組み合わせたモノコック構造としている。2代目のAudi TT Coupe 2.0 TFSI quattroに対し30kgの軽量化を実現しており、低回転から力強く、レスポンスに優れる2.0 TFSIエンジンとあいまって、この軽快な動きが生まれるのだろう。
しかもこの2.0 TFSIエンジン、どこから踏んでも余裕あるトルクを発揮し、街中のちょっとした加速から、高速の合流、さらに、ワインディングロードの登り勾配などあらゆるシーンで、やや勇ましいサウンドを伴いながら力強い加速を見せてくれるのだ。さらに、アクセルペダルを踏み込めば、レブリミットの6750rpmまで一気に吹け上がり、ブリっという音とともにSトロニックがシフトアップするのがたまらない。
アウディ ドライブセレクトをダイナミックに切り替えると、シフトプログラムはSモードに変わり、さらに鋭いレスポンスが楽しめる。最大370Nmのトルクを誇る2.0 TFSIだが、quattroのおかげでドライ路面はいうまでもなく、多少濡れた路面でもエンジンのトルクを確実に路面に伝えてくれるのが頼もしいところだ。
ハンドリングも実に軽快。そのうえ、quattroが前後トルク配分を絶妙にコントロールするおかげで、アンダーステアでもオーバーステアでもない、オンザレールのハンドリングが味わえる。切り込むにしたがいステアリング比が高くなるプログレッシブステアリングを採用するおかげで、さらに軽快さが際立つ印象だ。
Audi TT Coupe 2.0 TFSI quattroの乗り心地は少し硬めだが、十分に快適なレベルが保たれている。ただ、スペシャルオプションの9J×19インチが組み合わされた試乗車は、路面によっては多少ドタバタする印象があった。別の機会にS lineパッケージ装着車を試乗する機会があったが、こちらは目地段差などを通過したときにショックがやや目立ち、バランスはノーマルが一番いい。
ちなみに前述のS lineパッケージ装着車での燃費は、エフィシェンシー(効率)モードで高速巡航したときが15km/L台をマーク。一般道3割(都内の渋滞やワインディングロードを含む)、高速7割を走行した平均が12km/L弱だった。これだけの性能を考えるとまずまずの数字である。
ということで、スタイリッシュなエクステリアや先進的なインテリアに加えて、旧型以上に走りが楽しいAudi TT Coupe 2.0 TFSI quattro。しかも、Audiらしく、どんな腕前のドライバーでも安心して運転できるのがうれしいところである。もちろん、腕自慢の期待にもきっと応えてくれるはずだ。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Masayuki Arakawa)