2012年4月、標準モデルとともにフェイスリフトした「アウディS4」を試乗。S4はスポーツセダンの神髄を究めたか?
新デザインのヘッドライトが、これまで以上に精悍なイメージを前面に押し出す新型アウディS4。Sモデルの伝統に則り、エクステリアは派手すぎないが、それでも、アルミ調のミラーカバーやダブルバーを用いたシングルフレームグリルなど、標準モデルとの違いは明白だ。
A4シリーズの最上級モデルと位置づけられるアウディS4だけに、インテリアも凝っている。黒を基調とした室内は、ヘッドライニングにも黒を取り入れ、デコラティブパネルにはリアルカーボンをおごる。さらに、ヘッドレスト一体型の専用レザースポーツシートなど、スポーツセダンにふさわしい演出がそこかしこに散りばめられている。
それでも、エクステリア同様、インテリアも落ち着いた雰囲気にまとめられているから、さりげなくスポーツを楽しみたいという人には打ってつけである。
最新のS4には、引き続きスーパーチャージャー付き3L V6直噴エンジンの3.0 TFSIが搭載される。最高出力333ps/5500〜7000rpm、最大トルク44.9kgm/2900〜5300rpmのスペックや、組み合わされるギアボックスが7速Sトロニックというのも変わらない。
一方、フェイスリフトにもかかわらず、パワーステアリングを油圧式から電動式に変更したり、アイドリングストトップとブレーキエネルギー回生機構を標準装着するなど、燃費向上に余念がないのはアウディらしいところ。アウディ ドライブセレクトに「効率モード」が追加されたのも、実燃費向上を狙ってのことである。
と、効率化のことばかり書いていると、S4が牙を失ってしまったように思えるだろうが、実際は牙を隠しているに過ぎない。
3.0 TFSIは相変わらず低回転から力強く、それでいて実にスムーズ。軽くアクセルペダルを踏んでいるだけでスッとクルマが前に出て行く。これだけトルクに余裕があると、ドライビングに余裕が生まれ、あえてアクセルペダルは深く踏み込まず、ジェントルな運転を心がけたくなるから不思議だ。
100km/h時の回転数はわずか1600rpm。巡航中のキャビンは静かで、さらに乗り心地も快適。プレミアムサルーンを運転しているような気分になる。
しかし、街を抜け出し、空いたワインディングロードにたどり着いたところでアクセルペダルを深く踏み込むと、このクルマの本性が姿を現す。低中回転域でも強烈な加速を示す3.0 TFSIエンジンは、4000rpmを超えるとますます勢いづき、ビューンというサウンドを高めながら一気にトップエンドを目指していく。「胸のすく加速」とは、まさにこのことだ。
パワーみなぎるエンジンに加えて、S4のハンドリングもワインディングロードの走りを熱くする。通常、前40:後60にトルク配分するクワトロがFRライクな軽快な走りをもたらすのに加えて、標準装着のリヤスポーツディファレンシャルがアクセルオンで旋回力を発生させてくれるので、常に狙ったラインをトレースできるのだ。
というわけで、あらゆる部分が洗練され、スポーティさに磨きがかかったアウディS4。個人的には、スポーティに走らせるにはこのくらいのサイズが上限なので(!?)、まさにこのS4は僕にとって理想のスポーツセダン......ということになる。クルマの返却が名残惜しかったのなんの......。
(Text by Satoshi Ubukata)
A4シリーズの最上級モデルと位置づけられるアウディS4だけに、インテリアも凝っている。黒を基調とした室内は、ヘッドライニングにも黒を取り入れ、デコラティブパネルにはリアルカーボンをおごる。さらに、ヘッドレスト一体型の専用レザースポーツシートなど、スポーツセダンにふさわしい演出がそこかしこに散りばめられている。
それでも、エクステリア同様、インテリアも落ち着いた雰囲気にまとめられているから、さりげなくスポーツを楽しみたいという人には打ってつけである。
最新のS4には、引き続きスーパーチャージャー付き3L V6直噴エンジンの3.0 TFSIが搭載される。最高出力333ps/5500〜7000rpm、最大トルク44.9kgm/2900〜5300rpmのスペックや、組み合わされるギアボックスが7速Sトロニックというのも変わらない。
一方、フェイスリフトにもかかわらず、パワーステアリングを油圧式から電動式に変更したり、アイドリングストトップとブレーキエネルギー回生機構を標準装着するなど、燃費向上に余念がないのはアウディらしいところ。アウディ ドライブセレクトに「効率モード」が追加されたのも、実燃費向上を狙ってのことである。
と、効率化のことばかり書いていると、S4が牙を失ってしまったように思えるだろうが、実際は牙を隠しているに過ぎない。
3.0 TFSIは相変わらず低回転から力強く、それでいて実にスムーズ。軽くアクセルペダルを踏んでいるだけでスッとクルマが前に出て行く。これだけトルクに余裕があると、ドライビングに余裕が生まれ、あえてアクセルペダルは深く踏み込まず、ジェントルな運転を心がけたくなるから不思議だ。
100km/h時の回転数はわずか1600rpm。巡航中のキャビンは静かで、さらに乗り心地も快適。プレミアムサルーンを運転しているような気分になる。
しかし、街を抜け出し、空いたワインディングロードにたどり着いたところでアクセルペダルを深く踏み込むと、このクルマの本性が姿を現す。低中回転域でも強烈な加速を示す3.0 TFSIエンジンは、4000rpmを超えるとますます勢いづき、ビューンというサウンドを高めながら一気にトップエンドを目指していく。「胸のすく加速」とは、まさにこのことだ。
パワーみなぎるエンジンに加えて、S4のハンドリングもワインディングロードの走りを熱くする。通常、前40:後60にトルク配分するクワトロがFRライクな軽快な走りをもたらすのに加えて、標準装着のリヤスポーツディファレンシャルがアクセルオンで旋回力を発生させてくれるので、常に狙ったラインをトレースできるのだ。
というわけで、あらゆる部分が洗練され、スポーティさに磨きがかかったアウディS4。個人的には、スポーティに走らせるにはこのくらいのサイズが上限なので(!?)、まさにこのS4は僕にとって理想のスポーツセダン......ということになる。クルマの返却が名残惜しかったのなんの......。
(Text by Satoshi Ubukata)