仕様変更によりモーターがパワーアップした「ID.4 Pro」を試乗。走り以外にも、さまざまな進化を確認した。

使いやすくなったコックピット
フォルクスワーゲン ジャパンが、ID.4の仕様変更を発表したのは、すでに報告済み。パワートレインやコックピットのデザインに手が入れられている。
概要は上記のニュースをご一読いただくとして、今回試乗したのは上位モデルの「ID.4 Pro」。VIN(シャシーナンバー)を見るとモデルイヤーを示す記号(VINの右から8桁目)が「S」で、この車両が2025年モデルであることがわかる。
私が所有する「ID.4 Pro Launch Edition」は記号が「N」で2022年モデルだが、両者のエクステリアに違いを見つけることができなかった。
一方、コックピットは、デザインの変更により明らかに操作性が向上している。

ダッシュボード中央のタッチパネルは、ID.Proの場合はサイズこそ変わらないが、以前はモニターの下に配置されていた空調やドライビングプロファイルなどの物理スイッチが、ソフトスイッチとしてタッチパネルの上下に移され、より簡単にアクセスできるようになった。シートヒーターの調節も直接できるようになったのもうれしい。
モニター下部にはエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダーが残っているが、イルミネーションが搭載されたことで夜間の使い勝手が大幅に向上している。
メニュー構成も、「Passat」や「Tiguan」と同じスタイルに変わり、使いやすさを増している。

“ドライバーインフォメーションディスプレイ”と呼ばれるメーターパネルの右に配置されていたドライブモードセレクターは、ステアリングコラムの右側に再配置された。操作方法はこれまでと同じで、レバーの先を回転させることでRとD/Bが変更できる。
これにともない、ワイパーのレバーは、もともとステアリングコラムの左側にあるウインカースイッチに統合された。このあたりもPassatやTiguanと共通である。



細かいところでは、ステアリングホイールのマルチファンクションスイッチのレイアウトが変更されている。これまでは音量と早送り/巻き戻しスイッチがともに右側に配置されていたのが、これを左右に振り分けられたことで、誤操作が少なくなるのはうれしい配慮だ。



パワフルな走り
後輪を駆動する電気モーターも一新されている。最新版は最高出力が従来の150kW(204ps)から210kW(286ps)へと引き上げられ、最大トルクも310Nmから545Nmへと大幅に増強された。このモーターは「ID.7」以降のモデルに採用され、また、ID.Buzzでは最高出力は210kW(286ps)と同じだが、最大トルクが560Nmに引き上がられている。

さっそく走らせると、動き出しからまるで印象が違う。従来よりも明らかに軽い走り出しで、以前感じていた動き出しの“もっさり感”が消えているのだ。走り出したあと、アクセルペダルを軽く踏むと、以前にも増して素早く力強い加速を見せる。
そして、さらにアクセルペダルを踏み込めば、少なくとも120km/hまでは勢いよくスピードを上げていく。正直なところ、日本ではそこまでのパワーは必要ないかもしれないが、パワーがアップしても、極端に電費が悪化しないのが、EVのいいところだ。
実際、高速道路をACCを使った100km/h巡航した場合の電費は5.9km/kWh。この日の気温は10℃前後で、2022年モデルでほぼ同じ気温、同じルートを走行した際の電費の記録は6.4km/kWhだった(いずれもエアコンはオン)。
比較的空いた一般道を走行した場合の平均電費は7.6km/kWhだった。

乗り味に関しても変化が見られ、前235/50R20、後255/45R20の「Hankook Ventus S1 evo3 EV」を履く試乗車は、基本的にはドイツ車らしいしっかりとした乗り心地を示す一方、初期の同じタイヤを履く広報車に比べて、多少乗り心地がマイルドになり、目地段差を超えたときのショックも軽減されていたのだ。
劇的に向上した充電性能
ID.4 Proのオーナーである私が最も気になっていたのが急速充電能力の向上だ。自宅に充電設備がない私にとって、急速充電能力の優劣が、日頃の使いやすさに直結するからだ。もちろん、外出時の“経路充電”にも大きく影響するので、ある程度の航続距離や電費が確保されている現代のEVでは、急速充電能力は注目すべき評価基準なのである。
これまでのID.4 Proでは、150kW急速充電器を利用した場合、“うまくいけば”90kW強で充電することができた。ただ、気温が低いと、バッテリー残量が少なくても70kW以下になるなど、思うように充電できないことが多い。
その点、最新版のID.4 Proでは電費急速充電時の受け入れ能力が403V/250Aから403V/305Aへと引き上げられるとともに、気温が低く、バッテリー温度が低い場面では「バッテリーヒーター」を手動で起動し、適温まで暖めることができるのは大きなアドバンテージになる。
取材当日の気温は12℃で、バッテリー残量は31%。そのままでは急速充電能力は60kWという表示だった。そこで、バッテリーヒーターをオンにして約40分走ると、バッテリー温度が適温に達し、110kWまで急速充電能力が向上している。



バッテリー残量が25%の状態でポルシェセンターに到着し、“ターボチャージャー”で充電を始めると、約2分後には120kWまで上がり、その後も電力が上がっていく。約5分後にはピークの131kWまに達し、その後はバッテリー残量が増えるにともない徐々に電力が下がっていった。それでも70%を超えるくらいまでは100kW以上をキープした。
最終的には22分間で25%から80%まで充電。この間の充電量は42.6kWhだったから、平均116kWで充電できたことになる。ウチのID.4 Proが、比較的気温が高い時期で平均70kW程度、気温が低いと60kW弱ということを考えると、1.6〜2倍程度は充電性能が向上していることになる。
22分の充電で走行可能距離は112kmから353kmまで241km増加。10分後の段階でも50%、221kmに達しており、わずかな休憩時間でも十分な充電が可能なことがわかる。
なお、プレスリリースでは急速充電の受け入れ能力が250Aから305Aに向上したとされていたが、今回の数字からは350Aまで向上していると考えられる。


モーターのパワーアップやコックピットの操作性向上に加えて、充電能力の劇的向上が図られたID.4 Pro。従来型のオーナーにとってはうらやましいことばかりで、「このまま最新版を返したくない」と思ってしまった私である。
(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Volkswagen Japan)



