ついに日本に上陸した“Golf8.5”に初試乗! 今回は、エンジン排気量が1Lから1.5Lにアップした「Golf eTSI Active」をチェックする。
いわゆるGolf8.5、すなわちGolf8のマイナーチェンジ版は、より直線的なデザインになったヘッドライトや新デザインのテールライトなどを採用したことに加えて、フロントグリルにイルミネーション付きのVWエンブレムを初めて採用。一方、室内は、ダッシュボード中央のタッチパネルがこれまでよりひとまわり大きな12.9インチとなり、操作性の向上が図られるなど、見どころは盛りだくさんだ。
最新版Golfの概要は上のニュースをご一読いただくとして、今回試乗したのは、エントリーグレードを担うGolf eTSI Activeである。マイナーチェンジ前のGolf eTSI Activeには、1.0L直列3気筒ターボと48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.0 eTSIが搭載されていたが、マイナーチェンジ後は、85kW/116psの1.5L直列4気筒ターボとマイルドハイブリッドシステムとの組み合わせに変更されている。それがどんな効果をもたらすのか、興味津々である。
上品な“アネモネブルーメタリック”をまとう試乗車は、純正ナビゲーションの“Discoverパッケージ”と、LEDマトリックスヘッドライト“IQ.LIGHT”などを含む“テクノロジーパッケージ”の2つのオプションが装着されている。ちなみに、最新のラインアップには、純正ナビゲーションやIQ.LIGHTなどの設定がない「Golf eTSI Active Basic」が引き続き用意されており、これら装備が不要なら、Golf eTSI Activeと同等の走りを、より手頃な価格で楽しむことができる。
それはさておき、最新のGolfはぱっと見はマイナーチェンジ前とそう変わらない印象だが、よく見るとフロントバンパーのデザインがすっきりしたことで、以前よりも親しみやすい表情になった。一番の違いは夜の顔で、光るVWエンブレムの効果は絶大! “あれが移植できたら……”と思うGolf8オーナーは、きっと私だけではないはずだ。
エクステリア以上に注目したいのが、コックピットの改良だ。センターのタッチディスプレイが12.9インチに拡大されてタブレット型になり、これまでより手前にそびえ立つから迫力満点である。
ディスプレイのサイズが大きくなったぶん、直接アクセスできるメニューが増えたのも見逃せない。たとえば、ドライビングプロファイルやアシスタンス、車両設定などのメニューがコントロールパネル上段のソフトスイッチで簡単に呼び出せるようになり、シートヒーターの温度設定もいちいちメニューを開かなくて済むのもありがたい。
モニター下部にはエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダーが残っているが、以前はイルミネーションがなく、夜間の操作がしにくかったのに対して、この部分にイルミネーションが追加されたことで夜間でもストレスなく使えるようになったのもうれしい。
ナビゲーションシステムの使い勝手は基本的には従来と変わらない。もう少し目的地検索がしやすかったり、表示が見やすいとうれしいのだが……。
ステアリングホイールは、これまでは上位グレードにタッチ式のスイッチが使われていたが、フェイスリフトを機に全グレードで物理スイッチを採用している。個人的にはタッチスイッチに不満はなかったが、使いにくいという声に応えたものだ。
一方、ハザードスイッチのまわりは相変わらずタッチ式で、ハザードスイッチを押そうとして、ついまわりのスイッチに触れてしまうことがあった。ぜひこちらも物理スイッチに変更してほしいものだ。
シフトレバーやパーキングブレーキのスイッチは以前のままだ。このGolf eTSI Activeにはファブリックシートが装着されるが、ドア内側とセンターコンソールのアームレストはレザー調で、ファブリックのように、腕が擦れて白っぽい汚れがつく心配がないのがいい。
前置きはこのくらいにして、まずは一般道を走らせると、1.5 eTSIの活発さに目を見張る。最高出力は85kW/116psとやや控えめだが、動き出しは軽やかで、低回転から十分なトルクを発揮する。しかも、低回転でもアクセルペダルの動きに素早く反応するから、加速ではストレスと無縁である。これには48Vマイルドハイブリッドシステムが貢献していて、加速時にモーターがエンジンをアシストすることで、低回転でも素早く力強い加速が得られるのだ。
以前の1.0 eTSIは、3気筒エンジンとしてはノイズや振動はよく抑えられていたが、4気筒の1.5 eTSIではさらに振動やノイズが低減されるのも期待どおりだ。アクセルペダルを踏み込むと、3000rpmあたりからさらに活発になり、5000rpm過ぎまで不満のない加速が楽しめる。おかげで、高速道路の合流や追い越しでも困ることがなかった。
一方、アクセルペダルから足を離すと、今度は48Vマイルドハイブリッドシステムにより走行中にエンジンが完全に停止し、いわゆる“コースティング”によって燃料消費はゼロに。この状態からアクセルペダルを踏み込むと、エンジンは間髪いれず再始動するから、加速がもたつくことはない。アイドリングストップ時を含めて、エンジンの再始動も素早くスムーズというのも、48Vマイルドハイブリッドシステムのメリットである。
1.5 eTSIでは、アクセルペダルを軽く踏むような場面で4気筒のうち2気筒を休止するACT(アクティブシリンダーマネージメント)機構を搭載。これも低燃費に貢献している。
実際、今回の試乗では燃費をチェックしているが、その数字には驚くばかりだ。Golf eTSI Activeのカタログ燃費(WLTCモード)が18.7km/Lであるのに対して、比較的空いた一般道を丁寧なアクセルワークで走ったときが24.3km/L! 一方、ストップ&ゴーの多い都内の一般道でも12.9km/Lをマークしている。
比較的平坦な高速道路では、ACCで100km/h巡航したときが23.6km/L、ACCを使わず100km/h前後を保ったときが24.4km/Lだった。353km走行時(一般道2割、高速8割)の総平均燃費は21.9km/Lを達成(いずれも車載コンピュータのデータ)。ガソリンエンジンでこの数字を叩き出すGolf eTSI Activeを、褒めずにはいられない!
走りについては、やや硬めの乗り心地で落ち着いた挙動を見せるのがGolfらしいところ。高速走行時は直進安定性が高く、長距離ドライブもお手の物という性格も変わりがない。ただ、目地段差を超えたときなどに軽いショックを伝えてくるのと、205/55R16タイヤから多少ゴロゴロした感触が伝わってくるのが気になった。それでもショックは角が丸められていて、全体としてはマイルドな乗り味にまとめられている。
試乗車を借りだしたときの走行距離が500kmほどであり、サスペンションなどにもうすこし“あたり”がつくと、印象が変わるかもしれない。そのあたりは、走行距離が増えたところであらためてチェックしたいと思う。
そのほかに気づいたこととしては、自動的にハイビームの配光を調節してくれる便利なIQ.LIGHTがバージョンアップし、照射距離500mを誇るハイパフォーマンスビームを新たに搭載。実際に使ってみると、照明の少ない高速道路では500m先の看板に光が反射するのが確認でき、これまで以上に前方を見通すことができた。アダプティブクルーズコントロール“ACC”や、同一車線内全車速運転支援システム“Travel Assist”も違和感なく使えて、昼夜問わず、高速移動が便利である。
「Hello,Volkswagen」で起動するボイスアシスタントは、まだ完璧に言葉を理解できないものの、「温度を2℃上げて」とか「温度を24℃に設定して」という簡単な指示には応えてくれる。今後、さらに進化することを期待する。
ということで、いくつか気になる点はあるものの、エントリーグレードとしては十分すぎるほど実力が高いGolf eTSI Active。気軽にGolfを始めたいという人には、打ってつけの一台である。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)