マイナーチェンジしたGolf(ゴルフ)をドイツで試乗。デザインやパワートレインの進化をチェックする。

画像1: Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

2019年10月にデビューし、日本でも2021年6月に発売された8代目Golf。2024年1月にはマイナーチェンジが実施され、日本では2025年1月以降に導入が予定されている最新版を、ひとあし先にドイツで試すことができた。

マイナーチェンジの詳細は上記のニュースをご覧いただくとして、今回試乗できたのは、85kWの1.5 eTSIを搭載する「Golf Life 1.5 eTSI」。装備は異なるものの、パワートレインやシャシーは日本仕様の「Golf eTSI Active Basic」「Golf eTSI Active」に相当し、新たなエントリーグレードを知るには打ってつけである。

画像2: Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

いわゆるGolf8.5の標準モデルを目の当たりにするのはこれが初めてだが、ヘッドライトのデザインがスリムでよりシンプルになったのに加えて、フロントバンパーのデザインがすっきりしたことで、フェイスリフト以前よりもフレンドリーな表情が好印象だ。

エクステリアに関しては、フェイスリフト以前にフロントフェンダーにあった“Style”や“R”、“GTI”といったバッジが廃止されたのが個人的に気になっていた。これについて、フォルクスワーゲン ブランド チーフデザイナーを務めるアンドレアス・ミント氏に理由を伺うと、「Golf8がデビューした頃は、きらびやかなエレメントで飾るのがトレンドでしたが、今回のフェイスリフトではそういった要素を一切排除してシンプルなデザインを目指したかった」と答えてくれた。トレンドに流されず、長いあいだ愛されるクルマをデザインすることが、クルマの価値を高め、オーナーの利益にもつながるという考えからだ。

画像: フォルクスワーゲン ブランド チーフデザイナーを務めるアンドレアス・ミント氏

フォルクスワーゲン ブランド チーフデザイナーを務めるアンドレアス・ミント氏

室内は基本的にこれまでのデザインを踏襲するが、ステアリングホイールやダッシュボード中央のコントロールパネルには変更の手が加えられている。

たとえばステアリングホイールは、これまでは特定のグレードにタッチ式のスイッチが使われていたが、フェイスリフトを機に物理スイッチに変更されている。個人的にはタッチスイッチに不満はなかったが、使いにくいという声に応えたものだ。

一方、コントロールパネルは従来の10インチから12.9インチに拡大されるとともに、ドライビングプロファイルやアシスタンス、車両設定などのメニューがコントロールパネル上段のソフトスイッチで簡単に呼び出せるようになった。また、モニター下部にはエアコンの温度設定と音量調節用のタッチスライダーが残っているが、以前はイルミネーションがなく、夜間の操作がしにくかった。これに対して、この部分にイルミネーションが追加されたことで夜間でもストレスなく使えるようになったのがうれしい。

試乗車に搭載されるのは、1.5 TSIエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.5 eTSI。これまでも110kW/150ps版が用意され、日本では「Golf eTSI Style」と「Golf eTSI R-Line」に搭載されていたが、今回のマイナーチェンジで85kW/116ps版が追加され、日本でもGolf eTSI Active Basic/Activeに採用されることになった。

画像: 1.5 TSIエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.5 eTSI。マイナーチェンジで85kW/116ps版が追加された。

1.5 TSIエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.5 eTSI。マイナーチェンジで85kW/116ps版が追加された。

従来この2グレードには1.0L直列3気筒ターボを採用する1.0 eTSIが搭載されていたが、マイナーチェンジでこのパワーユニットは世界的に廃止になっている。その理由について、フォルクスワーゲン ブランド技術開発担当取締役のカイ・グリュニッツ氏に尋ねると、「バリエーションを減らすことで、コスト削減を図るのが狙い」という答えが返ってきた。

画像: フォルクスワーゲン ブランド技術開発担当取締役のカイ・グリュニッツ氏(写真手前)

フォルクスワーゲン ブランド技術開発担当取締役のカイ・グリュニッツ氏(写真手前)

エントリーグレードのパワーユニットが1.0 eTSIから1.5 eTSIに変更されることは、ユーザーにとってもメリットがある。たとえば、一般的に3気筒エンジンに比べて4気筒エンジンは振動やノイズが小さく、また、排気量が大きいほうがより力強い加速が可能である。そのぶん燃費が悪化する心配があるが、1.5 eTSIに組み合わされる1.5L直列4気筒直噴ガソリンターボエンジンは、負荷が低いときに4気筒のうち2気筒を休止するACT(アクティブシリンダーマネージメント)機構を搭載し、2気筒モードでは1.5Lの半分、すなわち0.75Lエンジンとして作動するので、そのぶん低燃費が期待できるのだ。実際、マイナーチェンジ前の1.0 eTSIと1.5 eTSIでは、WLTCモード燃費は前者が18.6km/L、後者が17.3km/Lだが、条件によっては1.5 eTSIのほうが実燃費が良いことがあった。

そんな高効率1.5Lエンジンとマイルドハイブリッドシステムを搭載するGolf Life 1.5 eTSI は、動き出しから軽やか。110kW/150ps版に比べるとやや控えめな印象とはいえ、低回転から十分なトルクを発揮する。街中ではアクセルペダルの動きに素早く反応し、ストレスのない加速を見せてくれる。これには48Vマイルドハイブリッドシステムも貢献していて、加速時にモーターがエンジンをアシストすることで、低回転でも素早く加速を実現している。

画像5: Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

アクセルペダルを軽く踏む状況では、瞬間燃費の表示画面に“2-cylinder mode”の文字が頻繁に表示され、2気筒での省燃費運転が行われていることがわかる。一方、2気筒と4気筒の切り替えは実にスムーズで、メーターの表示を見なければそれに気づかないだろう。

アクセルペダルから足を離すと、今度は48Vマイルドハイブリッドシステムにより走行中にエンジンが完全に停止し、いわゆる“コースティング”によって燃料消費はゼロに。一方、先行車が近い場面ではコースティングを行わず、エンジンブレーキが効くので、先行車に接近しすぎないのが助かる。

コースティングの状態から必要に応じてアクセルペダルを踏み込むと、すぐにエンジンは再始動するから、加速がもたつくことはない。アイドリングストップ時を含めて、エンジンの再始動も素早くスムーズなのも、48Vマイルドハイブリッドシステムのおかげである。

アウトバーンへ合流する場面でアクセルペダルを思い切り踏み込むと、3000rpmあたりから勢いを増し、5000rpm過ぎまで不満のない加速が楽しめる。

試乗の際、何度か燃費をチェックしたところ、いずれも一般道とアウトバーンの両方を走り、16.4km/L(平均速度57km/h)、20.8km/L(同74km/h)、19.2km/L(同96km/h)という低燃費をマーク。その実力の高さに驚かされた。

画像6: Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

Golf Life 1.5 eTSI(欧州仕様)

走りについては、試乗車と日本仕様との違いが大きいため、この試乗だけで評価するのは難しい。日本仕様のGolf eTSI Active Basic/Activeには205/55R16タイヤが装着されるのに対して、試乗車はアダプティブシャシーコントロール“DCC”が搭載され、これにともないタイヤは2インチアップの225/40R18インチとなる。

ちなみに、Golf8/8.5では、全車にマクファーソンストラットフロントサスペンションが採用される一方、リヤサスペンションはパワーユニットの出力により異なり、110kW以上では4リンク(マルチリンク)式、110kW未満はトーションビーム式が搭載される。この試乗車は後者で、乗り心地は十分に許容できるレベルであり、高速走行時の直進安定性もまずまずといったところ。

一方、DCCが装着されているとはいえ、18インチタイヤとトーションビームリヤサスペンションの組み合わせでは路面からのショックを拾いがちなのが気になった。フェイスリフト前の日本仕様のGolf eTSI Active Basic/Activeが、快適な乗り心地とゴルフらしい落ち着いた挙動を示していたことから、フェイスリフト後も同様の仕上がりであることを期待したい。

ということで、多少気になるところもあるが、日本の新しいエントリーグレードに相当するGolf Life 1.5 eTSIがこれまで以上に魅力的なクルマであることが確認できた。はたして日本仕様がどんな走りを見せてくれるのか、いまから日本で試す日が楽しみである。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Volkswagen Japan)

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