「ID.GTI Concept」がワールドプレミアを果たした翌日、フォルクスワーゲン デザイン責任者を務めるアンドレアス・ミント氏へのインタビューが実現。ID.GTI Conceptへの想いや、フォルクスワーゲン デザインのこれからについて、彼が語った。

画像: フォルクスワーゲン デザイン責任者のアンドレアス・ミント氏。

フォルクスワーゲン デザイン責任者のアンドレアス・ミント氏。

「われわれにとってGTIは重要なアイコン」

2023年2月、ベントレーのデザインディレクターからフォルクスワーゲンのデザイン責任者に就任したアンドレアス・ミント氏。かつてフォルクスワーゲンで初代「Tiguan」や「Golf7」のエクステリアデザインを担当。その後、Audiでは「Audi A1」、「Audi e-tron GT」、「Audi Q3」、「 Audi Q8」などを手がけ、Audiのエクステリアデザインのリニューアルに務めてきた。

そんなミント氏が、フォルクスワーゲン復帰後に取り組んでいるのが、フォルクスワーゲン デザインの新しい方向性を定めること。そのひとつの答えとして提示するのが、IAA(ミュンヘンモーターショー)で公開したデザインスタディ「ID.GTI Concept」である。

ID.GTI Conceptは、やはり彼がデザインを主導した「ID.2all concept」をもとに、伝統のGTIに仕立てあげたもの。ID.2allが2025年に市販されたあと、2027年にはID.GTIが発売される予定だ。

画像: ID.GTI Conceptとアンドレアス・ミント氏

ID.GTI Conceptとアンドレアス・ミント氏

GTIはわれわれフォルクスワーゲンにとって非常に重要なアイコンです。実用性とダイナミックな走りを両立したことがこのクルマの本質であり、その成功をもたらしました。これこそがフォルクスワーゲンであり、そのDNAを受け継ぎ、将来につなげなければなりません。ID.GTI Conceptには、GTIとして必要な要素を注ぎ込みました。(ミント氏)

フロントマスクを彩るレッドのラインやフロントのスプリッター、ハニカムメッシュのエアインテーク、コントラストカラーのホイールアーチ、黒く縁取られたリヤウインドーなど、GTIらしい要素が散りばめられたID.GTI Conceptは、「GTI」のバッジを見なくてもすぐにそれとわかる強い個性を放っている。

そして、ID.GTI Conceptのプロポーションはパーフェクトだとミント氏はいう。

2,600mmのホイールベースに対して全長4,100mmという比率は完璧です。転がり抵抗を低くするために20インチホイールを採用したこともあって“Looks very good!”に仕上がりました。EVは、フロントオーバーハングを切り詰められるのも有利なところで、強く、パワフルで、スポーティな印象を与えると同時に、愛らしいデザインにできたと思っています。(ミント氏)

20インチのアルミホイールも、ミント氏のお気に入りだ。

画像: ID.GTI Conceptのアルミホイール。

ID.GTI Conceptのアルミホイール。

市販に際しては20インチが19インチになるかもしれませんが、同じデザインでいきたいと思っています。外側のポケットは1976年に発売された初代Golf GTIのスチールホイールから、真ん中はゴルフボール型のシフトレバーからインスピレーションを得たものです。このふたつを組み合わせることで、まったく新しいデザインが生まれました。このようなデザインのホイールは他にありませんから、そういう意味でもアイコニックです。(ミント氏)

ID.GTI Conceptでは、シフトレバーがあった位置にモードセレクターが置かれている。

モードセレクターにはゴルフボールデザインのイメージを採り入れましたが、それとは別にゴルフボールのデザインを残したかったという気持ちから、ホイールにゴルフボールのデザインを組み込んだのです。

画像5: ID.GTI Concept

ID.GTI Concept

VWが真のVWであるために必要な3つの要素とは?

ID.2all ConceptやID.GTI Conceptを手がけるにあたり、ミント氏は真のフォルクスワーゲン デザインとは何かを、自身に問いかけたという。そこで辿り着いたのが「Stable(安心、安定、信頼できること)」「Likable(好かれること)」「Secret Sauce(隠し味)」の3つだった。

“Stable”は、スリムなボディであってもワイドなトレッドとすることでデザイン的に安定感をもたらすこと。また、安定した価値を持つことです。その結果、時間を越えて価値が続くのです。次の“Likable”は好かれること。フレンドリーであり、クルマを見て笑顔になれることは、われわれの過去を振り返ってみても、常に大切にしてきたことです。この2つが必須の課題でしたが、それだけでは退屈なクルマが出来上がってしまいます。そこで最後のスパイスとして“Secret Sauce”が必要でした。ID.GT Conceptを見ていただければ、Secret Sauceが何であるかがおわかりいただけると思います。これら3つの価値を、今後登場するすべてのフォルクスワーゲンに適用するつもりです。ホットハッチのGTIとSUVをデザインするときではデザイン要素は異なってきますが、その根底にある3つの価値は常に変わることはないのです。(ミント氏)

デザインを再構築するうえでとくに重視しているのがフロントマスクの“目”だという。

フォルクスワーゲンは常に笑顔でなければならないと思うのです。これはとても重要でしたが、古いものをただ踏襲するだけではいけない。そこにはプログレッシブで前衛的なデザインを同時に達成する必要がありました。たとえば、VWのロゴを真ん中に置いて、それを光らせる。そして将来は、目の数を変えたり、目の特徴を変えたりしていこうと思っています。(ミント氏)

現在、フォルクスワーゲンには既存のエンジン車(ICE)とEVのID.ファミリーが存在するが、このふたつのデザインは将来近づいていくのか、それとも別の道を歩むのか? ミント氏の考えはこうだ。

Eモビリティの初期の段階では、“アーリーアダプター”がEVを購入しましたが、それは社会の8%くらいに過ぎませんでした。彼らにしてみると「俺たちは新しいクルマに乗っているんだぞ」といいたいがために、ICEとは違うデザインが必要でした。しかし、いまは購買層が変わり、EVの比率が20〜30%に増えていくと、違いを求めるより美しいクルマを求めるように変わっていきます。マーケットが変わることによって、デザインも変わっていく。ICEとEVのデザインは、モダンなルック、新しいデザインを採用するEVにICEが近づいていくと思います。Golf8あたりからその動きはあったといえます。(ミント氏)

画像: VWが真のVWであるために必要な3つの要素とは?

ID.ファミリーのデザインが進化することにより、エンジン車のデザインも同時に変わっていくというミント氏。フォルクスワーゲンがフォルクスワーゲンらしくあり続けるためのデザインとはどんなものなのか、今後登場するニューモデルから目が離せない。

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Satoshi Ubukata, Volkswagen)

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