320PSという圧倒的なパワーを持つ、新型「ゴルフRヴァリアント」は、まさにパワーステーションワゴンだ。そして、今回、1994年に登場した「ゴルフワゴンVR6シンクロ」と対面した。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

画像1: 【Auto Bild】「ゴルフRヴァリアント」が伝説の「ゴルフワゴンVR6シンクロ」と対面する

ウォルフスブルクにて

ゴルフワゴンは一見するだけでは、必ずしも雷や稲妻のようには思えない。また、グリーンのゴルフ3がどんなモデルか聞かずに見ただけだったら、90年代に20代半ばで乗った75PSの1.6Lモデルを思い浮かべていただろう。

しかし、この個体はベーシックモデルではなく、「VR6シンクロ」、つまり2.9Lのビッグサイズで、190PSを発揮し、シンクロと呼ばれる4WDを備えた個体である。そう、フォルクスワーゲンはかつてゴルフにVR6という名で、6気筒を搭載したことがあるのだ。

今日ここでVR6シンクロを走らせているのは偶然ではなく、初代と最新パワーステーションワゴンを対比してみるためだ。われわれは、新型パワーステーションワゴンをその元祖に紹介し、ゴルフ8 Rとゴルフ3 VR6シンクロを比べてみたかったのだ。

声をかけたフォルクスワーゲン本社には、190PSのハッチバックはあったが、VR6のステーションワゴンはなかった。そこで、フォルクスワーゲンのイントラネットで、子会社を含めた全社員に協力を呼びかけた。

すると、社員のひとり、ラース・キッツマンから、このクルマを所有しているのでどうぞ使ってくださいという、ありがたいオファーがあったのだ。

「最初は自分たちがどんな恋人を買ったのかわからなかったんだ」と、ラースは笑いながら語った。

画像: 新車時の価格の高さを考えれば、ゴルフ3ワゴンVR6シンクロの1,450ユーロ(約19万円)という中古車価格は破格だった。

新車時の価格の高さを考えれば、ゴルフ3ワゴンVR6シンクロの1,450ユーロ(約19万円)という中古車価格は破格だった。

1994年のVR6シンクロの価格は50,610マルクと高額だった

出発する前に、ラースは自分の話をした。

「私はゴルフ2の“ファイヤー&アイス”に乗っているのですが、これをVR6に改造したいと思い、適切なエンジンを探していました」。

フォルクスワーゲンのエンジニアが探し当てたのは、259,000km走ったグリーンのゴルフワゴンだった。

「エンジンの音を聞くかぎり、とてもよく回る印象でした。売り手とは1,450ユーロ(約19万円)という値段で折り合いがついて購入しました」。

夕方、ラースは自分が実際に買ったものをウェブで確認した。それはなんと100台くらいしかないはずの希少車だった。1994年に発売された50,610マーク(約330万円)のパワーステーションワゴンは決して安いものではなかった。

それは今でも実感できる。本革のシートは、背もたれの調整が少々面倒だが、ドアトリムにはパワーウィンドー、CDチェンジャーのコントロール付きカセットラジオ、オートマチックエアコンの下には、75PSのゴルフと同じ5速マニュアルトランスミッションのスティックがある。

ラースは運転席に座ってみて、1,450ユーロ(約19万円)のゴルフワゴンVR6は良い買物だったと実感したようだ。

アクセルを踏み込むと、VR6はとても洗練された、育ちの良い音がした。スピードを上げていくと、針を1時の位置まで追いかける必要があり、4000rpmで初めてパンチが効いてくるエンジンだ。16Vが180PSしかなかったころ、245Nmのトルクは力強いものだった。

新型ゴルフRでサーキットとカントリーロードを走破

今日、私たちのもとにはゴルフRがあり、ゴルフ史上最高のシートに座っている。ドライバーズシートは、しっかりしていて、横方向のサポートが優れている。このゴルフは、ステーションワゴンのバックパックを背負っていても、曲がりくねったコースをマスターできることは間違いない。

このパワーステーションワゴンは、第一にカントリーロードではフワフワした乗り心地を、第二にサーキットではアスファルトに密着させる魔法のサスペンションシステムが組み込まれているからだ。

そこで素早くスポーティなドライビングプロファイルを選ぶと、ドライビングダイナミクスマネージャーの出番となる。

画像: 新型ゴルフRでサーキットとカントリーロードを走破

ゴルフRヴァリアントのサーキットでのパフォーマンス

ゴルフのGTIやクラブスポーツと同様に、Rでも電子制御デバイスが適切なグリップを確保する。4WDの4MOTIONは、両アクスルに50:50の比率でパワーを配分するのではなく、リヤ左右のホイールにも可変的にパワーを配分する。

ステアリングの角度、アクセルペダルの位置、カーブでの加速などによって、どちらのホイールにどれだけのパワーを与えるかが決まり、クルマを路面に接地させることができる。

ゴルフ8ヴァリアントはハッチバックのゴルフよりも35cmも長いこと、トランクの容量が最大1,642L(普通車よりも412L多い)であること、ステーションワゴンの重量が1,630kg(普通車よりも154kg重い)であることではあるが、運転しているときにはそんなことは少しも気にならない。それだけステーションワゴンはタイトで良いものに仕上がっているからだ。

しかしその価格は最低でも51,585ユーロ(約670万円)にもかかわらず、19インチホイールやナビはオプションだ。

ラースは新型「ゴルフR」をどう思っているのだろうか?

「ボディは本当に素晴らしく、シートはリビングルームのような雰囲気です」と29歳の彼は笑いながら語る。そして、その価値は非常に高いと、フォルクスワーゲンのエンジニアらしい、優等生的な答えが返ってきた。

画像: ゴルフRヴァリアントのサーキットでのパフォーマンス

テクニカルデータ:ゴルフRヴァリアント
● エンジン:4気筒ターボ、フロント横置き ● 排気量:1984cc ● 最高出力:335PS/5350rpm ● 最大トルク:420Nm/2100~5350rpm ● 駆動方式:4WD、7速DSG ● 全長×全幅×全高:4644×1789×1466mm ● 乾燥重量:1630kg ● トランク容量:611~1642L ● 最高速度:250km/h ● 0-100km/h加速: 4.9秒●平均燃費:12.8km/L ● CO2排出量:178g/L ● 価格:51,585ユーロ(約670万円)

テクニカルデータ: ゴルフワゴンVR6シンクロ

● エンジン:6気筒、フロント横置き ● 排気量:2861cc ● 最高出力:190PS/5800rpm ● 最大トルク:245Nm/4200rpm ● 全長×全幅×全高:4340×1695×1430mm ● 最高速度: 222km/h ● 0-100km/h加速:8.1秒 ● 価格: 50,610マルク(約330万円、1994年当時)

(Text by Andreas May / Photos by autobild.de)

画像2: 【Auto Bild】「ゴルフRヴァリアント」が伝説の「ゴルフワゴンVR6シンクロ」と対面する

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