320PSを誇る「ゴルフR」が、テストコース上で「ポルシェ718ケイマン」に挑む。320PSと4WDで武装したゴルフRが、718ケイマンを激しく追いかけていく。われわれの比較テストでは、ゴルフRが718ケイマンに追いつき追い越せるかどうかを検証しレポートする。
※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。
両者とも本気で土俵に上がってきた
今回、ポルシェは挑戦を受け入れ、エントリーモデルの718ケイマンをわれわれのもとへ送り届けてきた。
ただし、勝利のために万全を期して、スポーツクロノパッケージ(2,225ユーロ=約29万円)、20インチホイール(2,451ユーロ=約32万円)、パワーステアリングプラス(262ユーロ=約3万4千円)、トルクベクタリング(1,309ユーロ=約17万円)、18ウェイ調整可能なスポーツシート(3,618ユーロ=約47万円)、調整可能なサスペンション(1,428ユーロ=約18万円)、およびPDK(2,826ユーロ=約37万円)を搭載したテスト車両であった。ベースモデルの56,400ユーロ(約738万円)に加えて、合計で70,610ユーロ(約925万円)という高価な一台だ。
一方、ゴルフRには、49,260ユーロ(約645万円)からのスタート。ポルシェとの“レーストラックデイ”のために、フォルクスワーゲンもテストカーに、DCC(1,045ユーロ=約13万5千円)、ドリフト モードと大規模なリアスポイラー (2,265ユーロ=約29万5千円)、スポーツタイヤ(1,000ユーロ=約13万円)、チタン製の排気システム(3,800ユーロ=約49万円)を含む「Rパフォーマンスパッケージ」を追加で装備していた。最終的な車両価格は、57,370ユーロ(約750万円)で、こちらも決して安いとはいえない。
200km/hからのスプリントでは明らかにゴルフRが優勢
その高額の見返りに、ゴルフRは718ケイマンがあっと驚くような、加速性能を発揮する。718と同様に、0-100km/h加速は4.5秒を達成し、200km/hまで16.3秒で加速。なんとゴルフRほうほうが、73kg軽い718ケイマンよりも1.5秒近く速かったのだ。
レーストラックでは、ゴルフRは超高速ストレートだけでなく、他にも驚くべき才能も持っていることを示している。その理由は、2つの電子制御クラッチによりリヤアクスルのトルク配分を高度に可変化した4WDシステムにある。
インストルメントクラスターのデジタルトルクダイアグラムは、各コーナーの出口で外側の後輪が追加の駆動トルクを受けていることを明確に示している。
ゴルフRはまた、レーストラック上でも良好なパフォーマンスを発揮する。ドライバーズシートのお尻は、特にタイトなコーナーで、どのようにゴルフRが強烈なパンチとともに次のストレートに突入しようとしているかを感じることができる。
その一方で、DSGは十分なパワーをサポートできておらず、特に急ブレーキをかけた後、適切なレシオを探してギアをセレクトするのに少し時間がかかりすぎる。そのためわれわれは、「自分でギアを変えろ!」とアドバイスしたい。たとえパドルからの手動コマンドがDSGに多少の遅れを持って伝達されたとしても……。
ゴルフRの非常にダイレクトなプログレッシブステアリングは、トランスミッションとは対照的に、はるかに野心的に見える。ステアリングに必要な操舵角はわずかで、良好な堅さで作動する。
ブレーキも、短いペダルトラベルと、高速周回を何度か繰り返しても一貫して硬いプレッシャーポイントを維持したままで、ブレーキがダメになる様子もない。
それにもかかわらず、718ケイマンへ乗り換えたあとでは、ゴルフRは焦ったハリボテのように感じられる。それは、ポルシェ製ミッドエンジンスポーツカーは、ゴルフRとはほぼ反対の重量配分のおかげで、フロントアクスルの質量が300kgも減っているからだ。
さらに、ステアリングは、カーブの角度を小数点以下まで正確に伝えてくれる。718ケイマンは、ルノー アルピーヌのような他のミッドエンジンスポーツカーのような不均一さとは一線を画し、常に予測可能な状態を保ちながら、コースを容易に、そして非常に巧みに駆け抜けていく。
718ケイマンで速く走ることは本当に簡単で喜びだ。それは、優れたブレーキと車重、全体的なバランスのおかげである。
ポルシェとのギャップは最終的には驚くほど小さい
ただし、フルスロットルで加速する場合は、次の点に注意が必要だ。2Lの718ケイマンのエンジンは、トップエンドで少し苦戦するが、自然吸気の特性を生かして、4気筒で7,000rpmを超える高回転数を発生させることができる。
デュアルクラッチの動きは非常に優れていて、キックダウン時には、アクセルがフロアパネルに到達する前に、すでにボクサーは高く雄叫びを挙げる。そして、あらゆる運転状況において、電子ギアシフトシステムは適切なギアで作動する。この独創的なPDKは、スムーズなギアチェンジ、コースティング、勾配のある道路での繊細な加速も可能となっている。
コンチドローム(コンチネンタルタイヤのテストコース)でのゴルフRのラップタイムは1分35秒35。一方の718ケイマンは1分34秒73で、その差は1秒に満たないが、トラック上での勝者がどちらであるかはこれで明白になった。
400点満点中297点で2位:ゴルフR
普段使いに十分なRは、パワフルなエンジンと十分なコーナリングトラクションで好成績を収めた。しかし、DSGなど718ケイマンの精度には遠く及ばないし車重もネックになる。
400満点中309点で1位:718ケイマン
ステアリング、ブレーキ、デュアルクラッチトランスミッションはスポーツカーのポエム(詩)だ。これらの要素を備えたエントリーモデルのポルシェは、4WDのゴルフを寄せつけない。
結論
ここでふたつの異なる世界が出会う。ゴルフRが718ケイマンにどう対抗するのか、それが楽しみだった。
スポーティな日常のクルマとしては、ゴルフRはほとんど負けていない。しかし、基本バージョンでさえサラブレッドのスポーツカーである718ケイマンが当然のように勝利を収めた。
(Text by Stefan Novitski, Mirko Menke / Photos by Christoph Börries [AUTO BILD])
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