600台限定発売のゴルフGTI最強モデル「ゴルフGTI TCR」を短時間試乗。その第一印象は?
ゴルフGTI TCRは、WTCR(ワールド ツーリング カー カップ)やTCRジャパンシリーズに参戦するレーシングカー「ゴルフGTI TCR」のロードゴーイングバージョンに位置づけられるモデル。ゴルフGTIパフォーマンスをベースに、最高出力213kW(290ps)、最大トルク380Nmというパワフルな2.0 TSIエンジンを搭載するのが特徴だ。
その概要については、上記のニュースをご覧いただくとして、今回は先日開催された「フォルクスワーゲン オールラインアップ試乗会」で、約1時間というかぎられた時間ではあったが、試乗した印象をお伝えしよう。
専用色の“ピュアグレー”のボディがただならぬ雰囲気を醸し出している試乗車は、鈴鹿サーキットでの発表会でお披露目されたものと同じ個体ということだが、レースが行われるサーキットのパドックで見たときには地味に思えたこのボディカラー、街中で見ると印象はガラリと変わる。
運転席に座ると、12時の位置にレッドのマーキングが施された専用デザインのステアリングホイールが視界に入ってくる。サポートの良いスポーツシートも専用のデザインが採用され、まさに特別なゴルフGTIに仕上がっている。
さっそく走り出すと、ゴルフR譲りの2.0 TSIエンジンは低回転からトルクが厚く、動き出しが軽やか。ゴルフGTI TCRの特徴のひとつであるアクラポヴィッチのチタンエキゾーストシステムが奏でるサウンドは思いのほかジェントルだ。
しかし、アクセルペダルを踏み込むと、3000rpmを超えたあたりから、乾いたエキゾーストノートとともに、2.0 TSIエンジンは勢いを増し、レッドゾーンの6500rpmを少し上回るまで力強い加速を見せてくれる。7速DSGのシフトアップも実にスムーズで、気がつくとハイスピードに達しているという印象である。
ゴルフGTI TCRの乗り心地は、ベースとなるゴルフGTIパフォーマンスよりも硬めだが、アダプティブシャシーコントロール“DCC”が装着されることもあり、街乗りでも十分に許容できるレベルの快適さを確保。一方、軽快なハンドリングはさらに磨きがかかった印象で、コーナーリングの早い段階からアクセルペダルを踏みこんでいっても確実にトラクションが得られるし、"アンダーステア"も軽いことから、“オン・ザ・レール"のコーナリングが楽しめる。
ゴルフGTI TCRの前身にあたる「ゴルフGTIクラブスポーツ」との比較では、エンジンのパワーアップに加えて、DSGが6速から7速に変更されたことに注目だ。
ゴルフGTI TCRの7速DSGは、オーバーオールのギア比を見ると4〜6速はゴルフGTIクラブスポーツとほぼ同じで、実際、100km/h、6速のエンジン回転数はともに約2350rpm。ゴルフGTI TCRには、さらに7速ギヤが加わったことで、100km/hを約1800rpmという低いエンジン回転数で巡航できるようになった。これにより確実に燃費低減が見込めるのは、ゴルフGTIクラブスポーツのオーナーには羨ましいかぎりだ。
レーシングカーが起源というゴルフGTI TCRが、ゴルフGTIクラブスポーツよりもエンジンやエキゾーストのサウンドが洗練されていたのは予想外だったが、ゴルフGTI史上最強のモデルにふさわしい動力性能を備えているのは確か。ゴルフRよりも軽量・軽快なゴルフGTIを愛するファンには見逃せない一台である。
(Text by Satoshi Ubukata)