撮影のために「ニュービートル・プライムエディション」を借り出しました。そういえば、ニュービートルに乗るのは久しぶり......。
広報車のボディカラーは"サンフラワー"。初夏の日差しや、日に日に鮮やかさを深める緑と、絶妙なコントラストをなしています......といいながら、写真がなくてゴメンなさい(笑)
広報車は登録からまだ1カ月くらい、走行距離1400kmほどの新車です。大きなドアを開けて運転席に収まると、ニュービートル独特のにおいがしました。
他のフォルクスワーゲンとは明らかに違うこのにおい。そうそう、かつての愛車・ニュービートル・カブリオレで嗅いだにおいです。現在の愛車であるゴルフヴァリアント(これもメキシコ製です)では感じませんでしたから、メキシコ工場のにおいではないようです。
そんなことを考えながらニュービートルのステアリングを握っていたら、2001年にメキシコを訪ねたときの記憶が蘇ってきました。メキシコ行きの目的は、プエブラにあるフォルクスワーゲン・メキシコを取材するためでした。当時ここではニュービートルのほか、北米向けのジェッタやビートルを生産していました。お仕着せのプレスツアーでは決して見ることのできないフォルクスワーゲンの姿が見たくて、独自ツアーを企画したのです。
そのときの模様は、現在"休刊"中の「Breeze」9号(2001年春号)に記されているのですが、とてもフレンドリーなフォルクスワーゲン・メキシコのスタッフや、色鮮やかな街の風景、食べ続けても飽きないメキシコ料理など、僕の記憶の中には楽しい想い出がいっぱいです。
ここは、表紙を撮影した場所。黄色い壁にレッドのニュービートル・ターボがとても映えます。実はここ、教会の中庭で、この壁の前で撮れたらいいなぁとスタッフが"ダメモト"で牧師さんにお願いしに行きました。すると、「それは善い行いですか?」と質問され、「はい」と答えたところ、快く場所を貸してくれたというのです。
いま思い出しても、うれしくなるエピソードです。
現地取材では発見もたくさんありました。たとえば、メキシコではニュービートルをニュービートルと呼ばないんですね。単に"ビートル"なんです。というのも、現地では旧ビートルは"セダン"と呼ばれているので、新しいビートルではないし、セダンとはまるで別物なので"ニューセダン"でもないのです。
ちなみに、メキシコではレモンがライムで、ライムがレモン。コロナのビンにカットしたライム(日本式の呼び方)を入れて飲む人はいません。ただ、ライムの絞り汁と氷が入ったグラスにコロナを入れて飲む、というスタイルが存在して、これを「ミチェラダ・デ・コロナ」と呼んでいました。日本では考えられないスタイルですが、現地だとこれがイケるから不思議です。
プエブラ工場ではニュービートルの組み立てや最終検査の様子を見ることができました。印象的だったのは、日本向けのクルマには"日の丸"のサインが掲げられていたこと。それくらい、日本向けのクルマには気を遣っているということでしょう。
そんなニュービートルですが、皆さんもご存じのとおり、今年で生産が終了になります。今回借り出したニュービートル・プライムエディションは最後の特別仕様車で、1.6Lエンジン搭載の「ニュービートルEZ」をベースに、レザーステアリングや16インチアルミ、後席用プライバシーガラス等が装着されています。
運転すると、すこしのんびりした加速やいまのゴルフほどかっちりしないボディなど、古さは隠しきれないものの、なぜかホッとするのが、このクルマの魅力です。お世辞にも運転しやすいカタチではありませんが、それでも人をひきつける愛らしいデザイン。個人的には、エンジンとトランスミッションをTSI+DSGに変える一方、デザインはそのままでしばらく延命させてほしかったのですが...。
新型の噂も流れますが、果たしてニュービートルにどんな未来が待っているのか、知る由もありません。しかし、ニュービートルが刻んでくれた想い出が僕の記憶の中でこれからも生き続けることは確かなようです。