フルモデルチェンジして6代目になった新型ゴルフに試乗、その進化は期待どおりだった。
ゴルフのアイデンティティというべき太いCピラーが特徴のハッチバックスタイルを受け継ぎながら、フルモデルチェンジにふさわしく、ルーフパネル以外の外板を一新したゴルフ6。フロントマスクも、先代の優しいイメージから、シャープで精悍な印象に変わっている。その一方で、先代で大きく進化したサスペンションやエンジンなどはほぼ踏襲。技術的なハイライトは少ないものの、そのぶん熟成と洗練が大いに期待できる。そんなゴルフ6を箱根で試乗した。
ご存じのように、新型ゴルフには、1.4L"シングルチャージャー"TSIを積む「ゴルフTSIコンフォートライン」と、"ツインチャージャー"TSIの「ゴルフTSIハイライン」の2グレードが用意されている。まずは売れ筋のエントリーグレードのTSIコンフォートラインを試す。
シフトレバーやドリンクホルダーなどに先代の面影を残すものの、ホワイトのイルミネーションが美しいメーターパネルや質感の向上したセンタークラスターのおかげで上質さを増したコクピット。「格段に質感を上げた」という評価を、個人的には褒めすぎだと思うが、それにしても、これまでにも増して好感を抱く仕上がりだ。
さっそく走り出すと、前評判どおり、以前にも増してマイルドな乗り心地に舌を巻く。しなやかに動くサスペンションはフラットさを持ちあわせ、確実に快適さもアップしている。ワインディングロードでは自然なロールをともないながら、路面をとらえる印象。これぞ"猫足"! コーナーを駆け抜けるのが楽しい。
ゴルフ6の進化を実感するのはその静粛性。遮音性を高めるさまざまな工夫のおかげで、耳に届くエンジンノイズやロードノイズは明らかに小さい。122psのシングルチャージャーTSIと7速DSGの組み合わせは、先代ゴルフTSIトレンドラインと同じ内容で、低回転から活発に加速するだけのトルクを誇り、回転を上げれば高速の合流や追い越しなどでも余裕を見せる実力。新型ゴルフでは、エンジン、DSGともさらにスムーズさを増し、クルマ全体の高級感アップに一役買っている。
一方、ゴルフTSIハイラインはTSIコンフォートラインより明らかに加速が力強く、ワインディングロードをスポーティに走るには十分な性能だ。17インチタイヤを履きこなすサスペンションはコンフォートラインより少し硬めだが、快適さが損なわれることなく、スポーティさと乗り心地を見事に両立している。
TSIコンフォートラインでも充実した装備を誇るが、このTSIハイラインではアルカンターラを配したスポーツシートやパドルシフトなど、スポーツドライビングに適したアイテムが魅力的だ。
いたるところに正常進化が見てとれる新型ゴルフ。その一方で、後席や荷室のスペースは従来とほぼ同じ。ボディサイズがほぼ同じなので致し方ないが、たとえば後席のリクライニング/スライドなどの機能が採用されなかったのは残念。
とはいうものの、コンパクトカーとしての魅力は以前にも増してアップし、現時点で、最強の選択肢といっても過言ではないだろう。
ゴルフ6、期待どおりの仕上がりである。
(Text & Photo by S.Ubukata)