up!の発売が待ちきれない塩見です。突然の更新を失礼します。
up!は(特殊な市場といわれる日本に波及するかどうかは別にして)小型車に革命を起こすことが予想されるコンパクトカーですが、先日、日本ではもっとコンパクトなクルマが話題となりました。
国土交通省は軽自動車より小さい1〜2人乗りの「超小型車」の普及に向け、安全基準や技術仕様を定めた認定制度を今年度中につくる。高齢者や観光客が近距離を移動する車として使うことを想定している。日産自動車などは2人乗りの超小型電気自動車(EV)などの開発を進めており、認定制度に合わせた商品化を目指す。
超小型車は道路運送車両法で定める「軽自動車」と、原付きバイクなどの「第1種原動機付き自転車」の中間に位置付ける。排気量は125cc程度、走行能力は1日約10キロメートルとする。
今は原則として公道を走れないが、認定制度ができた後は近距離の移動用として走行を認める。6月上旬にも、自動車メーカーや自治体向けに超小型車の仕様を示す指針をまとめる。
(日経新聞<ウェブサイト>2012/5/27より引用)
スズキ・セニアカーなど、現在も高齢者向けの車両がありますが、たとえばスズキのセニアカーの分類は「ハンドル型電動車いす」で、道交法上のあつかいは歩行者です。今回、報道された超小型車は、公道を走行可能な1〜2人乗りの車両です。動力性能的には航続距離を除くとセニアカーより軽自動車に近いのでしょう。もちろん、フォルクスワーゲンだってup!よりも小さなマイクロカーをいくつも研究しているはずですし、他の主要メーカーも開発を続けているはずです。
国交省が認定制度策定を予定している「超小型車」は、かつて世界中で愛されたバブルカーとサイズとしては同じくらいです。当時と違うのは、予防/衝突安全性、経済性、動力性能......いや、見た目以外はすべて違うといったほうが早いですね。けれど、当時のバブルカーにも、本格的なジドウシャには手が届かなかった多くの人たちのモビリティを向上すべく、小さな塊にいっぱいの知恵が込められています。イセッタしかりメッサーシュミットしかり、そしてわが国のフライングフェザーしかり。
そんななか、先日訪れた石川県小松市の日本自動車博物館で、これまで実車を見たことがなかった日本の超小型車に出会うことができました。コニー・グッピーです。1961年の登場ですから戦後すぐというわけではありませんが、エンジンの排気量が当時の軽規格の半分に近いたった199ccに過ぎない軽トラです。メーカーは愛知機械工業。四輪独立懸架、トルコン式AT(1段だけど)、12Vの電装系など、とても理想主義的なクルマだったようです。同社はこのクルマより前にはオート三輪づくりをしてきたメーカーですが、満を持して四輪づくりに打って出たわけです。しかし、最高出力11psでしかなかったエンジンのパワー不足が嫌われ、とてつもなく売れず、同社は日産に吸収されてしまいます。
けれど、実車を見て思うのは、実用的な荷台を備えながらも全体的には愛らしいデザインで、たった8インチのタイヤの効果もあって、かわいらしいじゃないですか。当時、日本にはこのグッピーのように理想は高いが技術力が伴わないクルマがたくさんあったと聞きます。徳大寺有恒さんはこれをしばしば「意あって力足らず」と表現しますが、まさにその通り。ま、当時すでにスバル360のように「意あって力十分」のクルマもあるにはありましたが。
かつてクルマ製造後進国だった日本も、今やクルマ製造先進国であることは間違いありません。けれども、本当にエンジニアが出したくて出したくてたまらないクルマばかりでしょうか。もちろん、商売ですから同じプラットフォームからできるだけたくさんのモデルを出すべきなのは理解できますが、時には日本人のみならず欧米の人をもあっと驚かせる新しい価値観のクルマの登場を待ちたいです。大失敗作グッピーを今につながる糧にしてほしいです。プリウスもリーフも素晴らしいクルマですが、もっともっと! むりやりup!のこととか書きましたが、結論にはまったくフォルクスワーゲンは関係なかったですね。ま、クルマ博愛ということで!
(Text by S.Shiomi)
コニー・グッピー@日本自動車博物館
up!は(特殊な市場といわれる日本に波及するかどうかは別にして)小型車に革命を起こすことが予想されるコンパクトカーですが、先日、日本ではもっとコンパクトなクルマが話題となりました。
国土交通省は軽自動車より小さい1〜2人乗りの「超小型車」の普及に向け、安全基準や技術仕様を定めた認定制度を今年度中につくる。高齢者や観光客が近距離を移動する車として使うことを想定している。日産自動車などは2人乗りの超小型電気自動車(EV)などの開発を進めており、認定制度に合わせた商品化を目指す。
超小型車は道路運送車両法で定める「軽自動車」と、原付きバイクなどの「第1種原動機付き自転車」の中間に位置付ける。排気量は125cc程度、走行能力は1日約10キロメートルとする。
今は原則として公道を走れないが、認定制度ができた後は近距離の移動用として走行を認める。6月上旬にも、自動車メーカーや自治体向けに超小型車の仕様を示す指針をまとめる。
(日経新聞<ウェブサイト>2012/5/27より引用)
スズキ・セニアカーなど、現在も高齢者向けの車両がありますが、たとえばスズキのセニアカーの分類は「ハンドル型電動車いす」で、道交法上のあつかいは歩行者です。今回、報道された超小型車は、公道を走行可能な1〜2人乗りの車両です。動力性能的には航続距離を除くとセニアカーより軽自動車に近いのでしょう。もちろん、フォルクスワーゲンだってup!よりも小さなマイクロカーをいくつも研究しているはずですし、他の主要メーカーも開発を続けているはずです。
国交省が認定制度策定を予定している「超小型車」は、かつて世界中で愛されたバブルカーとサイズとしては同じくらいです。当時と違うのは、予防/衝突安全性、経済性、動力性能......いや、見た目以外はすべて違うといったほうが早いですね。けれど、当時のバブルカーにも、本格的なジドウシャには手が届かなかった多くの人たちのモビリティを向上すべく、小さな塊にいっぱいの知恵が込められています。イセッタしかりメッサーシュミットしかり、そしてわが国のフライングフェザーしかり。
そんななか、先日訪れた石川県小松市の日本自動車博物館で、これまで実車を見たことがなかった日本の超小型車に出会うことができました。コニー・グッピーです。1961年の登場ですから戦後すぐというわけではありませんが、エンジンの排気量が当時の軽規格の半分に近いたった199ccに過ぎない軽トラです。メーカーは愛知機械工業。四輪独立懸架、トルコン式AT(1段だけど)、12Vの電装系など、とても理想主義的なクルマだったようです。同社はこのクルマより前にはオート三輪づくりをしてきたメーカーですが、満を持して四輪づくりに打って出たわけです。しかし、最高出力11psでしかなかったエンジンのパワー不足が嫌われ、とてつもなく売れず、同社は日産に吸収されてしまいます。
けれど、実車を見て思うのは、実用的な荷台を備えながらも全体的には愛らしいデザインで、たった8インチのタイヤの効果もあって、かわいらしいじゃないですか。当時、日本にはこのグッピーのように理想は高いが技術力が伴わないクルマがたくさんあったと聞きます。徳大寺有恒さんはこれをしばしば「意あって力足らず」と表現しますが、まさにその通り。ま、当時すでにスバル360のように「意あって力十分」のクルマもあるにはありましたが。
かつてクルマ製造後進国だった日本も、今やクルマ製造先進国であることは間違いありません。けれども、本当にエンジニアが出したくて出したくてたまらないクルマばかりでしょうか。もちろん、商売ですから同じプラットフォームからできるだけたくさんのモデルを出すべきなのは理解できますが、時には日本人のみならず欧米の人をもあっと驚かせる新しい価値観のクルマの登場を待ちたいです。大失敗作グッピーを今につながる糧にしてほしいです。プリウスもリーフも素晴らしいクルマですが、もっともっと! むりやりup!のこととか書きましたが、結論にはまったくフォルクスワーゲンは関係なかったですね。ま、クルマ博愛ということで!
(Text by S.Shiomi)
コニー・グッピー@日本自動車博物館