ゴルフ7、"一軍"ジャーナリストの皆さんの試乗記がポツポツといろんなウェブサイトに出始めましたね。皆さん、異口同音によかったとおっしゃってます。よかったんでしょう、そりゃあ。ゴルフがダメだったことないですから。
ゴルフはハッチバック中興の祖。昔からFFをつくる世界中のメーカーがお手本にしています。「ゴルフに追いつけ追い越せ」を合言葉に開発するんですが(惜しいところは、ね)、めどがたった頃にゴルフがモデルチェンジしてはるか遠くへいってしまうわけです。
各社のエンジニアは、まるでゴルフは永遠に手の届かない幻なんじゃないかと思っているはずです。坂の上の雲でもあります。
かつて自動車は、特に欧州車はモデルサイクルが長く、ゴルフの場合、初代が9年、2代目が8年、3代目が6年、4代目が6年、5代目が5年、6代目が4年と、開発に要する解析技術が向上し、ライバルが追いつくのが早くなってきているためにだんだん短くなってきているものの、息の長いクルマです。
それは、それくらい引っ張ってもライバルが追いついてこないという証拠ですね。
7代目ゴルフは、予防安全技術がてんこ盛りという重量増加要素があるにもかかわらず、大幅な軽量化を実現しているとか。
小さな排気量のエンジンに過給器を付けて従来以上の動力性能を備えながら燃費も稼ぐという、巷でいまようやくトレンドになっているダウンサイジング・コンセプトを最初に大々的に展開したの はフォルクスワーゲンで、そのイメージを引っ張ったのはゴルフですが、新型では気筒休止という、実質的にはさらなるダウンサイジングみたいなコンセプトを 盛り込みました。
さらに変幻自在のプラットフォーム「MQB」を引っさげて大小さまざまなゴルフをつくることにも取り組んでいます。
気筒休止もプラットフォームの共有化も、別にフォルクスワーゲンが最初にやったわけではなく、実用化したメーカーがいくつもあります。けれど、フォルクス ワーゲンがやるとトレンドになるのが面白い。
ひとつひとつの完成度が高いのと、それらを組み合わせてパッケージングするのが上手なのでしょう。「うちのはひと味違いますよ」とPRするのがうまいということも忘れてはいけません。
先日、日本メーカーの技術系役員に話を伺った際、フォルクスワーゲンの話題になり「あそこまでよくやりますよね」と言ってました。新しい技術に積極的な姿勢にもほどがあると言わんばかり。
フォルクスワーゲンのようにグループで1000万台級のクルマを販売し、大成功している巨大メーカーが、リスクをとって新しい技術やコンセプトを取り入れるのは珍しい。
常に起死回生を目論むマツダがスカイアクティブ! と叫ぶのとはわけが違います。すごいですけどね、スカイアクティブ・テクノロジー。
長々と礼賛しましたが、事実です。
しかし、僕が本当に面白いと感じるのは、フォルクスワーゲンが歴代続けて素晴らしいゴルフを連発しても、大ヒットはしますが、同価格帯のCセグ・ハッチバックがすべてゴルフにはならないということ。プジョーもフィアット、アルファロメオもフォードもオペルもトヨタもゴルフに駆逐されるわけではありません。ずーっと同価格帯のCセグ・ハッチを作り続けています。そしてヒットもかまします。
消費者は燃費だけでクルマを選ばないし、ブランドだけで選ばないし、予防安全技術だけで選ばないのです。カッコを気に入って買う人もいるし、値引きが大きいのを狙う人もいます。しっかりしたディーラーでしか買わない人もいます。親戚がディーラーに勤めていれば、付き合いでそこから買う人もいます。また、何が理由で選んだのかまったくわからないクルマを買う人も、世の中にはいます。
ゴルフが進化すればするほど、合理的に選べばあのクラスはほとんどゴルフになってもおかしくないのに、そうはならない。げに消費者は複雑で多様。だから面白いのかもしれません。
昔ほど奇天烈なクルマを許さなくはなっていますけどね。
(Text by S.Shiomi)
ゴルフはハッチバック中興の祖。昔からFFをつくる世界中のメーカーがお手本にしています。「ゴルフに追いつけ追い越せ」を合言葉に開発するんですが(惜しいところは、ね)、めどがたった頃にゴルフがモデルチェンジしてはるか遠くへいってしまうわけです。
各社のエンジニアは、まるでゴルフは永遠に手の届かない幻なんじゃないかと思っているはずです。坂の上の雲でもあります。
かつて自動車は、特に欧州車はモデルサイクルが長く、ゴルフの場合、初代が9年、2代目が8年、3代目が6年、4代目が6年、5代目が5年、6代目が4年と、開発に要する解析技術が向上し、ライバルが追いつくのが早くなってきているためにだんだん短くなってきているものの、息の長いクルマです。
それは、それくらい引っ張ってもライバルが追いついてこないという証拠ですね。
7代目ゴルフは、予防安全技術がてんこ盛りという重量増加要素があるにもかかわらず、大幅な軽量化を実現しているとか。
小さな排気量のエンジンに過給器を付けて従来以上の動力性能を備えながら燃費も稼ぐという、巷でいまようやくトレンドになっているダウンサイジング・コンセプトを最初に大々的に展開したの はフォルクスワーゲンで、そのイメージを引っ張ったのはゴルフですが、新型では気筒休止という、実質的にはさらなるダウンサイジングみたいなコンセプトを 盛り込みました。
さらに変幻自在のプラットフォーム「MQB」を引っさげて大小さまざまなゴルフをつくることにも取り組んでいます。
気筒休止もプラットフォームの共有化も、別にフォルクスワーゲンが最初にやったわけではなく、実用化したメーカーがいくつもあります。けれど、フォルクス ワーゲンがやるとトレンドになるのが面白い。
ひとつひとつの完成度が高いのと、それらを組み合わせてパッケージングするのが上手なのでしょう。「うちのはひと味違いますよ」とPRするのがうまいということも忘れてはいけません。
先日、日本メーカーの技術系役員に話を伺った際、フォルクスワーゲンの話題になり「あそこまでよくやりますよね」と言ってました。新しい技術に積極的な姿勢にもほどがあると言わんばかり。
フォルクスワーゲンのようにグループで1000万台級のクルマを販売し、大成功している巨大メーカーが、リスクをとって新しい技術やコンセプトを取り入れるのは珍しい。
常に起死回生を目論むマツダがスカイアクティブ! と叫ぶのとはわけが違います。すごいですけどね、スカイアクティブ・テクノロジー。
長々と礼賛しましたが、事実です。
しかし、僕が本当に面白いと感じるのは、フォルクスワーゲンが歴代続けて素晴らしいゴルフを連発しても、大ヒットはしますが、同価格帯のCセグ・ハッチバックがすべてゴルフにはならないということ。プジョーもフィアット、アルファロメオもフォードもオペルもトヨタもゴルフに駆逐されるわけではありません。ずーっと同価格帯のCセグ・ハッチを作り続けています。そしてヒットもかまします。
消費者は燃費だけでクルマを選ばないし、ブランドだけで選ばないし、予防安全技術だけで選ばないのです。カッコを気に入って買う人もいるし、値引きが大きいのを狙う人もいます。しっかりしたディーラーでしか買わない人もいます。親戚がディーラーに勤めていれば、付き合いでそこから買う人もいます。また、何が理由で選んだのかまったくわからないクルマを買う人も、世の中にはいます。
ゴルフが進化すればするほど、合理的に選べばあのクラスはほとんどゴルフになってもおかしくないのに、そうはならない。げに消費者は複雑で多様。だから面白いのかもしれません。
昔ほど奇天烈なクルマを許さなくはなっていますけどね。
(Text by S.Shiomi)