新しいシロッコは、まるでスーパースポーツに乗っているような、そんな気分のさせてくれる。いや、もしかしたら、スーパースポーツといい切って構わないのかもしれない。VWから久々に登場したクーペは、そのエクステリアデザインが自ずと語るように、かなり硬派でアグレッシブなクルマだ。
もう様々なりポートで、ほとんどの方はその概要をご存知だろう。ベースになったのは、ゴルフ5のプラットフォームを使う、オープンモデルのイオス。それをVW得意のモジュラー設計で、クーペ化したものだ。日本ではゴルフ6デビュー後に市場導入される形となったが、本国では、初代シロッコ同様、ゴルフの前に発表され、水平基調の新しいVWの顔を世に知らしめている。
そのボディデザインのコンセプトは、'06年のパリサロンに登場したショーモデル、"IROC"(アイロック)で示されていたもので、前のVWデザインのチーフデザイナーであるムルナート・ギュナークが率いた社内スタッフの手になるものだ。これを、VWグループのデザインの総責任者となったウォルター・デ・シルヴァが、そのフロントのみを、今後展開する計画のブランドフェー
スに改めたものといえる。
ロー&ワイドなボディは、視覚的にはそうでもないが、かなりデカイ。全長4,255㎜、全幅1,810㎜、全高1,420㎜というディメンションで、もうとてもコンパクトとはいい難い。スポーティな印象を強く打ち出すため、厚いロワボディに薄いキャビンを載せ、そのキャビンはルーフを後方に伸ばしつつ、横方向を次第に絞り込んで、ロワボディのワイド感を引き出すといったアプローチを用い、立体的な造形を作り出している。キャビンを後方に行くにしたがって絞り込むというデザインは、リアシートを2座席と割り切ることで可能となったものだが、見方を変えれば、クーペではあってもちゃんと大人4人分の空間を確保するという実用性も考慮したものといえ、スポーティさと実用性という相反する要求を両方満たしたなかなかのグッドデザイン。ただし、この手法はシロッコが初めてではなく、ボルボのC30が先に採用、実現していたものだ。
これは推測にとどまるが、このクーペではあってもちゃんと大人4人分の空間を確保するという実用性こそが、VWの狙い所ではないだろうか。知っての通り、かつてはパーソナルユースを前提とする市場でもてはやされたクーペも、このところユーザーニーズの多様化を背景に衰退の一途。その市場は、多用途性の高いワゴン、ミニバン、そしてSUVが大半を占めるようになった。そうした流れが続いたことが、おそらくVWに挑戦を決意させたものと思われる。VWは、イザとなればちゃんと大人4人が座れるという実用性を与えれば、クーペ市場の掘り起こしができると見たのだ。なぜなら、それはスタイリッシュかつスポーティな2ドアハッチという存在ともなり得るからで、価格設定さえ適切なものであれば、老若男女を問わずの幅広支持が得られる可能性もあるからだ。ミニバンやSUVのメリットとデメリットが知り尽くされたいまだからこそ、クーペに再びスポットライトが当たると読んだのではないだろうか。これが欧州ナンバーワン・メーカーの深謀遠慮!?
これは推測にとどまるが、このクーペではあってもちゃんと大人4人分の空間を確保するという実用性こそが、VWの狙い所ではないだろうか。知っての通り、かつてはパーソナルユースを前提とする市場でもてはやされたクーペも、このところユーザーニーズの多様化を背景に衰退の一途。その市場は、多用途性の高いワゴン、ミニバン、そしてSUVが大半を占めるようになった。そうした流れが続いたことが、おそらくVWに挑戦を決意させたものと思われる。VWは、イザとなればちゃんと大人4人が座れるという実用性を与えれば、クーペ市場の掘り起こしができると見たのだ。なぜなら、それはスタイリッシュかつスポーティな2ドアハッチという存在ともなり得るからで、価格設定さえ適切なものであれば、老若男女を問わずの幅広支持が得られる可能性もあるからだ。ミニバンやSUVのメリットとデメリットが知り尽くされたいまだからこそ、クーペに再びスポットライトが当たると読んだのではないだろうか。これが欧州ナンバーワン・メーカーの深謀遠慮!?
が、しかし、このシロッコ、率直にいって使い勝手はよくない。運転席へのアクセスも、ラクではない。まず、ドアが大きくて重い。それにサイドシルに幅があって、運転席が遠い。全高が低いので、乗り込む時は当然上半身をひねって、さらに頭まで大きく傾けなければならない。着座位置が低いので、どうしてもドンッという感じで腰を落とすことになる。なかなかスマートに滑り込めないのだ。もし、右隣にクルマが駐まっていたりすると、ぶつけないようドアの開閉には慎重になってしまうし、もしその開閉角度が制限されたりすると、乗り降りにかなり苦しい姿勢が要求される。
リアシートはさらにタイヘン。フロントシートはウォークイン機構を備えるものの、全高が低いために、必然的に腰をかがめて潜り込む感じとなり、乗り込んでから身体の向きを変え、ようやく腰を落とすということになる。リアシートの居心地は、座面、背もたれの角度がよく、空間もシッカリと確保されていて、予想以上といえるが、グリップがなく、身体を支えづらいのが難点。なにより、サイドウインドーが後方に行くに従い、上下方向の幅が絞り込まれるため、視界が開けず、穴蔵に閉じ込められたような感覚になるのがツライ。シートのヒップポイントが前席に比べれば高く、それに中央寄りに座ることもあって、前方視界だけは確保されていることが唯一の救いだろうか。
もうひとついえば、通常の状態で312Lの容量があるというラゲッジスペースだが、ハッチ開口部の下端が高いこと、さらには荷室フロアまでかなりの深さがあるため、少し重いものの出し入れには不向き。
とはいえ、走り出してしまえば、こうした使い勝手の悪さは完全に消し飛んでしまう。というか、「クーペなんだから」と吹っ切れてしまう。そう、それほど、シロッコの走りには目覚ましいものがあるのだ!
ついつい、ボディデザインと、それに起因する使い勝手ウンヌンばかりを語ってしまったが、次回、Part2は走りについて考察してみる。
(Text by M.Ogura)