まもなく日本で販売が始まる「ザ・ビートル」を国内で試乗。1.2 TSI+7速DSGの走りはいかに?
ザ・ビートルがいよいよ発売になる。8speed.netでは、すでに
これまでショー会場やイベントスペースなどで何度も見たはずのザ・ビートルだが、あらためて屋外で眺めると、「男前になったな!」というのが第一印象。僕自身はニュービートルの柔らかいデザインが好きだったし、そのデザインに惚れて、ニュービートル・カブリオレを購入した過去もある。
そんな元ニュービートルオーナーから見ると、ザ・ビートルは似て非なるデザインの持ち主である。ニュービートルの後継モデルではなく、あくまで原点はクラシックビートルなのだ。とくに、フラットになったルーフラインとそこからなだらかに落ちるテールゲートを見ると、クラシックビートルを強く意識させられるはず。クラシックビートルが身近にあった人ならなおさらだろう。
日本では、写真のザ・ビートル デザイン レザーパッケージが先に導入され、ファブリックシート仕様のベースグレードは遅れて上陸することになっている。ダッシュボードやドアのインナーパネルなどがボディ同色にペイントされるのは「デザイン」仕様に共通の特徴だ。
一方、ダッシュボードのグローブボックスが上ヒンジで開くとか、Bピラーに後席用の"つり革"が付くなど、クラシックビートル時代のアイテムを目にすると心がなごむ。一輪挿しが見あたらないのは残念だが......
運転席に陣取ると、ボディ同色にペイントされたダッシュパネルがなんとも可愛らしく新鮮。ザ・ビートルといい、up!といい、こういう演出はうれしいものだ。
一方、ニュービートルに比べると、良い意味でも悪い意味でも運転席からの眺めが普通になった。ニュービートルはドライバーからフロントウインドーの付け根までが異様に遠く、そのせいか車両感覚が掴みにくかった。その無駄加減がなんともニュービートルらしいともいえるのだが、運転に自信のない人なら、それだけで尻込みするかもしれない。
そういう意味では、このザ・ビートルはより幅広い人に楽しんでもらえるクルマになったといえるのだが、反面、強烈な個性が失われたのがすこし寂しい気もする。
そんなザ・ビートルだが、思わず笑ってしまいそうな無駄を発見。無駄に大きな燃料計! 回転計が1000回転を3分割した中途半端な目盛りというのも理科系の僕には理解しがたい。これがゴルフだったらまた話は別だが、ザ・ビートルならこんな演出も許せてしまう。
ザ・ビートルのドライビングポジションは至極まっとう。一方、後席は、大人にとってはやや窮屈なうえ、シートバックの角度が直角に近いので、くつろぐにはほど遠い。
荷室は必要十分なスペースが確保されている。分割可倒式の後席を倒せばスペースを拡大することも可能だ。
前置きはこのくらいにして、さっそく走りをチェックする。ザ・ビートル デザインに搭載されるのはたった1.2LのSOHC8バルブエンジン。見た目も、他のTSIエンジンに比べるとなんとも頼りない印象だ。
でも心配ご無用! これがよく走るのだ。最先端の直噴ガソリンターボエンジンは、電子制御のウェイストゲートバルブを採用したこともあって、低回転からレスポンス良く、豊かなトルクを発揮する。そういえば、ニュービートルに搭載されていたのは、2.0LのSOHC8バルブエンジンだったが、それに比べても段違いに力強いし、明らかにクルマの動きも軽い。高速でも、日本のスピードレンジであればこれで十分と思える加速性能を示す。
7速DSGは相変わらずシフトが素早く、動きもスムーズだ。ただ、Dレンジではあっというまに7速までシフトアップするため、加速しようとそこからアクセルペダルを軽く踏んだだけでは反応が鈍い場合がある。もちろん、そんなときにはアクセルペダルを深めに踏んでやればいいのだが、街中では運転がせかせかしてしまうのが惜しいところだ。Sレンジやマニュアルモードを上手く活用すれば改善できると思うが......。
気になったのは乗り心地。レザーパッケージ仕様では215/55R17タイヤが標準装着となるが、荒れた路面ではリアからゴツゴツと突き上げられる印象で、目地段差を越えたときのショックも持てあまし気味だ。走行距離がまだ少ないので、距離が伸びれば多少改善される可能性はあるが......。さらに、リアまわりのボディ剛性がやや足りない印象を受けた。
街中と高速中心の試乗では、とくに直進性に不安はなかったが、クルマ好きとしてはリアはトーションビームではなく、ハイパワーエンジン搭載モデルと同じ4リンクサスペンションを奢ってほしかった。
他にも、同じエンジンを積むゴルフTLに比べると、キャビンに届くエンジンのノイズは大きめなど、細かい部分では気になることもある。けれども、総合的には良くまとまったクルマであり、デザインに惚れて、何の予備知識もなく買ってしまったとしても、後悔することはないだろう。
個人的には、16インチタイヤを履くファブリックシート仕様に興味津々で、それにオプションのバイキセノンヘッドライトを付けて、設定のないパドルシフトはなんとかして......といまから妄想を膨らませているのだが、それはさておき、いろんな意味でニュービートルよりもさらに幅広い人々に受け入れらそうなザ・ビートル。日本でどのくらい人気が出るのか、その行方を見守りたい。
(Text & Photos by S.Ubukata)
ザ・ビートルがいよいよ発売になる。8speed.netでは、すでに
これまでショー会場やイベントスペースなどで何度も見たはずのザ・ビートルだが、あらためて屋外で眺めると、「男前になったな!」というのが第一印象。僕自身はニュービートルの柔らかいデザインが好きだったし、そのデザインに惚れて、ニュービートル・カブリオレを購入した過去もある。
そんな元ニュービートルオーナーから見ると、ザ・ビートルは似て非なるデザインの持ち主である。ニュービートルの後継モデルではなく、あくまで原点はクラシックビートルなのだ。とくに、フラットになったルーフラインとそこからなだらかに落ちるテールゲートを見ると、クラシックビートルを強く意識させられるはず。クラシックビートルが身近にあった人ならなおさらだろう。
日本では、写真のザ・ビートル デザイン レザーパッケージが先に導入され、ファブリックシート仕様のベースグレードは遅れて上陸することになっている。ダッシュボードやドアのインナーパネルなどがボディ同色にペイントされるのは「デザイン」仕様に共通の特徴だ。
一方、ダッシュボードのグローブボックスが上ヒンジで開くとか、Bピラーに後席用の"つり革"が付くなど、クラシックビートル時代のアイテムを目にすると心がなごむ。一輪挿しが見あたらないのは残念だが......
運転席に陣取ると、ボディ同色にペイントされたダッシュパネルがなんとも可愛らしく新鮮。ザ・ビートルといい、up!といい、こういう演出はうれしいものだ。
一方、ニュービートルに比べると、良い意味でも悪い意味でも運転席からの眺めが普通になった。ニュービートルはドライバーからフロントウインドーの付け根までが異様に遠く、そのせいか車両感覚が掴みにくかった。その無駄加減がなんともニュービートルらしいともいえるのだが、運転に自信のない人なら、それだけで尻込みするかもしれない。
そういう意味では、このザ・ビートルはより幅広い人に楽しんでもらえるクルマになったといえるのだが、反面、強烈な個性が失われたのがすこし寂しい気もする。
そんなザ・ビートルだが、思わず笑ってしまいそうな無駄を発見。無駄に大きな燃料計! 回転計が1000回転を3分割した中途半端な目盛りというのも理科系の僕には理解しがたい。これがゴルフだったらまた話は別だが、ザ・ビートルならこんな演出も許せてしまう。
ザ・ビートルのドライビングポジションは至極まっとう。一方、後席は、大人にとってはやや窮屈なうえ、シートバックの角度が直角に近いので、くつろぐにはほど遠い。
荷室は必要十分なスペースが確保されている。分割可倒式の後席を倒せばスペースを拡大することも可能だ。
前置きはこのくらいにして、さっそく走りをチェックする。ザ・ビートル デザインに搭載されるのはたった1.2LのSOHC8バルブエンジン。見た目も、他のTSIエンジンに比べるとなんとも頼りない印象だ。
でも心配ご無用! これがよく走るのだ。最先端の直噴ガソリンターボエンジンは、電子制御のウェイストゲートバルブを採用したこともあって、低回転からレスポンス良く、豊かなトルクを発揮する。そういえば、ニュービートルに搭載されていたのは、2.0LのSOHC8バルブエンジンだったが、それに比べても段違いに力強いし、明らかにクルマの動きも軽い。高速でも、日本のスピードレンジであればこれで十分と思える加速性能を示す。
7速DSGは相変わらずシフトが素早く、動きもスムーズだ。ただ、Dレンジではあっというまに7速までシフトアップするため、加速しようとそこからアクセルペダルを軽く踏んだだけでは反応が鈍い場合がある。もちろん、そんなときにはアクセルペダルを深めに踏んでやればいいのだが、街中では運転がせかせかしてしまうのが惜しいところだ。Sレンジやマニュアルモードを上手く活用すれば改善できると思うが......。
気になったのは乗り心地。レザーパッケージ仕様では215/55R17タイヤが標準装着となるが、荒れた路面ではリアからゴツゴツと突き上げられる印象で、目地段差を越えたときのショックも持てあまし気味だ。走行距離がまだ少ないので、距離が伸びれば多少改善される可能性はあるが......。さらに、リアまわりのボディ剛性がやや足りない印象を受けた。
街中と高速中心の試乗では、とくに直進性に不安はなかったが、クルマ好きとしてはリアはトーションビームではなく、ハイパワーエンジン搭載モデルと同じ4リンクサスペンションを奢ってほしかった。
他にも、同じエンジンを積むゴルフTLに比べると、キャビンに届くエンジンのノイズは大きめなど、細かい部分では気になることもある。けれども、総合的には良くまとまったクルマであり、デザインに惚れて、何の予備知識もなく買ってしまったとしても、後悔することはないだろう。
個人的には、16インチタイヤを履くファブリックシート仕様に興味津々で、それにオプションのバイキセノンヘッドライトを付けて、設定のないパドルシフトはなんとかして......といまから妄想を膨らませているのだが、それはさておき、いろんな意味でニュービートルよりもさらに幅広い人々に受け入れらそうなザ・ビートル。日本でどのくらい人気が出るのか、その行方を見守りたい。
(Text & Photos by S.Ubukata)