マイナーチェンジした「ゴルフ」をモータージャーナリストの河村康彦さんが試乗。その進化のほどは?
誰もがその名を知る輸入車の雄ーーまさにそんな表現があてはまるフォルクスワーゲン・ゴルフに、大幅なリファインの手が加えられた。
確かに、すべての発光源をLED化したリアコンビネーションランプのグラフィックや前後バンパーの造形に変更が加えられたり、GTIではフロントグリル下部を横切る特徴的な赤いラインが、貫通したヘッドライトレンズ内で跳ね上がるといった、外観変更点の見どころも紹介をされている。
複数が用意されたグレード中からテストドライブのためにまずチョイスしたのは、比較的早期の日本導入が期待出来そうな、ガソリンエンジンを搭載するハッチバックボディの「ハイライン」。
もちろん、コネクティビティという点では、手持ちのスマートフォンとの接続で、Apple CarPlay やAndroid Autoを車載のインフォテイメントシステムに統合することなども可能になっている。
もっとも、そんな新エンジンが7速DSGとの組み合わせで生み出す動力性能は、これまでお馴染みの1.4 TSI+7速DSGのそれと「黙って乗せられてしまえば区別ができない」という印象の持ち主でもあった。
こちらも最高出力値が10ps上乗せされたものの、テストフィールドが一般道に限られ、ピークパワーをフルに確かめる機会が少なかったこともあって、実感をする力強さは「従来同様」というのが正しい表現。ちなみに、そんなGTIはMT仕様で乗るのが最高! というのも改めての実感。シフトフィールが抜群で、その操作そのものも"快感"のひとつと受け取ることができたからだ。
正確なハンドリング感覚やフラットな乗り味など、ゴルフならではの走りの美点はもちろん最新モデルでもしっかり踏襲。これまでの財産を守りつつ、ハイテク技術の新時代への対応を見事にやり遂げたのが、最新のゴルフシリーズというわけだ。
誰もがその名を知る輸入車の雄ーーまさにそんな表現があてはまるフォルクスワーゲン・ゴルフに、大幅なリファインの手が加えられた。
1974年に誕生した初代モデルから数えて7代目となる現行ゴルフのデビューは2012年。それから4年あまりが経過をしたタイミングでの今回のリファインは、だからこのモデルのライフ中では、最大規模になると考えられるもの。
にもかかわわらず、国際試乗会の基点となった地中海はマヨルカ島の空港に並べられた最新モデルを一見しての印象は、正直なところ「これまでと、あまり変わり映えしないナ......」というものだった。
確かに、すべての発光源をLED化したリアコンビネーションランプのグラフィックや前後バンパーの造形に変更が加えられたり、GTIではフロントグリル下部を横切る特徴的な赤いラインが、貫通したヘッドライトレンズ内で跳ね上がるといった、外観変更点の見どころも紹介をされている。
が、それでも全体の雰囲気はあくまでも「ゴルフそのもの」だ。むしろ、表面的なイメージ変更は極力抑えられ、これまで同様の印象が強く演じられているようにも思えたのは、これまでのゴルフ7のデザインに対する開発陣の自信の表れでもあるはずだ。
複数が用意されたグレード中からテストドライブのためにまずチョイスしたのは、比較的早期の日本導入が期待出来そうな、ガソリンエンジンを搭載するハッチバックボディの「ハイライン」。
さっそくドライバーズシートへと乗り込むと、即座に「あ、今回注目をしてほしいのは、むしろこちらなんだナ」と教えられることに。そこには、これまでのゴルフでは目にすることのなかった、フルバーチャル式のメーターや、画面が大型化されたことが一目瞭然の、最新のマルチメディアシステムが装備されていたからだ。
後に確認したところ、試乗車にオプション装着をされていた電子制御式可変減衰力ダンパー「DCC」や、パノラミック・サンルーフなどとともに、それらはいずれもオプションアイテムであることが判明。
が、新たに歩行者の検知機能が加えられた"シティエマージェンシーブレーキ"や、「60km/h以下での半自動運転を実現」と謳われるゴルフでは初採用となる渋滞追従支援システムの「トラフィックアシスト」など、昨今デビューした最新ライバルにも勝るとも劣らない充実のドライバーアシスト装備を含め、このところ急速な発達を遂げている最新の電子技術を、フルモデルチェンジの機会を待たずに設定した点は大いに評価に値をする。
そう、今度のゴルフでは新車発注時に豊富なオプションリストの中からチョイスをすることで、これまでにはない"デジタル・ゴルフ"へと仕上げることも可能になったのだ。
もちろん、コネクティビティという点では、手持ちのスマートフォンとの接続で、Apple CarPlay やAndroid Autoを車載のインフォテイメントシステムに統合することなども可能になっている。
ところで、そんな最新のゴルフ ハイラインが搭載するターボ付きの直噴エンジン、すなわちTSIがリファインを受けているのも見逃すことができないポイントだ。具体的には、これまでの1.4Lユニットをベースに、ピストンストローク延長による104ccの排気量アップが行われ、最高出力が10ps上乗せの150psへと改められているのだ。
このリファインは、昨今のフォルクスワーゲンが提唱をする"ライトサイジング"のコンセプトに基づいたもの。カタログ燃費のみにフォーカスをした「行き過ぎたダウンサイジング」は、実走行での燃費を低下させるということから、改めて"正しい排気量"を採用しようというのが、このコンセプトの狙いどころだ。
ということで、今回テストドライブを行ったモデルが積む心臓は、従来の1.4 TSIから1.5 TSIへと改められたもの。ただし、実はその"真打ち"となるのは、この先の延長上に控えている、さらなる効率化を求めたエンジンだ。
2016年に開催された「国際エンジンシンポジウム」で発表された、量産エンジン初の可変ジオメトリー式ターボを採用し、ミラーサイクルとより高い圧縮比を組み合わせた「EA211型TSI evo」と呼ばれるユニットがそれ。今回の試乗会には間に合わなかったものの、この最新エンジンが近い将来ゴルフに搭載されると明らかにされた。今回テストドライブを行った1.5Lモデルが積むのは、そこに向けての布石が打たれた心臓なのだ。
もっとも、そんな新エンジンが7速DSGとの組み合わせで生み出す動力性能は、これまでお馴染みの1.4 TSI+7速DSGのそれと「黙って乗せられてしまえば区別ができない」という印象の持ち主でもあった。
日常の街乗りシーンはもちろん、ワインディングロードをちょっとスポーティに駆け抜けたいといった場合でも、十分パワフルなのは従来と同様。DSGとのマッチングも、スタートの瞬間から文句ナシ。こうして、これまでの1.4Lと印象が近いのは、最高出力は上乗せされても最大トルク値は変わらず、その発生回転数が同じであることからもむしろ当然かもしれない。
一方、同時でテストドライブが行えたGTIの走りも、相変わらずゴキゲンだった。
こちらも最高出力値が10ps上乗せされたものの、テストフィールドが一般道に限られ、ピークパワーをフルに確かめる機会が少なかったこともあって、実感をする力強さは「従来同様」というのが正しい表現。ちなみに、そんなGTIはMT仕様で乗るのが最高! というのも改めての実感。シフトフィールが抜群で、その操作そのものも"快感"のひとつと受け取ることができたからだ。
正確なハンドリング感覚やフラットな乗り味など、ゴルフならではの走りの美点はもちろん最新モデルでもしっかり踏襲。これまでの財産を守りつつ、ハイテク技術の新時代への対応を見事にやり遂げたのが、最新のゴルフシリーズというわけだ。
(Text by Y.Kawamura)