少なさこそが豊かさだ! 軽量化とマニュアルトランスミッションにより、走行性能に優れたマシンへと進化した「Porsche 911 Carrera T」を徹底テスト。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

画像1: 【Auto Bild】911 Carrera Tを徹底テスト

ダイエットとマニュアルトランスミッション。この組み合わせが911 Carrera Tを真のドライビングマシンへと変貌させる。われわれは、この911を愛好家たちのためにフルテストした。

たった一文字。それでも、その意味は計り知れない。Porscheの名に刻まれた“T”は、何十年にもわたり特別な響きを持ってきた。もっとも911 Carreraにおける“T”は、形式上は“Touring”の略に過ぎない。言葉としては平凡だ。

だがその略称には豊かな歴史がある。そして992.2世代の新型911 Carrera Tにおいては、特別な意味を持つ。Porscheは「とりわけピュアなドライビング体験」「とりわけスポーティな装備」と語る。

価格に妥協はない

最重要ポイントはここだ。通常のPDKオートマチックではなく、6速マニュアルギアボックスが搭載される。少ないほうが多い? いや、それでは表現が足りない。むしろ“T”には「トップ・カレラ」という名がふさわしい。“隠れた名車”“ドライビングマシン”という表現のほうが、この新型911 Carrera Tの本質を正確に捉えている。

その理由は、テストの第一印象から明らかになる。欠点はひとつだけ。価格だ。オートマチックを“あえて”省き、専用装備で“ピュア”を強調し、標準911 Carrera比で40kg軽量化する。そのすべてに追加コストが発生する。スポーツシートや可変ステアリングなどのオプションで5356ユーロが加算され、テスト車は合計15万2645ユーロとなった。

圧倒的グリップと強力なブレーキ

最新の運転支援システムが満載、というわけではない。だが問題ない。911 Carrera Tは機械的な完成度で安全性を確保する。すなわち、驚異的なグリップ、圧巻の横安定性、卓越した路面コンタクト、そして極めて鋭いブレーキ性能だ。

画像: 圧倒的グリップと強力なブレーキ

数値で示そう。100km/hから完全停止まで31.3m。しかも熱が入った状態でも再現性は高く、ペダルフィールは精緻そのもの。カーボンではなく、従来型のスチールディスクブレーキでこれを実現している。

エンジン水平対向6気筒ツインターボ
排気量2981㏄
最高出力290kW (394hp)/6500rpm
最大トルク450Nm/2000rpm
最高速295km/h
トランスミッション6速マニュアルトランスミッション
駆動方式後輪駆動
タイヤサイズ(F-R)245/35R20-305/30R21
タイヤ銘柄ピレリ Pゼロ NO
燃費9.5km/L
燃料タンク84L (標準63L)
トランク容量373L+135L(フロント)
価格146,800(約2770万円)ユーロ
テスト車価格152,644(約2820万円)ユーロ

セッティングは完璧

911ならではのメカニズムが、この路面との親密な関係を生む。911 Carrera Tにはリヤアクスルステアリング、インテリジェント・トルクベクタリング、そしてわずかに硬められたスポーツサスペンション(短いスプリング付き)が標準装備される。ダンパーは伸び側・縮み側ともに可変制御式だ。その結果、911 Carrera Tとアスファルトは完全に結びつく。両者は切り離せない。

後輪操舵は高速域でも遅れなくスムーズに向きを変える。トルクベクタリングは明確に感じ取れるが、同時に穏やかなノーズの入りを生む。そこに完璧に調律されたステアリングが加わる。

画像: セッティングは完璧

センター付近は軽やかで、舵角増大に応じた適切なギア比、最適なパワーアシスト。300km/h近い速度域でも、911 Carrera Tは俊敏で、応答性が高く、正確で、かつ安定している。指先で修正し、操れる。これこそがドライビングプレジャーだ。セッティングには文句なしのA評価を与える。

二面性を持つボクサーエンジン

エンジンにも最高評価を与える。3L水平対向6気筒は高回転を好み、低回転でも扱いやすく、中回転域では豊かなトルクを発揮する。出力とトルクは力強く、機械音は控えめかつリアル。排気音は負荷や回転数、ドライブモードによって、重厚にも、うねるようにも変化する。

信じがたいことに、ターボエンジンの奥には自然吸気の猛獣が潜んでいる。6800rpmを超えたあたりで、ほんの数百回転の間、6気筒は再び一段と荒々しく、激しく咆哮する。

画像: 二面性を持つボクサーエンジン

動力性能は驚異的ではない

ただし冷静に見れば、現在ではコンパクトな5ドア車でも394PSを発揮する時代だ。車重1518kgの911 Carrera Tは、十分に速いが、驚異的というほどではない。

0-100km/hは4.6秒、200km/h到達は15.2秒。参考までに、兄貴分のTurbo Sはその半分の時間で達する。

ポルシェ 911 カレラ T評価
ボディ15点満点中7点
クオリティ20点満点中19点
シート/シートポジション30点満点中28点
装備15点満点中10点
エンジン特性30点満点中26点
走行性能50点満点中33点
パワーウェイト30点満点中18点
トランスミッション/シフト20点満点中16点
サウンド20点満点中17点
乗り心地20点満点中18点
走行安全性20点満点中18点
ハンドリング50点満点中42点
ラップタイム50点満点中35点
ステアリング30点満点中28点
ブレーキ40点満点中29点
魅力10点満点中7点
燃費20点満点中14点
価格30点満点中15点
総合評価500点満点中380点

真の歓びはギアボックスにある

だが、このクルマの核心はギヤボックスだ。ギヤ比はロングで、回転域を丁寧に引き出す忍耐を求める。クラッチは確かな踏力が必要で、俊敏な加速には正確な操作が不可欠だ。少しハードルが高いのか。

画像: 真の歓びはギアボックスにある

答えはノーだ。6速マニュアルこそ911 Carrera T最大の歓びだ。クラッチがつながる感触、ダウンシフト時にボタン操作で完璧に合わされるブリッピングシステム、最大トルクに合わせて自らシフトポイントを決める快感。

ここでドライバーはエンジニアであり、機械を指揮する指揮者となる。おそらく現在入手可能な中で、最も官能的なクルマのひとつだ(Porscheの別世界的なGTモデルを除けば)。あえて注文をつけるなら、シフトゲートの節度感がもう少し明確なら、911 Carrera Tの魅力はさらに高まる。

快適性も犠牲にしていない

スポーティさ一辺倒ではない。911 Carrera Tは穏やかにも走れる。風切り音の遮断性は予想以上に高く、直進安定性も優秀。低回転で巡航すれば、高価なプレミアム燃料も節度をもって消費する。

最も柔らかい減衰設定では、小さな凹凸を滑らかにいなし、大きな入力に対してもリヤが一瞬軽く跳ねる程度で収める。低くマウントされたスポーツバケットシートは、調整幅こそ限られるが、身体をしっかりと支える。ここでも言える。少ないことは、確実に多い。

AUTO BILDテストスコア:1.8

絶対的な動力性能では上位モデルに及ばない。それでも「Carrera T」は、911ラインアップの中でもトップクラスの存在だと断言する。通と腕利きのドライバーにとって、これほど報われるモデルはない。プロセスに主体的に関わり、911本来のピュアなドライビングフィールを、ことさら官能的に味わえる一台だ。

(Text by Jan Horn and Dennis Heinemann / Photos by Tom Salt [AUTO BILD])

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