Porscheは2025年9月16日、開発中の「Cayenne Electric」に関して、従来型の試作車中心の開発手法から大きく転換し、デジタルとリアルを融合させた新しいプロセスを採用していることを明らかにした。新型となるフル電動SUVは年末に発表予定で、既存のガソリン車およびハイブリッド車と並行して販売される計画である。

デジタル主導の開発プロセス
今回の開発では、従来必要だった「コンストラクション」段階を省略し、約120台分に相当する試作車をバーチャルな「デジタル・プロトタイプ」で代替。設計段階からAIやシミュレーションを駆使し、ニュルブルクリンクや市街地走行を精密に再現したルートを活用することで、現実に近い負荷条件を仮想空間上で検証できるようにした。この結果、従来比で開発期間を20%短縮するとともに、試作車製作に伴う資源消費を抑制している。
ヴァイザッハ開発センターには、新たに複合試験ベンチが導入された。これは駆動系、バッテリー、エネルギーマネジメント、充電システムを統合的に検証できる装置で、4基の強力な同期モーターにより路面状況や加減速抵抗、タイヤスリップ、さらには気候条件までも忠実に再現可能という。テストでは、デジタルツインで得られたデータとリアルな測定値をリアルタイムで照合し、高精度なシミュレーションと実走データの乖離を最小限に抑えている。

高精度なデジタル開発が進んでも、最終的な仕上げは熟練テストドライバーの役割が不可欠だ。Porscheのエンジニアはサーキットを含むあらゆる走行シーンで実車テストを実施し、走行ダイナミクスや制御システムを人間の感覚で最適化している。とくに充電性能の安定確保は重点課題であり、どのような走行条件から停止しても常に急速充電に備えられるよう調整が行われている。
過酷な環境下での実走試験
開発段階では極限環境での試験も実施。アメリカ・デスバレーや中東での50℃近い高温下テスト、北欧でのマイナス35℃に及ぶ低温下テストを通じて、冷暖房やバッテリーの熱マネジメント、トラクション性能などを検証した。いずれの条件下でも迅速な充電が可能であることが求められ、Porscheは他社以上に厳格な基準を設けている。

さらに、市街地や高速道路を中心とした日常的な走行試験では、数か月の間に15万km以上を走破。こうしたデジタルとリアルの組み合わせにより、開発は効率化されると同時に精度も高まり、ポルシェは従来以上に信頼性の高い電動SUVを市場に送り出す準備を進めている。






次期Cayenne Electricの正式発表は年末に予定されており、同社の電動化戦略の新たな柱として注目される。
(Text by 8speed.net Editorial Team / Photos by Porsche AG)
※本記事はプレスリリースをもとに、一部AIツールを活用して作成。編集部が専門知識をもとに加筆・修正を行い、最終的に内容を確認したうえで掲載しています。