「911(992.2)GT3」は自然吸気エンジンにこだわる。ディーラーでは、2025年より911 GT3 RSと911 S/Tのパーツを使用した911 GT3のフェイスリフトモデルが販売される予定。しかし、驚くべきことが!

画像1: 【Auto Bild】改良型「911 GT3」のすべて

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

改良型911 GT3が登場した。いちばんの疑問にすぐに答えよう。そう、新型911 GT3は、われらが愛する4L自然吸気エンジンを維持している! E-ターボ? ハイブリッド? そんなものはフェイスリフトされた911 GT3にはない!

最も重要な変更点は?

  • 911 GT3と911 GT3ツーリングは同時に登場
  • 510PS、450Nmの4.0L自然吸気エンジン
  • マニュアルまたはPDK
  • 911 GT3に初めてヴァイザッハパッケージとマグネシウムホイールを搭載
  • 911 GT3ツーリングはオプションで4シーター仕様も選択可能
  • 911 GT3ツーリング用の軽量パッケージ
  • 新しいカーボンシェルフォールディングバケットシート
  • ベース価格は209,000ユーロ(約3,450万円)から

エンジンに関する疑問が晴れたところで、992.2 GT3について詳しく見ていこう。なぜなら、改良された911 GT3の特徴は細部に現れているからだ。1999年を振り返ってみよう。ポルシェは996 GT3として、サーキット走行を明確に目的とした911を発表した。軽量で、妥協のないモデルだった。ここから911 GT3のサクセスストーリーが始まる。

ポルシェ911 GT3の25年

25年後、911 GT3は4世代目となり、最新モデルは2025年モデルイヤーに向けてフェイスリフトが行われる。992 GT3が発表されたのはわずか3年前、992.2世代の改良型911が発表されたのは数か月前のことだが、ポルシェはアクセルを踏み続けている。このタイミングの理由は単純だ。ますます厳しくなる排ガス規制だ。このため、ポルシェは高回転の自然吸気エンジンに固執することがますます難しくなっている。とはいえ、自然吸気エンジンは911 GT3の不可欠な要素であり、GTヘッドのアンドレアス・プレウニンガーが説明するように、可能なかぎり維持されるべきものだ。

4Lボクサーを今後数年間に適合させるため、ポルシェは911 GT3 RSのエンジンパーツから、よりシャープなカムシャフトとバルブカバーを911 GT3に与えた。

排ガスは4つの触媒コンバーターと2つのパティキュレートフィルターで濾過されることになった。それが音に何をもたらすのか? 幸い、何もない! スタジオでの短いサウンドチェックでも、992.2 GT3は以前と同じようにダイレクトに反応し、エモーショナルなサウンドを奏でた。

追加パフォーマンスなし

パワーに関しては510PSのままであり、992.2はGT3のフェイスリフト・バージョンとしては初めて、数PSのパワーアップすらない。実際には、最大トルクは20Nm低下して450Nmとなる。しかし、この損失を補うために、GT3は911 S/Tの8パーセント短いギア比を採用している。

911 S/Tのギアレシオ

これは、911 GT3の特徴である次のポイント、つまりマニュアルトランスミッションへとつながる。ポルシェが一時的に誤った方向に進んでいた991.1を除き、すべての991 GT3世代にはマニュアルトランスミッションが搭載されてきた。992.2 GT3も例外ではない。興味深いことに、ショートなトランスミッション比はPDKにも採用されている(S/Tはマニュアルトランスミッションのみ)。「最高速度では数kmの減速が見込まれますが、中間加速では顕著な違いが現れるはずです」と、プレウニンガー氏は約束する。

画像: 911 S/Tのギアレシオ

また、新たに調整されたステアリングも顕著な違いが現れるはずで、センターポジションから極端に鋭く反応することはなくなるだろう。トレーリングアームのボールジョイントは911 GT3 RSから採用されたもので、強力なブレーキ操作時のノーズダイブをさらに抑えることができるはずだ。

わずかな外観の変更

911 GT3の技術革新については以上だ。外観に関しては、モットーは間違いなく「進化」であり、「革命」ではない。最近アップデートされた911にあわせて、911 GT3ではエプロンにあった補助ライトが廃止された。その代わりに、すべての機能を統合した新しいマトリクスLEDヘッドライト(オプションでホワイトのアクセントリング付き)が搭載された。再設計されたフロントリップは、よく見ないと気づかないかもしれない。

ヴァイザッハパッケージを装着した911 GT3を初公開

911 GT3はリヤに、通常の911から3次元のポルシェのロゴを備えたリヤライトを採用している。湾曲したウィングエンドプレートと長いディフューザーフィンは新しく追加されたものだ。しかし、ポルシェのエキスパートなら、すぐに気づくだろう。それはホイールだ。フォトスタジオの白い車両には、オプションとして、今回初めて911 GT3に用意されたヴァイザッハパッケージ(18,076ユーロ=約300万円)で選択可能なゴールドマグネシウムホイールが装着されている。

ヴァイザッハパッケージには、さまざまなシャシーコンポーネント(スタビライザー、カップリングロッド、シアウェブ)に加え、カーボン製ボディおよび取り付け部品(ルーフ、ミラーキャップ、ミラートライアングル、ウィングエンドプレート、フロントスポイラーのエアブレード)や、インテリアの拡張されたレーステックスが含まれている。マグネシウムホイールとカーボンケージは、911 GT3 RSと911 S/Tでおなじみのものだが、追加料金が必要となる。それらを必要としない場合でも、スチール製ケージを備えた有名なクラブスポーツパッケージを追加料金なしで入手できる。ポルシェがこの伝統を守り続けていることは素晴らしいことだ。

911 GT3ツーリングが同時発売

今回初めて911 GT3と911 GT3ツーリングが同時に発売される。視覚的に控えめなツーリングのために、ポルシェはヴァイザッハパッケージの代わりにライトウェイトパッケージを用意している。これには基本的に同じ部品が含まれているが、911 S/Tの短縮されたギアノブと対応するバッジも含まれている。33,867ユーロ(約560万円)という価格は高額だが、マグネシウムホイールが含まれていることを考えると、仕方ない金額だ。

911 GT3ツーリングに4シーターの選択肢

992.2 GT3ツーリングのハイライトは別のところにある。ポルシェは初めて、911 GT3ツーリングで4シーターをオプション設定した。991/992ツーリングの顧客はこれまで、サードパーティのサプライヤーによるレトロフィット・ソリューションに頼るしかなかったが、4シーターの911 GT3発売の要望がようやくポルシェに届いたのだ。

画像: 911 GT3ツーリングに4シーターの選択肢

しかし、簡単なようで、大変な努力が必要だった。レトロフィット・ソリューションとは対照的に、ポルシェは911 GT3ツーリングに4人乗りのホモロゲーションをする必要があった。つまり、積載量、ホイール荷重、その他多くの要素を調整する必要があった。ただし、これは便宜上必要なことだけだ。なぜなら、実際には、どんな大人でもツーリングのリヤシートには座れないからだ。スタジオで実際に体験してみたが、頭上スペースがまったく足らない。

新しいカーボンシェルフォールディングバケットシート

後部座席に乗り込むにも、新たな機能が必要になる。ポルシェは、911 GT3の2つのバージョンに、新しいカーボンシェルフォールディングバケットシートを開発した。最初のシートチェックでは素晴らしい印象を受けた。これがサーキットや800kmのドライブでも同じ印象であるかは、これから確かめることになる。もう一つの利点は、リクエストに応じてシートヒーターが使えることだ。残念なのは、「918スパイダー」以来、ドライバーたちを魅了してきた有名なフルバケットシートが廃止されたことだ。911 GT3では、フォールディングバケットシートとアダプティブスポーツシートのどちらかを選ぶことができる。

画像: 新しいカーボンシェルフォールディングバケットシート

911 GT3にはスタートボタンがない

それ以外については、911 GT3のコックピットは現行の911とほぼ同じだ。具体的には、アナログ式の回転計も廃止され、ポルシェは911 GT3では完全にデジタル化された計器クラスターを採用している。小さなハイライトは、ボタンひとつでタコメーターを回転させ、制限速度を12時の位置に表示できることだ。しかし、911 GT3を他の兄弟車と区別する小さな、しかし重要な特徴がある。それは、エンジン始動用の暗号化キーを保持することが許されていることだ。911 GT3に単純な始動ボタン!? プレウニンガーにとっては残念きわまりないに違いない。

画像: 911 GT3にはスタートボタンがない

アシスタンスシステムに関しても、GT部門の手は最終的に縛られてしまった。車線逸脱警告システムやブレーキ推奨システム、あるいは不評の速度警告システムなどは、911 GT3にはまったくふさわしくないという意見には誰もが同意するだろう。しかし、規則は規則なのだ。そこでポルシェは、すべての機能は、画面の下にある「アシスト」ボタンで素早く無効にできるようにしたのだ。それでもわずらわしいのだが、サブメニューを延々と探すよりはましだ。

もうひとつの変更点は肉眼では見えないものだが、GT部門はカーペットの重量を1.7kg削減することに成功した。標準装備のホイールセットは、見た目は以前と同じだが、若干の変更が加えられており、さらに1.5kgの軽量化が図られている。要するに、最も軽量な構成の911 GT3の重量は1,420kg(以前は1,418kg)で、フェイスリフトによる重量増は無視できるほどに収まっている。

992.2 GT3の価格は

しかし、価格については同じことが言えない。911 GT3はより高価になり、その傾向は顕著だ。価格は19万3,417ユーロ(約3,200万円)から20万9000ユーロ(約3,450万円)に値上がりした。ヴァイザッハパッケージや軽量パッケージ、その他のオプションを追加すると、あっという間に25万ユーロ(約4,130万円)に達してしまう。

結論

911 GT3は自然吸気エンジンを維持している。これはわれわれとって最高のニュースだ! 最大の変更点は、ツーリングに4シーターオプションが追加されたことだ。これは本当に新しい機能だ。ヴァイザッハパッケージやライトウェイトパッケージもクールだが、992.1から992.2に乗り換える理由にはならないだろう。

画像: 結論

(Text by Jan Götze / Photos by Porsche AG)

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