今さらですが、ポルシェ911カレラ4 GTSに試乗してきました。
GTSは"Grand Turing Sport"の頭文字を取ったもので、その昔はポルシェの代表選手であるカレラから始まったのですが、今ではマカンにもボクスターにも、さらにはSUVのカイエンやマカンにも、さらにさらにサルーンのパナメーラにも設定されています。
同じ車種にもこうして格付けを施して、明確なヒエラルキーを構成するのがポルシェの得意技でありまして、消費者はその戦略にものの見事に……と、マーケティングではなく、クルマの話をしましょうね(笑)。
GTSが登場するのはいつもモデルの中で最後発。今回も同様で、モデル992の発売から3年近くが経過して、漸くの発売となりました。992はまだモデルチェンジのタイミングではありませんが、GTSの登場で、来年辺りには992にビッグマイナーが施されるのではあるまいか……と未確認の早耳情報が飛び交っております。ホンマかいな。
さて、カレラ4 GTSです。3リッターターボエンジンは、フツーのカレラより95PSも大きい480PSを絞り出します。僅か1500kgの車重で100馬力近くもパワーアップしているのですから、その蹴り出したるや正に超弩級。安心安全の4WDで、思い切り踏んでも恐怖感ゼロ。さすがポルシェ、やっぱりポルシェであります。
今回はこのカレラ4 GTSで10年ぶりに復活したゴルフに出かけたのですが、後席の背もたれを倒せばフルサイズのキャディーバッグを楽勝で積めてしまうのも、カレラが「スポーツカーであり実用車でもある」と呼ばれる所以であります。
0-100km/h加速は脅威の3.3秒。最高速度はまさかの309km/h。
無論、我が国の公道でその実力を試すことはできませんが、ゴルフ場への行き帰りのワインディングロードで、隠された爪の片鱗を垣間見ることはできました。
今回の試乗車には「リア アクスル ステアリング」なるオプションが設定されておりまして、これがまた大変な優れもの。50km/h以下の低領域では後輪がステアリングを切った方向と逆を(ハンドルを右に切れば、後輪は僅かに左を向く)向くようにできておりまして、狭いコーナーでも気持ちよく、まるでコンパクトカーのようにクルッと向きが変わる。
拙宅のある道の狭い世田谷の路地では大いに助かります。今のカレラって結構大きいですからね。そして速度を上げて行き、車速が80km/hを超えてくると、今度は後輪がハンドルを切ったのと同じ方向を向くようになる。こうすると当然リアアクスルのサイドフォースが増大しますから、安定性が劇的に向上し、文字通りの「オンザレール」となって、滑らかに、軽やかに、大いなる安心感を持ってコーナーを抜けていけるのです。このオプションは絶対に付けたほうが良いですね。オプション費用は37万5000円とのことですが、費用対効果を考えればタダみたいなものです。
キチンと荷物が積めて、街中でも取り回しが良くて、当たり前ですがワインディングでは神の領域。やっぱり新しいポルシェは最高です。調べれば調べるほどヤバそうな空冷を買うよりも、サクッと新しいのを買ったほうが良いのではあるまいか。心がグラグラと揺れ動いております。
(Text & Photo by Ferdinand Yamaguchi)