AudiのプレミアムコンパクトEV「Audi Q4 e-tron」がパワーアップを果たして、ついに日本上陸。最新版の実力を試すべく、「Audi Q4 Sportback 45 e-tron S line」をドライブに連れ出した。

画像1: 【試乗記】Audi Q4 Sportback 45 e-tron S line

Audi Q4 e-tronは、フォルクスワーゲン グループが開発する「MEB(モジューラーエレクトリフィケーションプラットフォーム)」を採用するコンパクトSUVタイプの電気自動車。SUVスタイルの「Audi Q4 e-tron」とSUVクーペスタイルの「Audi Q4 Sportback e-tron」が用意され、日本には2022年秋に上陸を果たした。

このプレミアムコンパクトEVにパワートレインの改良が施され、日本でも2024年12月から販売がスタートしている。デビュー当初に用意されていたAudi Q4/Q4 Sportback 40 e-tronは、総容量82kWh(実容量77kWh)の駆動用バッテリーを前後アクスル間の床下に収納するとともに、リヤアクスルに駆動用モーターを1基(最高出力150kW/最大トルク310Nm)を搭載していた。これに対して、最新のAudi Q4/Q4 Sportback 45 e-tronは、バッテリー容量は変わらないものの、モーターをパワーアップし、最高出力は60kW増の210kW、最大トルクは235Nm増の545Nmとした。その一方で、一充電走行距離は19km延びて613kmを達成する。

そんな最新版のなかから、今回はAudi Q4 Sportback 45 e-tron S lineを試乗した。さっそくエクステリアをチェックすると、アーチ状のルーフラインがSportback特有のエレガントな雰囲気を放っている。SUVスタイルのAudi Q4 e-tronとは異なり、ルーフレールが備わらないのもSportbackの特徴だ。

Audiの象徴であるシングルフレームグリルは、S lineでは通常“プラチナムグレー”となるが、試乗車にはオプションの“ブラックAudi rings&ブラックスタイリング パッケージ”が装着されるため、シングルフレームグリルとドアミラー、さらに“4リングス”がブラックになることで精悍さが際だっている。

画像2: 【試乗記】Audi Q4 Sportback 45 e-tron S line

インテリアは、メーターのデジタル化に加えて、フローティングタイプのセンターコンソールや上下フラットなステアリングホイールなどが、Audiらしい先進的なイメージをつくりあげている。一方、空調パネルに物理スイッチを残すことで、使いやすさを確保しているのがうれしいところ。また、エアコンの吹き出し口が比較的高い位置にあるおかげで、夏の暑い時期に冷気が乗員に当たりやすいのも見逃せない。

細かいところでは、ドリンクホルダーがセンターコンソールの他に、各ドアにも用意され、1Lのペットボトルが収納できるのも便利である。

S lineの試乗車ではブラックのルーフライニングやSのエンボス加工が施された電動スポーツシートが装着され、さらに、オプションの“S lineインテリアプラスパッケージ”によりシートがレザーになるなど、スポーティさと上質さが強調されている。

Audi Q4 Sportback e-tronの室内は、見た目から想像する以上に広い。EV専用のMEBプラットフォームを用いるAudi Q4 Sportback e-tronは、フロントオーバーハングを切り詰めたデザインとすることで、後席やラゲッジスペースに広いスペースを確保できたのだ。後席は、足が組めるほど余裕があり、センタートンネルがないことも手伝ってとても広々とした印象だ。ヘッドルームも、身長168cmの筆者の場合は拳が縦に2個入るほどだ。SUVスタイルのAudi Q4 e-tronに比べると数cm狭いが、それでも十分に余裕がある。

一方、ラゲッジスペースは、通常でも奥行きが約90cm、分割可倒式の後席を倒せば150cm以上にまで拡大が可能。フロア下には深さ約12cmのスペースが隠されているので、充電ケーブルなどを収納しておくには便利である。

前置きはこのくらいにして、試乗に出かけることにしよう。Audi Q4 Sportback e-tronの一段高いセンターコンソールにはシステムを起動するSTART/STOPのスイッチがあるが、それには触れずに、ブレーキを踏んでシフトスイッチでDレンジやRレンジを選べば、これで準備完了。あとはブレーキペダルから足を離せば、クルマはゆっくりとクリープを始める。

まずは軽くアクセルペダルを踏むと、Audi Q4 Sportback 45 e-tronは素早く軽快に動き出した。その加速は以前にも増して力強いもので、とくに低速域でのトルク増強が顕著で、アクセルペダルを強く踏み込んでやると、2トンを超えるボディが軽々とスピードを上げていくのに驚かされる。

速度によらず、アクセルペダルの踏み込みに対して素早く加速するのはEVならではの感覚。それでいて、過敏ではないので、アクセルの操作に神経質にならずにすむのがうれしい。高速道路などで加速する場面でも、120km/hくらいまでなら十分すぎる速さで、しかも以前に比べて高速域まで伸びのある加速を見せるのが実に痛快である。

画像17: 【試乗記】Audi Q4 Sportback 45 e-tron S line

走行中にアクセルペダルを緩めたときに動作する回生ブレーキは、好みにあわせて利き方を選ぶことが可能だ。MMIから車両の“エフィシェンシアシスト”の設定画面を呼び出すと、“自動”と“オフ”が選択できる。ともにDレンジで有効な設定で、自動なら、先行車との距離にあわせて自動的に回生ブレーキの強さを調整してくれるのが便利。ただし、先行車がいないとアクセルペダルから足を離しても回生ブレーキが働かないのが要注意だ。

一方のオフは回生ブレーキが利かないのではなく、自動モードをオフにするという意味だ。回生ブレーキの強さは、パドルで0〜3までの4段階で調整が可能だ。ちなみに、自動でもパドルを操作することで回生ブレーキの強さを一時的に変更することができる。

セレクターでBモードを選べば最大レベルの回生ブレーキが得られる。この状態なら、よほどの急減速でなければ、アクセルペダルの踏み具合だけで速度調整が可能。Bモードでアクセルペダルから一気に足を離しても、つんのめるようなブレーキにはならないのは助かる。

なお、いわゆる“ワンペダル”にように停止時にアクセルペダルを完全にオフにしても完全停止にはいたらないので、最終的にはブレーキを踏む必要がある。

ブレーキペダルを踏むと、ある程度の減速であれば機械式ブレーキではなく、回生ブレーキを使うのもEVの特徴だ。回生ブレーキはモーターのある後輪に利くため、フロントタイヤが路面に食いつく感触がないことに最初は違和感を覚えるかもしれないが、すぐに慣れるだろう。

画像18: 【試乗記】Audi Q4 Sportback 45 e-tron S line

ところで、Audi Q4 Sportback 45 e-tron S lineには、前235/50R20、後255/45R20タイヤが装着され、さらにスポーツサスペンションが搭載される。それだけに、硬めの乗り心地を覚悟していたが、実際、乗り心地はやや硬めとはいえ十分な快適さを確保しており、しかも導入当初に比べてマイルドな味付けになっている。目地段差を超えたときのショックも比較的よく抑えられていて、ランニングチェンジによりサスペンションの熟成が進んだのだろう。

重心が低いEVだけに高めの全高にもかかわらず走行時の挙動は落ち着いている。後輪駆動や低重心設計も手伝って、コーナーを駆け抜ける動きも軽快で、運転が楽しいのもこのクルマの魅力である。

画像19: 【試乗記】Audi Q4 Sportback 45 e-tron S line

気になる電費は、カタログ値(WLTCモード)が136Wh/km(7.4km/kWh)、市街地が117Wh/km(8.5km/kWh)、郊外が130Wh/km(7.7km/kWh)、高速が151Wh/km(6.6km/kWh)であるのに対して、実測値は高速道路をACCを使って100km/h巡航したときが6.3km/kWh、空いた一般道を走行したとき(平均速度37km/h)が7.4km/kWhとカタログ値に迫る数字だった。この日は気温が13℃で、もう少し気温が高い時期であれば、カタログ値を超える可能性が高い。

急速充電も試してみた。従来のAudi Q4/Q4 Sportback 40 e-tronでは、急速充電が最大90kW強だったのに対して、Audi Q4/Q4 Sportback 45 e-tronでは最大125kWにアップしているという。「Premium Charging Alliance(PCA)」に加盟するポルシェディーラーで、150kWの「ポルシェ ターボチャージャー」を使用したところ、最高113kWを記録し、30分で約44kWhを追加。これにより、バッテリー残量は33%から86%まで増え、航続距離はなんと254kmも伸びている。こちらも、もう少し気温が高く、さらに少ないバッテリー残量から充電を始めればさらに多くの追加分が見込めるだろう。

唯一残念なのが、バッテリーのプレコンディショニング機能が搭載されなかったこと。プレコンディショニング機能とは、気温が低いときに効率良く急速充電を行うために、充電の前にバッテリーを適温まで上げておくもので、冬期はこの機能の有無により充電出力が大きく変わるため、ぜひとも日本仕様にも搭載してほしいと思う。

画像24: 【試乗記】Audi Q4 Sportback 45 e-tron S line

一方、それを除けば、従来にも増して魅力的なEVに進化したことが確認できたAudi Q4/Q4 Sportback 45 e-tron。爽快なドライブが楽しめる一台である。

(Text & Photos by Satoshi Ubukata)

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