【Auto Bild】パワーアップしたRWD版Audi R8の実力は？

Audi R8の時代は終わりを告げたのだろうか？　偉大なスポーツカーの後継モデルはいずれ電気自動車になる。2023年にAudiのV10スーパースポーツが姿を消す前に、AudiはAudi R8のスリム化を図った。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

Audiは現在、Audi R8はパフォーマンスバージョンとして、620psのquattroと、以前より30psと10Nmアップした570ps/550NmとなったRWDモデルを用意している。

後輪駆動は、縦方向と横方向の運動性能ではquattroに劣るものの、他の2つの利点で得点を稼いでいる。駆動の自由度が高いフロントアクスルと、より俊敏なリアエンドにより、ドライビングプレジャーの要素を高めている。そして、quattroテクノロジーの廃止により、5万9000ユーロ（約800万円）も安く手に入るのだ。

基本価格149,000ユーロ（約2千万円）

グランカナリア島の狭いマスパロマス飛行場サーキットを、タンゴレッドマットのAudi R8 Coupe V10 performance RWDで最初の6周を回ったときは、まだ太陽は非常に低い位置にあった。インストラクターがブレーキングやターンインのポイントを教えてくれた。3周してコースレイアウトを理解したところで、ステアリングのチェッカーフラッグボタンで、ESCをスポーツモードに切り替え、走りの新しい緩さを体験した。

14万9000ユーロ（約2千万円）のベーシックモデルに比べ、われわれのテスト車、にはいくつかのオプションが装備されていた。ダイナミックステアリング（1400ユーロ=約19万円）、CFRPバー付きパフォーマンススポーツサスペンション（1100ユーロ=約15万円）、さらにセラミックブレーキ（9400ユーロ=約127万円）とミシュランのセミスリック（パイロットスポーツカップ2）が追加装備されていた。

後輪駆動のAudi R8は、無理をしないかぎり、基本的に裏表のない自信に満ちたスポーツカーでもある。ダイナミックステアリングの可変レシオは非常によく考えられており、ステアリングフィールは常に正しい感触で、タイトカーブでの滑らかさと小さな舵角の広がり、高速でのタイトさはドライバーをまったくイライラさせない。逆に、quattroでないこともあって、このAudi R8は食い込むように操舵し、適切な入力速度ではアンダーステアを示さない。しかしクリッピングポイントからスロットルを開けると、レールに乗ったようにカーブを抜けていくquattroとは対照的に、RWDはわずかにテールスライドが発生し、その強弱をつけると本格的なドリフトが可能になるのだ。

Audi R8が驚異的なのは、音質だけではない

quattroでは、ドリフトがグラベルベッドで終わらないように、ドライ路面ではある種の残忍さと熟練の技が必要とされる下準備をして、それを手助けしなければならないのだ。だが、ここでは、ドリフトはあくまでも楽しいアクセルワークであり、緊急時にはスポーツESPが適切に作動する。

540psの先代RWDに対して、30psの上乗せは、直接比較すればわかることで、数字上では0から100km/hまでの加速がコンマ1秒、現行のperformance RWDの方が速いのだが、それはまったく気にならないので、忘れてほしい。壮大なV10の性能はそのままに発揮されるだから。純粋な自然吸気エンジンである5.2Lエンジンは高回転を好むが、3500～4000rpmで発揮されるサウンドは驚異的である。

高速でカーブを曲がるとき、リミッターを超えないように気をつけなければならないほどだ。なぜなら、レブリミットの8500rpmに達するまで、瞬き2回で10気筒は激しく駆け上がるからだ。クールダウンするためにクルージングをする際のスパイダー心地よさは例えようもないものだった。ちなみに、スパイダーはクーペより1万3000ユーロ（約180万円）高い。

テクニカルデータ＆価格

エンジン：V10 縦置きミドシップ
排気量：5204cc
最高出力：570ps/8000rpm
最大トルク：550Nm/6400rpm
駆動方式：後輪駆動 7速Sトロニック
全長×全幅×全高:4429×1940×1236mm
乾燥重量：1590kg
トランク容量：112L
0-100 km/h加速：3.7秒
最高速：329km/h
平均燃費：7.7km/L
CO2排出量：295g/km
価格：14万9000ユーロ（約2,000万円）より

結論

quattroよりRWDの方が楽しい？　それはドライバーにもよるし、Audi R8の使い方にもよる。でも5万9000ユーロ（約800万円）のコストダウンは、とにかくうれしい！

(Text by Ralf Kund / Photos by Audi AG)