120412-Shiomi.jpgすでに生方さんが「新エコカー減税に対応するモデルは?」という記事をアップしていて、そちらに詳しいのだが、エコカー減税の適用を受けられる基準が、4月1日から変わった。 これまでは「平成22年度燃費基準」をもとにエコカーかどうかが決まっていた。これが、もっと厳しい「平成27年度燃費基準」がもとに決められるようになったのだ。

一例を挙げると、車重1500kgのクルマの場合、これまでの基準値は「13.0km/L以上」だから、それを25%上回る16.25km/L以上であれば、取得税、重量税が75%減税となった。一方、4月からは新しい基準値「14.4km/L以上」を10%上回る15.84km/L以上で同じだけの減税を受けられる。20%上回る17.28km/L以上であれば免税となる。

これまでは免税になるのはハイブリッド(ただし、燃費基準を25%以上上回る必要がある)だけだった。いいかえると、いくら燃費基準を25%以上上回っていても、ガソリン車は免税にならず、今回はそのあたりのおかしさを是正したのだろう。一見、厳しさが緩和されたのようにも見えるが、平成22年度燃費基準が10・15モード燃費を使った燃費値だったのに対し、平成27年度燃費基準はJC08モードを使った燃費値なので、エコカー減税のハードルはほとんど同程度か。

4月以降発売のどのクルマがどの程度減税を受けられるかについては、国交省の新エコカー減税・中古車特例の概要を参照のこと。

ところで、このエコカー減税などの際に基準として用いられる燃費基準とはいったいどういうものか、ご存じだろうか? 具体的な数値は下記を参照してただくとして、平成27年度燃費基準とは「平成27年、つまり2015年度までに、新たに発売するクルマの燃費をこれ以上にしなさいよ」という国の決まり。自動車産業界、とくに日本の自動車産業界は燃費よりも排ガス規制のほうを優先した経緯があるが、排ガスが昔から比べるととてつもなくクリーンになった現在、今度は燃費を上げようという流れにある。

平成27年度燃費基準は結構な厳しさであるのは間違いない。2015年度に売られるクルマのすべてがこれをクリアしたと仮定したら、2004年度、つまり8年前の実績値(実際に販売されたクルマの燃費値)よりも23.5%向上することになる。乗用車にかぎらず、クルマは新しければ新しいほど衝突安全装備や快適装備などが法制化や市場原理によって増えるので、ただでさえ重くなる傾向にある。そのうえで、平均燃費を毎年3%弱ずつ向上させなくてはならないのだから簡単ではないだろう。

ただ、こうした基準は国交省が自動車メーカーなどの意見も公式/非公式(←想像)に聞き取ったうえで決めているので、頑張ればいけそうな数値に落ち着いているはずだ。2015年度に蓋を開けてみたら2車種しか基準をクリアできてなかったということにでもなれば、大混乱が起こるから、絵空事のような厳しい数値にはなっていない。

下記のとおり、燃費基準は車重ごとに定められる。いうまでもなく重いほうが燃費に厳しいからだ。こうした決め方は、いわゆる「トップランナー方式」と呼ばれる。基準を決める時点で、先頭を走っている、つまり最高レベルの燃費のクルマを参考にして、基準をつくるのだ。2015年度燃費基準は2007年に策定されているから、2007年にはすでに2015年度燃費基準を早々にクリアするクルマがあったということ。

日本のトップランナー方式に対して、欧州はCAFE(Corporate Average Fuel Efficiency)方式を採用している。メーカーがつくるクルマ全体の燃費の平均が、一定の基準を満たしていないとダメというやり方。どっちが良い悪いと一概にはいえないが、乱暴にいえば、日本の方式だと、仮に重いクルマばかりを生産しても、それらが燃費基準を満たしていれば問題ないので、そういうクルマばかりになる可能性がある。世の中が"重いわりには燃費のいい"クルマばかりになったら、それらは燃費の絶対値はよくないわけだから、日本全体の燃費は上がらない。

一方、CAFE方式だと、ハイパフォーマンスカーをつくるなら、自社の平均値を上げるため、より多くのエコカーをつくらなくてはならない----という力が働くので、全体の燃費向上につながりやすい。たとえば、アストン・マーティンがトヨタiQのOEMでシグネットをラインナップしたのは、そのためかもしれない。

けれども、メーカーをどう定義するかが難しい。ベントレーなんか何をどう頑張ったって彼らのクルマの平均燃費が基準値を上回るのは難しそうだが、フォルクスワーゲングループの一員ということならばなんとかなりそうだ。ランボも単独では1000%無理だが、アウディグループなら、さらにもっと大きなフォルクスワーゲンファミリーということなら、どうにかなるだろう。そのあたりの分類の仕方はよくわからない。調べて後日報告したい。

それにしても、自動車の燃費はどんどん向上していく。縛りがあればあるほど燃えるのがエンジニアの"性"なのだろう。この調子だと、第3のエコカーどころか、第4、第5のエコカーも出てくるかもしれない。こういう内燃機関のクルマの効率アップの動きが、EVをはじめとする次世代車の普及にどういう影響を与えるのか、非常に興味深い。

この調子なら、地球が温暖化してようとしていまいと、していたとして、それが人間に悪影響を与えようと与えまいと、人間はなんとかすると思う......と、エンジニアに丸投げしたところで、本日はこのへんで。

(Text by Satoshi Shiomi)

2015年度燃費基準(乗用車)

601kg未満......22.5km/L以上
601kg〜741kg未満......21.8km/L以上
741kg〜856kg未満......21.0km/L以上
856kg〜971kg未満......20.8km/L以上
971kg〜1081kg未満......20.5km/L以上
1081kg〜1196kg未満......18.7km/L以上
1196kg〜1311kg未満......17.2km/L以上
1311kg〜1421kg未満......15.8km/L以上
1421kg〜1531kg未満......14.4km/L以上
1531kg〜1651kg未満......13.2km/L以上
1651kg〜1761kg未満......12.2km/L以上
1761kg〜1871kg未満......11.1km/L以上
1871kg〜1991kg未満......10.2km/L以上
1991kg〜2101kg未満......9.4km/L以上
 2101kg〜2271kg未満......8.7km/L以上
 2271kg以上......7.4km/L以上

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