Volkswagenグループのソフトウェア開発会社「Cariad(カリアド)」は、グループ全ブランドの次世代モデルをソフトウェア面から支える中核企業だ。今回、ベルリンに新たなAIキャンパスを開設したことで、Volkswagenは人工知能分野への本格投資を明確に打ち出した。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

画像: 【Auto Bild】VWがベルリンにAIキャンパスを開設 未来のクルマをここから開発

VolkswagenはAIへの取り組みをさらに加速させる

2026年6月24日(木)、同社はベルリンで「Automotive Software Campus(オートモーティブ ソフトウェア キャンパス)」をオープンした。ベルリン中央駅の北側に位置する11階建ての新施設には、約1,000人の専門家が集結し、「未来のクルマ」のためのAI技術開発に取り組む。

オープニングセレモニーでCariadのスタッフを前に、VolkswagenグループCEOのオリバー・ブルーメは、新拠点の役割について次のように語った。

「Volkswagenグループにとって明確なのは、AIによって定義されるクルマこそが、次世代モビリティを象徴する存在だということだ」

グループ共通ソフトウェアを開発

その実現を担うのが、ソフトウェア子会社のCariadだ。

同社が目指すのは、Volkswagenグループ全体で共通のソフトウェア基盤を開発し、最終段階で各ブランド向けに最適化するという開発体制である。これにより、ブランド横断でソフトウェア開発を効率化し、シナジー効果を生み出すことで、開発スピードの向上とコスト削減を実現しようとしている。

「ドイツに必要なのは、まさにこれだ」

開所式には政財界の主要人物も多数出席した。ドイツ連邦議会(CDU)議長のユリア・クレックナー氏、ドイツ自動車工業会(VDA)会長のヒルデガルト・ミュラー氏、そしてドイツIT業界団体Bitkom会長のラルフ・ヴィンターゲルスト氏らが顔を揃えた。

画像: 開所式には、Bitkom会長ラルフ ヴィンターゲルスト氏、ドイツ連邦議会議長ユリア クレックナー氏、VDA会長ヒルデガルト ミュラー氏、フォルクスワーゲングループCEOオリバー ブルーメ氏、Cariad CEOピーター ボッシュ氏(左から)が出席した。

開所式には、Bitkom会長ラルフ ヴィンターゲルスト氏、ドイツ連邦議会議長ユリア クレックナー氏、VDA会長ヒルデガルト ミュラー氏、フォルクスワーゲングループCEOオリバー ブルーメ氏、Cariad CEOピーター ボッシュ氏(左から)が出席した。

クレックナー議長は、Volkswagen経営陣による将来への投資とベルリンでのAI開発を高く評価し、「ドイツに必要なのは、まさにこうした取り組みだ」と語った。

また、VDAのミュラー会長は「AIは今後、イノベーションを生み出す決定的な原動力になる」と強調。Bitkomのヴィンターゲルスト会長も、このキャンパスを「Volkswagenだけでなく、ドイツ全体にとっても極めて重要な資産だ」と評価した。

「From Code to Car」

ベルリンの新キャンパスでは、「Caridians(カリディアンズ)」と呼ばれるCariadのソフトウェアエンジニアたちが、将来の車両をより安全で快適、そして魅力的なものにする技術を開発している。

オリバー・ブルーメCEOは、この施設をVolkswagenの変革戦略における重要な柱と位置付け、「世界をリードするテクノロジーカンパニー」への進化に欠かせない存在だと説明する。

画像: ベルリンのAutomotive Software Campusには11フロアが設けられ、約1,000人のソフトウェアエンジニアが勤務。ワークショップやテストラボも備える最新施設となっている。

ベルリンのAutomotive Software Campusには11フロアが設けられ、約1,000人のソフトウェアエンジニアが勤務。ワークショップやテストラボも備える最新施設となっている。

CariadはAI開発の中核機能をベルリンに集約する一方で、各ブランドの開発拠点とも密接に連携しながら開発を進める体制を維持する。

Cariad CEOのピーター・ボッシュ氏は、次のように説明する。

「未来のクルマは、話し、聞き、自ら運転するようになります。Automotive Software Campusでは、そのために必要な『感覚』と『頭脳』を生み出しています。周囲の環境認識から、車内の乗員との知的なコミュニケーションまで、そのすべてを担います」

その開発思想を象徴するキーワードが、「From Code to Car(コードからクルマへ)」である。ソフトウェアコードを、そのまま実際の道路を走るクルマへとつなげるという考え方だ。

画像: Cariadのエンジニアが、自動運転車が周囲の環境をどのように認識しているかをデモンストレーションした。

Cariadのエンジニアが、自動運転車が周囲の環境をどのように認識しているかをデモンストレーションした。

すでに量産化が始まるAI技術

AI開発はすでに実用段階へ入り始めている。Cariadは現在、量産化を目前に控えた2つの重要なAIプロジェクトを進めている。

ひとつはAIを活用した自動運転システムで、2027年に発売予定のVolkswagenのエントリーEV「ID. Every1」へ搭載される予定だ。

もうひとつは、ドライバーの意図や要望を理解し、走行中のルート検索や旅行計画といった複雑な作業までサポートするデジタル音声アシスタントである。

この技術はすでに、現行モデルのPorsche「Macan Electric」と「Cayenne Electric」に「Voice Pilot(ボイス・パイロット)」として採用されており、今後はVolkswagenグループの各ブランドへ順次展開される予定だ。

例えば、Cayenne Electricに「ベルリン・テレビ塔へ行く価値はある?」と質問すると、システムは最新の天気情報を取得し、目的地までのルートを案内するだけでなく、入場チケットの料金まで教えてくれるという。

結論

Cariadには現在、確かな前向きな空気が流れている。それは歓迎すべきことだ。ソフトウェア開発競争が激化するなか、Volkswagenには国際競争で後れを取る余裕はない。今回ベルリンに開設されたAIキャンパスは、その巻き返しに向けた重要な第一歩と言えるだろう。

(Text by Raphael Schuderer / Photoa by Cariad)

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